無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Power behind the Throne COMPANION:ウォーハンマーRPG4版

全5巻のシナリオから成るEnemy Within(内なる敵)キャンペーンの3冊目、『Power behind the Throne(玉座の影の権力)』の追加サプリメントについて話を致しましょう。

以前の記事で申し上げましたとおり、シナリオ集1冊目『Enemy in Shadows(影に潜みし敵)』の追加資料には、良い意味で期待を裏切られました。実際に読んでみるまでは、『Enemy in Shadows』に登場するキャラクターの背景やシナリオの進め方を紹介する副読本かと思っていました。ところが読んでみてびっくり、街道旅に関する各種ルールが充実したデータ集で、エンパイアの街道を行く旅行者必携の一冊となっていたのです。

2冊目『Death on the Reik(ライク河上の死)COMPANION』も同様で、シナリオ集の副読本としての性質より、河上交通と交易の判定方法を紹介する追加データの充実したサプリメントとしての側面が強いものでした。船に大砲や投石機を搭載したい場合、船体に競技用の改造を加えたい場合、あるいは快適な客船を建造したいなどの理由があるならば、この本に掲載されている追加データを是非ともお読みすべきです。ライクランド領内での河川交易に関するルールも載っておりますので、これから冒険を始める方にも、冒険者を引退して商業活動に活路を見いだすアナタにもオススメです。

さて、3冊目となる『Power behind the Throne COMPANION』はどうだったでしょうか?登場するキャラクターの背景やシナリオの進め方、追加のシナリオフックなどを紹介する副読本かと思って開いてみると・・・、

何とまさにその通りの内容でした。

『Power behind the Throne』キャンペーンのシナリオ中に差し込むことが出来る追加の冒険のアイデアや、『Middenheim: City of the White Wolf(ミドンハイム:白狼の都市)』で紹介された人物や組織をキャンペーンシナリオに登場させるための方法などが提示されています。

追加の冒険アイデアは基本ルールブックにあるシナリオフックのコラムのような短いものではなく、大まかなシナリオの流れが示されており、冒険中に行う追加の判定も盛り込まれております。もちろん、これらの内容は『Power behind the Throne』とは無関係な独立した冒険としても扱うことが出来ます。

シナリオのアイデアの他にも追加シナリオが2本掲載されておりまして、これらは過去の版で扱われていたシナリオを4版に対応させたものとなっております。丁度過去の版のシナリオを持っておりましたので見比べてみましたところ、単にデータをコンバートしただけではないことが判りました。幾つかの設定が大きく変わっているのです。

これまでの所、Enemy Withinキャンペーンの追加資料では毎回NPCを紹介するコーナーが設けられておりまして、シナリオの舞台となる場所に関係する人々が掲載されておりました。『Enemy in Shadows COMPANION』ではベーゲンハーフェンの住民たち、『Death on the Reik COMPANION』ではライク河流域で暮らす人々、といった具合です。

『Power behind the Throne COMPANION』で取り上げられるNPCはミドンハイムの上流階級の人々や、『Power behind the Throne』『Middenheim: City of the White Wolf』で名前は紹介されているものの数値的なデータや背景の詳細が説明されていなかったキャラクター、そういった方々が何人か扱われています。

過去2冊には無かった記述として、『Power behind the Throne』のシナリオで使えるように、当該キャラクターは他のNPC達のことをどのように見ているかについても各NPCごとに記されています。このため一人当たりページ数が多くなり、結果として掲載されている人数は従来の2冊より減っています。

一方で、これまでのシナリオ集で登場した人物を別のシナリオに登場させる場合どのような方法が有り得るかの解説があり、新規NPCの人数の少なさを補っています。

それ以外にNPC紹介記事で注目すべき事項としては、これまでの追加資料では取り上げられなかったような、特筆すべきキャラクターが掲載されていることが挙げられます。ウォーハンマーRPGの世界は、ルネサンス後期あたりの時代をモデルにしたファンタジー世界ですが、シリーズ展開として4万年後のSF世界を舞台にしたシリーズ「ウォーハンマー40k」があります。ファンタジーとSFという2つのウォーハンマー世界の両方で活動している特異なキャラクター、ティーンチの上級悪魔チェンジリングのデータが掲載されているのです。

他に述べておくべきNPCはと申しますと、『Death on the Reik COMPANION』に掲載された追加のシナリオ『Vengeance of the Gravelord(墳墓王の復讐)』で名前だけ登場して登場していたGravelord(墳墓王)のデータがついに明らかになったことも述べておきましょう。評判から言ってもっと年輩かと思っていましたが、まだ餓鬼でした。てっきり何千歳かそのくらいと思っていたのですが、明るい所で会ってみると存外若かったです。

それともう一つ、これは述べておかねばなりますまい。ミドンハイムの最重要NPC、ボリス・トッドブリンガー伯爵ご本人は、追加資料ではなく『Power behind the Throne』シナリオ本編の方にデータの詳細が載ってございます。

『Rough Nights and Hard Days(日夜是騒乱)』に載っているエマニュエル・フォン・リーベウィッツ伯爵夫人に続き、公式なデータが判明した選帝侯は2人となりました。

リーベウィッツ伯爵夫人が社会的地位に特化(黄金級15、富裕25、話術や世間話は100を超える)したキャラクターであるのに対して、トッドブリンガー伯は戦闘寄りに能力を割り振りなさっています(近接武器91、払いのけ2、先制3、突き返し2、など)。もちろん、一般のキャラクターと比べると指揮や交渉、芸能の技能はずっと高い(80を超える技能もある)のですが。

人間誰しも欠点や弱点の一つ二つあるもので、例え選帝侯であっても例外ではございません。少し前にご家族に不幸があって以降、トッドブリンガー伯は意気消沈されているということです。さらに、掲載されているデータから所持品を確認しても現時点ではかの有名なマジックアイテム「ウルリックの護符」を所持しておられない。

つまり、倒すなら弱り切っている今だってことです。

冗談はさておき、Enemy Withinキャンペーンの追加資料ではNPC紹介以外にもお約束のコーナーがあります。禍つ神々を崇める混沌教団の紹介と、暗黒の魔術に関する追加ルールです。過去の2冊で取り上げられていたのは変化と魔術の神ティーンチの教団「紫の手」と「赤き冠」でしたが、今回は快楽の神スラーネッシュを崇拝する「翡翠の王笏」教団の記事が載っております。

教団の活動目的と組織構造だけでなく、暗黒神が信者たちに授けてくださる追加の呪文も掲載されています。もちろん、スラーネッシュ独自の魔術でして、その禍つ神の性質を反映したものとなっております。

過去に紹介されたティーンチの魔術の分野は、例えば紫の手教団であれば未来予知や運命の操作であり、あるいは赤き冠教団であれば獣人への変身といったものでした。

一方で今回新たに追加されたスラーネッシュの呪文は、術者から疲労感を奪い一時的に能力を高めるものや、敵の心に侵入して望む幻を見せるなど、快楽と苦痛を司る神であることに相応しいものとなっています。

さてここで気になったことがあります、キュービクル7エンターテイメントのサイトで3月11日に掲載された記事です。少しばかり今後の出版予定を確認してみましょう。
・『Patrons of the Old World 2(オールド・ワールドの後援者たち)』
 →まもなく出版(PDFのみ)
・『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』
 →まもなくPDF出版、書籍としての発行は第3四半期
・『The Horned Rat(角在りし鼠)』
 →第2四半期後半にPDF出版、書籍としての発行は第4四半期もしくは22年第1四半期の上旬
・『Archives of the Empire vol.Ⅱ(帝国公文書集 第二巻)』
 →第3四半期上旬にPDF出版、書籍としての発行は第4四半期もしくは22年第1四半期
・『The Empire Ruins(エンパイア荒廃す)』
 →第3四半期にPDF出版、書籍としての発行は22年第1四半期
・『The Imperial Zoo(帝立動物園)』
 →第3四半期にPDF出版、書籍としての発行は22年第1四半期

皆様お気づきでしょうか、過去の出版予定には載っていた『The Winds of Magic(魔力の風)』『Career Compendium(キャリア全集)』の出版予定が載っていないのです。

したがいまして当面の所、21年第4四半期までは、追加の魔術が与えられ強化されるのは混沌神の勢力ばかりとなりそうなのです。

エンパイアの善良な臣民の皆様、あまり善良ではない皆様、心配は要りません、ウルリックがアナタを救います。『Power behind the Throne COMPANION』には、エンパイアで信仰されている戦争の神ウルリックの奇跡が掲載されているのです。

戦争の神であり厳冬を象徴する神であるウルリックが信者に授ける力としては、流血を渇望する蛮性を信者に吹き込み勇猛な戦士とするとか、弱者に対する冷たい軽蔑を植え付け恐怖を克服するとか、まあそういったものです。

エンパイアを守護している側の神々でさえ、どことなく邪神ぽいあたり、ウォーハンマーらしくてイイ感じですね。

もしアナタが敬虔なシグマーの司祭で、ウルリック信者の手を借りずに魔法使いと戦いたいというのであれば・・・、そうですね一度デルベルツのスタインプラッツ神殿に行ってみてはいかがでしょうか。