無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

The Horned Rat COMPANION:ウォーハンマーRPG4版

遂に『The Horned Rat COMPANION(角在りし鼠 冒険の手引き)』を入手しました。先日の記事で紹介いたしましたキャンペーンシナリオ『The Enemy Within(内なる敵)』シリーズ第4巻『The Horned Rat』の追加資料集であります。書名から皆様ご明察の通り、ウォーハンマーRPGの世界で悪役を担っている鼠人間の種族、スケイブンを大きく取り上げた設定集となってございます。

感慨深いものです。そう、あれは十一年前のクリスマスのこと、ウォーハンマー第2版時代に邦訳された最後の設定集が『スケイブンの書』でした。

設定資料なら吸血鬼や隣国ブレトニアもあるだろうに、何故にスケイブンの書が邦訳対象に!?と驚きながら読み進めて二度びっくり。ウォーハンマーRPGの舞台となるエンパイアの学者がスケイブンについて調査結果をまとめた書物という体裁で始まり、しかもその内容はスケイブンと戦う際に必要な装備や心構えだけではなく、侵入を警戒するために有用な鼠人の体臭の識別方法まで論じる、濃厚な設定資料集でした。まさしく、 『スケイブンの書』は鼠年の最後を締めくくるのにふさわしい本だったのです。

・・・まあ、2010年は寅年だったんですけどね。

冗談はともかく、『The Horned Rat COMPANION』はキャンペーンシナリオの副読本というだけには留まらず、4版のスケイブンに様々な追加装備を用意するデータ集でもあります。2版時代の『スケイブンの書』と同様の役割を果たしてくれることでしょう。

敵種族に焦点を当てている資料集ということもあり、今までとは若干体裁が異なってございます。

まず表紙の雰囲気が異なります。『Enemy Within』シリーズのこれまでの副読本はいずれも冒険の舞台を描いた風景画が表紙となっています。ところが、『The Horned Rat COMPANION』の表紙に大きく描かれているのは人物、しかも悪役のスケイブンとなっているのです。

さらに、『Enemy Within』シリーズの副読本には毎回、追加NPCのコーナーがありまして、3冊目の『Power behind the Throne COMPANION(玉座の影の権力 冒険の手引き)』以降は構成が変わっているのです。直近の2冊では、登場する他のNPCをどう思っているかを短くまとめた記述がキャラクター毎に設けられるようになっています。

その他にも、これまでの3冊と比べると記事の書き方に共通している箇所、異なる箇所があるのですが・・・、

ここで細かな体裁の話をしていても仕方がありませんね。
話題が逸れ申した、『The Horned Rat COMPANION』の内容紹介を始めましょう。まず皆様が一番知りたがっている件、「スケイブンに関する設定はどのくらいあるのか?」このことについてお答えしましょう。

定量的に申しますと、ケイブンに直接関わる内容が約70ページ、表紙や目次を含めて本書は全126ページですから半分以上がスケイブンについての記事でございます。

冒頭の章はスケイブンの歴史、そしてスケイブン社会の支配階級についての話題。スケイブン社会の頂点に君臨する13人評議会の構成員と役職が判る記述もあります。さらに、『The Horned Rat』シナリオ中での各組織の活動など、特定のシナリオに関する話題が含まれていました。左様、全てのページを設定資料に充てているわけではございません。

確かに、設定に関する記述の詳細さでは『スケイブンの書』に軍配が上がると言えましょう。しかし、ゲーム中に取り込むことが出来るデータの濃度は旧版に引けを取りません。旧版がゲームの雰囲気を盛り上げる設定の紹介に重きを置いているならば、4版はデータ集としての役割を強める方向に舵を切ったものとなっているのです。

ケイブンに限らず他の種族でも使用できそうなデータもまた、幾つもございます。設置式の盾パヴィス、輿に乗って戦うときのボーナス、捕獲用ネットなど、アナタのシナリオでティリアのクロスボウ兵やドワーフの豪族、あるいはダークエルフ人狩り部隊を登場させるときに活用なさってはいかがでしょうか。

『Enemy Within』副読本のシリーズでは必ずNPCデータ集のコーナーがありました。これまでの3冊ではそれぞれ、ベーゲンハーフェンの街の住民たち、ライク河流域で暮らす人々、ミドンハイム上流社会の人々、といったNPCが紹介されています。

『The Horned Rat COMPANION』では第2章がNPC集のコーナーとなっております。何と!掲載されているキャラクター全員がスケイブン、言うまでもなく全員敵。PCに味方するNPCが一人たりとも載っていないとは、ずいぶん思い切ったものです。

下級の鼠雑兵から鼠指揮官、暗殺鼠、疫病司祭など様々なスケイブンのサンプルキャラクターが、所属する氏族の解説に続いて載っています。

旧版でも紹介されている四大氏族に加え、大氏族の下で働く同盟氏族や、四大氏族には劣るものの評議会に議席を持つ有力氏族も紹介されてございます。彼らの力関係を知りたいのであれば、是非とも読むことをお勧めいたします。

いよいよ3章から追加データに特化したページが始まります。まずはスケイブンの武器庫にご案内。当然、新たな武器が続々と紹介されております。シナリオ集『The Horned Rat』で紹介された武器や旧版『スケイブンの書』に掲載された武器のみならず、新たな武器が紹介されており、GMの皆様に様々な選択肢を提供するものとなっております。

特に飛び道具が充実しておりまして、旧版で登場済みのラットリング・ガン、煙玉、狙撃銃、これらはもちろんデータ化されています。加えて、火炎放射器や妖術駆動削岩機、そして携行ロケットランチャーまで用意されています。信じられますか、アイツらファンタジーRPGの世界にロケットランチャーを持ち込んでくるんですよ。

・・・RPGの世界にRPGを持ち込んでくる連中か、深いな。

冗談はともかく、接近戦用の武器も様々なものがございます。格闘用の短剣や万能捕獲機など一般的な武器に加えて、妖刀だの魔剣だのといった類の強力な魔法アイテムも掲載されています。

武器以外の魔法アイテムも充実しており、スケイブンが調合する薬品、魔導技術者の繰り出す装置類、疫病教団の呪文書など、こちらもまた多種多様な内容が示されております。

もちろん、誤射や故障に事故、副作用を判定する表も新たに多数追加。

第4章はスケイブンの魔術データ集。基本ルールブックの表紙にスケイブンが描かれていることからもお分かりの通り、スケイブンは大変に贔屓されております。この度、種族専用呪文が大量に追加されました。専用の初歩呪文、専用の秘術呪文、そして専用の魔法体系が3系統。

ここまで読んだそこのアナタ!「そこまで恵まれているならスケイブンになりたい!」と思いましたね。でしたら、強力なスケイブンの魔術師を捜すのが良いでしょう。あくまで一時的な効果ですが、スケイブンの秘術呪文「Curse of the Horned Rat(角在りし鼠の呪い)」の効果で、アナタのPCもスケイブンに変身させられることが可能です。

・・・ええと、そういうことを言っているのではないと?

ええ、もちろん判っております。お聞きになりたいのは、つまり、その、PCとしてスケイブンを選択できるか?ということですね。それは難しい質問です。

灰色の予言者、妖術師、疫病教団司祭、魔導科学者、といった支配階級にある重要NPCについては、PCと同じ方法でデータを作成する手順が掲載されています。一方でスケイブンの雑兵たちについては、そのような手順が載っておりません。現状あくまで雑兵はモンスター扱いです。スケイブンPCの作成は「出来なくもない」という所でしょう。

第5章は怪物寓話集のコーナー、追加モンスターのデータ集です。両腕を兵器に換装し背中に御者席をボルト留めした強化型ラットオウガなどはいかがでしょう。巨大戦闘獣から小型のものまで、猛獣使いモウルダー氏族が作り出した自慢の怪物が複数載っております。

第6章は詳細な設定のあるスケイブNPC、第7章でスケイブンの謀略の手口、第8章がスケイブンの神を崇拝する人間たちの教団の紹介となります。

従来の『Enemy Within』副読本のシリーズでは毎回、暗黒神を崇める混沌教団が紹介されていました。今回その場所にスケイブンの教団が載っているわけです。ちょっと驚いたこととして、人間社会に入り込んだ「黄色い牙」教団には、数世代に渡って一族が教団員とか、社会的地位の高い教団員とか、そういう構成員も居たのですね。これまでのシナリオには、ごろつきみたいな連中しか登場しなかったので、少々不意をつかれました。

第9章以降、後半の約50ページはスケイブン以外の記述になります。

まずは『The Horned Rat』のシナリオで舞台となる中央山系周辺の地勢について。そして中央山系で遭遇する危険について、危険というのはつまり野生動物や山賊のたぐいですね、それら地域設定の章があります。

中央山系の中にある真鍮砦については別途章が設けられており、数ページにわたり詳細が説明されております。2版やウォーゲーム版のウォーハンマーに触れたことのある歴戦の皆様方なら真鍮砦の名をご存じでしょう。

帝国歴2510年時点の真鍮砦の主についての記事とNPCデータもあり。百五十年近く真鍮砦に滞在しているそうで、挿し絵もありますが外見から年齢を推し量るのは少々難しいですね。大まかにいって基本ルールブック334ページの人物のごとき印象の方です。

『The Horned Rat』劇中で出会う可能性のある、スケイブンと戦っている人物の紹介記事もあります。ついにPCに味方するNPCが登場しました。2名だけですけどうち1名は故人)。

ドワーフ専用の新キャリア「Ironbreakers(鋼砕き)」も掲載されています。頑丈な鎧で防御を固めた山岳王国の精鋭戦士たちです。

アナタのPCがドワーフで、新たにキャラクターを創造するとき、ランダムに選んだキャリアが「衛兵」「兵士」だった場合、代わりに「Ironbreaker(鋼砕き)」を選ぶことを手前は強くお勧めいたします。

と申しますのも、キャリア・レベル1の「Tunnel Fighter(洞窟戦士)」の時点で所持品に全身用板金鎧が含まれているためであります。初期装備品が他のキャリアより明らかに恵まれているのです。

とはいえ問題もございまして、上位のキャリアにレベルアップするには、“グロムリル製の武器または鎧パーツ”が必要という、なかなか御無体な要求がされています。

ですがご安心ください、グロムリルの設定は『Middenheim:City of the White Wolf (ミドンハイム:白狼の都市)』に少しだけ書かれていましたが、この度さらに詳細になった記事が出ました。「Ironbreakers」の次のページに載っています。グロムリルのアイテムの例もあり。

いずれにせよ入手するのは困難極まるアイテムですが、少なくともデータは判ります。それに、もしどうしても手に入れたいので有れば、ミドンハイムに1つだけあてがあるわけですし。

その他にシナリオが3本、うち1本はスケイブン関連のシナリオです。「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」の4版シナリオもあります。ということは当然、“自称世界一の探偵”アルフォンス・エルキュール・ド・ガスコーニュも登場、NPCとしてのデータも載っています。ウォーゲーム版ウォーハンマーにも登場する巨大モンスターを扱うシナリオもあり。

ざっと、このような内容です。

シナリオにスケイブンを登場させたいGMにとって実に使いでのある資料であり、そうでないGMが読むとたちまちシナリオにスケイブンを登場させたくなる、そのような追加サプリメントでした。

考えてみますれば、4版でも既に様々な追加資料が出版されています。主なものだけでも、大都市の設定本が複数、街道旅や船旅そして商取引のルール、幾つかの混沌教団、エンパイア領内で暮らす種族たち、話題は多岐に渡ります。

とうとうスケイブン設定集が出てしまったのですから、この後さらに語り得る話題がどれほど残っておりますでしょうか。まだ取り上げられていない設定はせいぜい・・・、

追加の武器データ、モンスター図鑑、ルーン魔術を含む新たな呪文データ集、殺戮の神カインを始めとする神々の設定本、吸血鬼設定集、キャリア全集、騎士道国家ブレトニア、氷の女王が治める地キスレヴ、辺境ボーダー・プリンス、遺跡探検の手引き、大砲と芸術の街ナルン、森の目タラブヘイム、貿易都市マリエンブルグ、混沌四大神の残る二柱コーンとナーグルを扱ったサプリ・・・、

まだまだ話題は沢山ありました、一安心。

そこでキュービクル7エンターテイメントのサイト7月7日の記事を振り返って、今後の出版予定を見てみますと、
・『Empire in Ruins(エンパイア荒廃す)』
 今年の第3四半期にPDF発売、書籍は来年第1四半期予定の『The Enemy Within(内なる敵)』キャンペーン最終章。
・『The Imperial Zoo(帝立動物園)』
 第3四半期にPDF発売予定。追加モンスター集。帝都アルトドルフの帝立動物園のみならず、オールド・ワールドに今も生き残るドラゴンやティリア海の巨大海獣など、エンパイアの国境を越えて様々な怪物を紹介。

ここまでは、従来のニュースと同様。

加えて、『The Enemy Within』キャンペーン終了後の予定についての記載があり。それによりますとプレイヤー向けの本が2冊計画されており、うち一冊は追加の魔法データ、もう一冊が装備品についての書籍となる模様です。

種族紹介についてのさらなる企画があり、エンパイアの国境を越えての異国の記事も予定。

『Archives of the Empire vol.II』では、エルフ、ドワーフ、ハーフリングに加えてオウガも紹介。『vol.III』と題したPDFのみ出版のちょっとした拡張データや、既に設定資料が出ている大都市アルトドルフやミドンハイムを舞台にしたシナリオも企画中。

ざっとこんなもんだ!