無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Empire in Ruins:ウォーハンマーRPG4版

エンパイア荒廃す!
全5巻から成るキャンペーンシナリオ『The Enemy Within(内なる敵)』最終章となる第5巻『Empire in Ruins(エンパイア荒廃す)』のPDFがついに公開されました。ずいぶん待たされたものです。これまで二ヶ月間、キュービクル7エンターテイメントのサイトを開いては「a few weeks(ほんの数週間)」「coming soon(間もなく公開)」「available soon(間もなく入手可能)」「Stay Tuned(乞うご期待)」という単語を眺めて過ごしておりました。9月中旬にもなると、これはもう予告されていた2021年第3四半期には間に合わないかと不安になっていたところです。付け加えておきますと「coming soon」と書かれていたのは8月11日の記事です。

しかし、待たされた甲斐はありました。GM向けに書かれているシナリオの背景説明で、最初の1ページ目から衝撃の展開が記されているのです。

どのような展開か申しますと、完全なネタバレになってしまいますので説明致しかねます。

話題を逸らしましょう。

Empire in Ruins』はキャンペーンの最終章に相応しく、これまでのシナリオの重要人物やゲストキャラクター、さらには一場面だけ登場したちょい役キャラに至るまで、大挙して再登場しています。

『The Enemy Within』キャンペーン以外からも、都市設定資料『Middenheim: City of the White Wolf(ミドンハイム:白狼の都市)』『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』に掲載されていた人物や、短編シナリオ集『Rough Nights & Hard Days(日夜是騒乱)』『Ubersreik Adventures(ユーベルスライクの冒険)』のキャラクターも出演しています。まさしく、何シーズンも続いてきた長編ドラマの最終回の如き趣きで、これまでのシナリオそして追加資料の集大成となっているのです。

Empire in Ruins』では、エンパイアの重要人物が多数登場します。中でも極めつけに重要な人物は、選帝候のお歴々でございましょう。

これまでの所、4版で能力値が明らかになっている選帝候は、ナルンのエマニュエル・フォン・リーベウィッツ伯爵夫人とミドンハイムのボリス・トッドブリンガー伯爵。それぞれ『Rough Nights & Hard Days』『Power behind the Throne(玉座の影の権力)』に掲載されてございます。お二人とも今回のシナリオで再登場。

前回登場した際は、とりわけ写真うつりが悪い瞬間を選んだような挿し絵となっていたナルン選帝候ですが、今回は澄まし顔で載っております。

挿し絵について申し上げますと、マリウス・レイトドルフ伯がなかなかに印象深いものでした。このお方は奇矯な言動と戦争を大変に愛好なさるご気性で名を馳せてございまして、まあその何と申しますか、警官隊とのカーチェイスの末に捕まった強盗のような、何かがヤバい感じにキマった笑顔をなさっています。

エンパイアで最高位の宗教指導者であるシグマー教団総大主教大司教、ウルリック会大僧正もNPCとしてデータが設定されています。

という事は・・・、もうお判りですね、彼らの所持品も載っているわけです。「首座の杖」や「翡翠の鷹獅子」といったマジックアイテムがデータ化されているのです。エンパイアの至宝と呼ぶべきアイテムのみならず、それ以外にも様々なアイテムやシナリオ上のギミックが登場します。

例を挙げますと、キャンペーンシナリオの4巻目『The Horned Rat(角在りし鼠)』の直後から今回のシナリオが始まるわけです。『The Horned Rat』のラストに登場したアレを自作シナリオに登場させるためのデータを知りたいと皆さん思いますよね!ええそうです、載っています。

登場人物以外にも、組織名に共通点を持たせていたとか、ある魔術師の部屋の内装が別の場所と共通しているとか、これまでのシナリオから様々なネタが取り入れられています。

すでに申し上げたことですがもう一度、『Empire in Ruins』はこれまでのシナリオそして追加資料の集大成となっているのです。

ネタバレにならないように本書の印象を申し上げましょう。

手前は過去の記事で“『The Horned Rat』は『ウォーハンマーRPG』でも壮大なスケールの冒険が出来るのだと、その事を教えてくれた”と申しました。『Empire in Ruins』はどうだったか?

さらに壮大な冒険になります。

ウォーハンマー小説で例えるなら、これまでのシナリオ集の単発シナリオが『ウォーホーク』くらいの騒動だとすると、『Empire in Ruins』はかの『ドラッケンフェルズ』さえも上回るような大事件を扱うのです。

読み終わった印象については述べましたので、本書の具体的な内容、かつ、シナリオ本編の内容に抵触しない話題をこれから扱いましょう。

本書には『The Enemy Within』キャンペーンをプレイする予定の無いGMにもお役立ちの情報が掲載されています。3つ挙げます。

テンプレートデータ:エンパイアに暮らす一般の人々
冒険の途中で出会うエンパイアの人々、たとえば小作農、使用人と使用人頭、兵士、騎士、巡礼者に至るまで、様々な一般NPCに使えるテンプレートが載っています。さらに、騎士はいずれの騎士団に所属しているか、狂信的な巡礼者はどの教団の支持者であるか、といったことによる能力値の違いも例示。アナタのシナリオに登場させる一般人NPCは、『Empire in Ruins』があればすぐに用意できることでしょう。

テンプレートデータ:ナイトゴブリン
『The Horned Rat』で一般的なスケイブンの能力値が示されたように、『Empire in Ruins』では様々なナイトゴブリンの一般的な能力値が提示されています。「スカーゴッボ(傷跡ゴブほどの意味)」と呼ばれる力自慢のゴブリンや、シャーマンのお告げを真に受ける「ルーニー(変人)」と呼ばれるゴブリンも新たに登場。

後者は旧版ではフェナティックと呼ばれていた連中ですね。鎖付き鉄球を使う危険な敵です。『Cluster Eye Tribe(百眼族)』でフォレストゴブリンの部族が紹介されていたのと同じような形で、ナイトゴブリン部族の中心人物や生態についても多少の記述あり。

新たな魔法体系:「リトル・グァーグ!」
ゴブリン専用呪文が追加されました。これまで出版された中では『Warhammer Fantasy Starter Set(ウォーハンマーRPG スターターセット)』でほんの少しだけ紹介されていましたが、今回さらに呪文が増えました。『Cluster Eye Tribe』に載っていた「Creature Advancement Template(クリーチャー強化テンプレート)」があれば、ゴブリンの呪術師を作り出すための選択肢がこれまでになく広がります。

 


最後にもう一つだけよろしいですか。
専用呪文といえば、キュービクル7エンターテイメントのサイトに掲載されていたお知らせを思い出したのです。

9月21日の記事によりますと、『Archives of the Empire vol.II(帝国公文書集 第弐巻)』では集団戦のルール、オウガPCの作り方、幾つかの追加キャリアに加えて大食魔術(オウガ独自の魔法体系)が掲載されるそうです。

Empire in Ruins COMPANION(エンパイア荒廃す:冒険の手引き)』についてのお知らせもありまして、冒険の舞台とならなかった他の大領邦では何が起こっていたのか、ゴブリン部族のさらなる紹介、追加シナリオが3本、といった記事が予告されていました。

『Imperial Zoo(帝立動物園)』は、校正を行う書記がグリフォンに襲われて負傷したため、PDFの公開が2021年第4四半期にずれ込みます、というお話も。

ざっとこんなもんだ!