無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Ubersreik Adventures II:ウォーハンマーRPG4版

前回の更新から一ヶ月が経過しました、皆様いかががお過ごしでしょうか。手前はと申しますと、『Empire in Ruins COMPANION(エンパイア荒廃す 冒険の手引き)』がまだ発売されていないので、過去に出版された追加サプリを読み直して心を静めているところであります。

これまでに発売されている追加資料を読んでおりますと、ウォーハンマーRPGには何人もの名探偵が登場していることに気づかされます。例えば“自称世界一の探偵”エルキュール・ド=ガスコーニュ氏、名前に職業そして独特のベルギー訛からエルキュール・ポアロがモデルなのは明らかです。アルトドルフ波止場警備隊の“ダーティ”ハラルドことハラルド・クラインダインスト署長。こちらは言うまでもなくクリント・イーストウッドが演じた刑事を元にしておりますね。

他にも腕利きの探偵と致しましては、シェリー・ソーンコッブル捜査官が『Patrons of the Old World(オールド・ワールドの後援者たち)』に掲載されてございます。お住まいが“ナルン市ベッケリン街112”という、どこかで聞いたような番地なのです。多分マイキー・ソーンコッブルとかそういう名前の有力者の兄がいるんだろうなあとか、そのうちどこかの滝で転落死を偽装するんだろうかとか、まあそのようなことを考えながら日々を過ごしております。

さて本日紹介しますのは、少し前に英語版PDFの販売が始まった『Ubersreik Adventures II(ユーベルスライクの冒険 その2)』と致しましょう。

何故『Ubersreik Adventures II』を話題に取り上げるのか、少々説明させて頂きたく存じます。

第一の理由は、『ウォーハンマーRPGスターターセット(WHRPG Starter Set)』邦訳版が遂に発売された、えーと、書籍版が9月末でPDFは10月下旬か、・・・ためであります。

スターターセットでエンパイアの都市ユーベルスライクの設定が披露された今こそ、ユーベルスライクを舞台にしたシナリオ集の見所を紹介するのに適した時期である、手前斯様に考えた次第でございます。

では何故『I』を飛ばして『II』から話をするのか、という至極尤もなご指摘もございましょう。『Ubersreik Adventures』シリーズは短編シナリオ集であり、故に迂闊に何かを話すとネタバレに触れる恐れがございます。『II』の方がまだネタバレを回避して話をし易い内容となっておりまして、これが理由でございます。

ネタバレしないように申し上げますれば、『Ubersreik Adventures』『Ubersreik Adventures II』 いずれもバリエーションに富んだ冒険シナリオが掲載されております。怪物退治あり、ミステリー仕立てあり、都市型ダンジョン探検あり、といった具合。

既に申し上げましたとおり冒険の舞台はユーベルスライク、従いましてスターターセットで言及されている人物や場所が扱われている訳なのですが、全体的に『II』の方がスターターセットとの結びつきが強いのです。

例えば、スターターセットで言及されていた(そして詳細データが伏せられていた)NPCは『Ubersreik Adventures』一冊目にも登場します。しかし、人数といい地位といい『II』の方に軍配が上がるのです。ユーベルスライクの重要人物たちのデータを知りたいのであれば、『Ubersreik Adventures II』を読むことをお勧めいたします。

さらに、『II』ではユーベルスライクならではの出来事を踏まえたシナリオも用意されています。

確かに、『I』もユーベルスライクを舞台にしていますが、必ずしもこの町を舞台とする必要がない面もありました。『I』のユーベルスライクは舞台というよりも背景といったところでしょう。

『Ubersreik Adventures II』最終章はシナリオではなく地域ガイドとなってございます。ユーベルスライクのかつての支配者ユングフロイト伯の領地である黒岩公領の紹介記事、ユングフロイト家の人々、家臣団、軍事力についての記事が掲載されております。

ウォーハンマーRPGではキャラクターが出世して上位のキャリアに就くにはそれに相応しいアイテムを入手する必要があるのは皆様ご承知の通り。「貴族」のキャリア最上位の「大貴族」になるのに必要な所持品には“領邦”がございます。

必要なアイテムのうち宮廷服や手鏡は容易にイメージできるが“領邦”って何だよ、と途方に暮れていたそこのアナタ!『Ubersreik Adventures II』の黒岩公領を参考にしてみては如何でしょうか。まあ、入手できるかは別問題ですけどね。

ちなみに別の章ですが、「大商人」になるために必要なアイテム“大邸宅”の参考になる見取り図も載っています。そう、見取り図が載っているのです。
一応申し上げておきますと、開錠道具の価格はルールブックの303ページに載ってございます。

冗談はともかく、これまで『Ubersreik Adventures II』の話をして参りました。では一冊目が『II』より劣っているかというと、そんなことはありません。スターターセットとの結びつきが強いが故に、『II』の方が特徴を指し示し易かっただけであります。

一冊目について、必ずしもユーベルスライクを舞台とする必要がないものもある、と手前先ほど申し上げました。まさしくそれこそが一冊目の強みだと思うのです。

つまり、エンパイアのどの町を舞台にしても成り立つ一般的なシナリオが載っているのが『Ubersreik Adventures』であり、スターターセットで設定が固まったユーベルスライクをよりじっくりと味わうシナリオ集が『Ubersreik Adventures II』なのです。

ウォーハンマーRPG4版では、資料が相互に言及しているところが幾つもありまして、たとえばシナリオフック集『ライクランドに冒険あり(Adventure Afoot in the Reikland)』に載っている「ゴーラム・グラットンガットの肉料理屋」は『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』でより詳しく扱われておりますし、「束縛する絆」で言及されている魔女アンジェラは『Patrons of the Old World II』に詳細が載っています。「“珍奇の”こそ我がミドルネームなり」のマルサシウス動物展は『Enemy in Shadows(影に潜みし敵)』に登場している・・・、それどころか表紙に載っています。公式の短編シナリオの中には『ライクランドに冒険あり』が基になっていると思われるものもあります。まだまだありますが、このくらいにしておきましょう。

設定が深まってくるのは良いことですが、関連資料があまり多いのも考えものでして、全5章追加資料含めて全10冊の『The Enemy Within(内なる敵)』のような大冒険をいきなり始めると息切れしたり、途中で挫折することもあるでしょう。

ルールブックさえあれば始められる短編シナリオ集『Ubersreik Adventures』、スターターセットがあればより一層楽しめる『Ubersreik Adventures II』、いずれも手軽に始められる冒険としてお勧め致します。

スターターセットに対応する『Ubersreik Adventures』シリーズと同様に、設定資料と対応する短編シナリオ集というものは他にもございます。

邦訳版の出ている『ライクランドの建築(Buildings of the Reikland)』には、対になる短編シナリオ集『One Shots of the Reikland(ライクランド短編シナリオ集)』がございます。短編シナリオ集では『ライクランドの建築』に掲載されている“ハーツクライム閘門”“ヴァーレン神殿”“飛びかかるペガサス亭”などを舞台にした冒険を扱っておりますので、こちらも同様に一読をお勧めします。