無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Empire in Ruins COMPANION:ウォーハンマーRPG4版

ウィトゲンドルフ卿 万歳!
この度は『Enemy Within(内なる敵)』キャンペーン全5巻の長旅を終えられ、エンパイア救国の英雄として凱旋なさるとのこと、まことに目出度きことと存じます。領民一同を代表し、貴方様のご帰還を心よりお慶び申し上げます。

さて、先達て『Empire in Ruins COMPANION(エンパイア荒廃す 冒険の手引き)』が発売されたことはお聞き及びかと存じます。この知らせは既にGMの耳にも届いております故、悪意の限りを詰め込んだシナリオをGMが今まさに書き綴っている所でございましょう。左様なわけで、貴方様の旅はまだ続くものと思われる次第にございます。

冗談はともかく、シナリオ本編と副読本合わせて全10冊で構成される『Enemy Within』キャンペーンの全ての書籍が遂に出揃いました。

Empire in Ruins COMPANION』には、キャンペーン中に差し挟むことの出来る追加シナリオあるいはシナリオフックが各種掲載されてございます。勿論、独立した短編シナリオとして使うことも可能です。

Empire in Ruins COMPANION』の構成は『Power behind the Throne COMPANION(玉座の影の権力 冒険の手引き)』と似通っており、冒険の舞台になった場所や劇的な場面に関するシナリオフックが冒頭2章を占め、その次の章が悪役の組織設定となっています。

『Enemy Wthin』副読本シリーズに毎回設けられているNPC集のコーナーは、オストランド大公領とノードランドの現状を紹介する章に設けられています。

ご存じの通りウォーハンマーRPG4版では年表がしばしば登場します。『Empire in Ruins COMPANION』ではどうだったか?

驚いたことに、悪役個人の年表が載っていました。手前これには意表を突かれました。

しかし、何と言っても見逃せないのはEmpire in Ruins』シナリオ終了後のエンパイアで何が起こるのかを描いている章です。

この章の情報を元にすれば、『Enemy Within』全5巻の冒険を終えた皆様に新たな冒険を提供できるのです。

しかも、展開が複数に分かれているのです。シナリオ本編で悪役の企みを阻止する際に、どのように阻止したかによりその後のルートが分岐するのでございます。

たとえば、めでたしめでたしで終わる展開もあります。悪役が再興する展開もあります。これまで小説やサプリメントで無能扱いされていた人物がとうとう本気を出す展開があります。あるいはシナリオ本編よりも状況が悪化し、最悪の事態を招くことさえございます。申し添えておきますと、この章には極めつけに強力な悪役NPCが掲載されております。

『Enemy Within』キャンペーンを終えてエンパイア救国の英雄となったそこのアナタ!次はエンパイア再建の英雄になってみませんか?

他にも、冒頭の2章では聖遺物から怪現象までシナリオのネタに出来そうなデータを各種取りそろえてございます。

聖遺物をゲームに登場させる際は、人物の設定と同じくらい時間をかけて背景をしっかりと設定し、背景に合った効果を定めておくようにとのアドバイス有り。

怪奇現象のデータは、魔法の暴走からディーモンの出現まで様々ございます。

何が起きるか例を申しますと、机や椅子がその脚で街路を駆け抜け、蛙や魚そしてビールが空から降り注ぎ、生き返った精肉が店先から逃げ出す混乱の中でディーモンが暴れ回る、・・・という。

ピーター・ヴェンクマン博士に助けを求めたいケッタイな状況かもだ。

冗談はともかく、新たなディーモンに加えて‘さまよう看板’‘動き回る家具’‘生き返った食材’もクリーチャーとしてのデータが設定されています。
手前‘さまよう看板’がモンスターとして登場するのを見たのは『サタスペ』以来です。

コロッサル・スクイッグなどの大型クリーチャーも掲載。死霊術師の創造した超大型モンスターのデータも載ってございます。手練れのGMならばこれらの怪物を用いてプレイヤーの度肝を抜く方法を幾つも思いつくことでしょう。

データ以外にも設定や読み物に見所があります。冒険の舞台とならなかったオストランドやノードランドの設定、クライマックスの場面でPCが居合わせなかった場所では何が起きていたか、いがみ合っていた(あるいは手を結んでいた)悪役側の内情など、主人公の視点では見ることのできなかった様々な情報が掲載されているのです。

悪役が勝利した場合のホワット・イフ展開をお望みのそこのアナタ!『Enemy Within』と同じ時系列で舞台を変えて冒険をしたいそこのアナタ!『Empire in Ruins COMPANION』をお勧めいたします。

なお、追加シナリオやシナリオフックで、オウガや大規模戦闘そしてフレデルハイム大療養院に言及しておりますので、先日発売された『Archives of the Empire vol.II』をお手元に用意しておけばきっと役立つことでしょう。