Dwarf Player's Guide:ウォーハンマーRPG4版
「ダウイとその盾、揺らぐこと無し!」
遂に『Dwarf Player's Guide(ドワーフ・プレイヤーズガイド)』PDF版の販売が始まりました。
ドワーフのキャラクターを大幅に強化する多種多様な選択肢がこの本に提示されております。掲載されている各種ルールを導入することで、ウォーハンマーRPG第4版のゲーム環境を一変させることでしょう。
基本ルールブックで扱われている冒険の主な舞台は帝国の中心地ライクランドであります。そして基本ルールブックには、ライクランドに居住するドワーフの多くが故郷を失って帝国領内に移り住んだ者たちの子孫であるとも記されています。
例えばゴブリンの襲撃で故郷が滅ぼされていたり、あるいは新天地で一旗揚げるためにあえて故郷を離れることを選択したのかもしれません、ことによると追放されたアウトローという可能性もございます。
これまで発表されてきた各種設定資料の記述では、ドワーフが衰退しつつある種族であることを印象づける内容が多かったような印象がございます。
確かに往古のドワーフ大帝国は失われて久しいですが、今なお彼らはオールド・ワールドの山岳地帯に確固たる拠点を持つ一大勢力です。
まずはその経済力、『Dwarf Player's Guide』によると、ドワーフの中では金回りの良くない部類に入る国の王でさえ、エンパイア随一の豪商を遙かに凌ぐ財力を誇るのだそうです。データ的に申しますと「豪商」の地位レベルが黄金級3、一方で「山岳王国君主(Karak Lord)」が黄金級8。その差は歴然です。
そして先進的な工学技術、ルールブックでも言及されているように、ドワーフの都市は「目を見張り、息を呑むような技術の粋に彩られている」のです。エンパイアの臣民の皆様には魔法としか思えないような、驚異のテクノロジーの数々をアナタのシナリオに登場させたいと思いませんか?そのためのデータは揃ってございます。
すっかり前置きが長くなってしまいました。
ドワーフの歴史、文化、価値観、社会構造、信仰、新たなキャリアと新《異能》に新〈技能〉、数々の専用アイテム、ルーン魔術、更にドワーフ司祭についてのデータが満載の『Dwarf Player's Guide』の内容を見て参りましょう。
これまでのサプリメントと同様に、最初の章に種族の歴史と年表が配置されています。第一章はだいたい十ページほど。これまでの資料に記されてきた様々な内容を整理し、ドワーフの歴史の概要を簡潔にまとめてございます。掲載されている年表に拠りますと、帝国暦前4523年がドワーフ暦元年に当たります。付け加えておきますと、ドワーフの感覚ではここ二千年ほどが「現代」に当たるそうです。
ドワーフは種族として長い歴史を持つだけではなく、生物としての寿命も人間の数倍に及びます。長い時間感覚を持つことの帰結として、彼らは人間のキャラクターとは大分異なる価値観をお持ちです。左様なわけで、ドワーフの文化に関する章も見逃せません。
第二章には、ドワーフのキャラクターを演じるために必要な各種事項が記されており、彼らの価値観、社会制度、埋葬習慣、食生活等々、話題は多岐に渡っています。
ドワーフは永い歴史の磨耗に耐えてきたものを何より重んじます。名匠の遺した傑作や先祖伝来の家宝、代々受け継がれてきた一族の伝統、そのような事物に計り知れない価値を見いだしているのです。
氏族の長老や祖先たちは崇拝にも近い尊敬を集めておりますし、年齢と経験の象徴である長く伸ばした髭をドワーフは殊の外大切にしてらっしゃいます。高齢のドワーフはドワーフ社会で「長髭(Longbeard)」と呼ばれ敬意を以て扱われます。
さて、ここからが肝心な話。『Dwarf Player's Guide』があれば、アナタは長髭ドワーフのキャラクターを創造することができるのです。
ドワーフの高齢者を甘く見てはいけません、彼らは単に社会で尊敬されているだけではなく・・・、もちろんデータ的には地位レベルが高いものとして扱われますが、何よりも強力なアドバンテージはその経験です。彼らはその長い人生において、想像し得るあらゆる困難に遭遇しているのです。したがいまして、どのような苦境に陥ったとしても長髭のドワーフは必ず対処法を心得ているわけで・・・、まあぶっちゃけた話、様々な判定にボーナスを得ることができるわけです。
時の重みと同じくらいドワーフ社会で重要視されているものが、怨恨と応報です。
怨恨と応報という概念は単なる価値観ではなく、ドワーフにとって社会の根幹をなす法でもあります。文字通りの意味で法なのです。
ドワーフは受けた侮辱や裏切り行為を一族の「怨恨の書」に書き留めていきます。取引を始める際には、当事者双方が一族の「怨恨の書」を照らし合わせ、お互いの間に残る先祖代々の遺恨が全て清算されるまで交渉の席に着くことはありません。
付け加えておきますと、ドワーフの言語であるカザリッドに「許す」という語彙はございません。
ですがご安心ください、『Dwarf Player's Guide』では、晴らすべき遺恨に対してどのような復讐が妥当であるか指針が定められております。頼りになるドワーフ法の専門家も載っています。
ドワーフ社会の法律家は「清算人(Reckoner)」と呼ばれておりまして、怨恨の帳簿管理と賠償額の算定、遺恨清算の交渉に特化した頭脳労働者です。故に、エンパイアの弁護士とは異なるキャリアが設けられております。
第三章にはドワーフの新キャリアが多数掲載されておりまして、鉱夫や技師など基本ルールブックで紹介されている職業のドワーフ版のバリエーションが示されます。醸造職人はドワーフ社会で尊敬されている職業であり、通常の熟練職人とは別に独自のキャリアが設けられています。
基本ルールブックでは、ドワーフの聖職者は独自のキャリアとしては存在せず、その神が司る物事に関連するキャリアに就くことで表すとされていました。お疑いならルールブックの215ページを開いてくださいね。『Dwarf Player's Guide』ではドワーフ司祭のキャリアが初登場、しかも三種類。軍神を讃える「宿命の司祭(Doom Priest)」、家庭や健康を守る「炉端の司祭(Hearth Priest)」、先人の遺した傑作と技術を守り伝える「鍛冶の司祭(Forge Priest)」であります。
「ルーン鍛冶(Runesmith)」も遂に登場。確か四年ほど前のことと記憶しておりますが、Cubicle7のブログに掲載された記事では『Winds of Magic(魔力の風)』でルーンに関するルールが発表されるということでした。ずいぶんとまあ待たされたものです。
「山岳偵察兵(Karak Ranger)」「鋼砕き(Ironbreaker)」など、これまで発売されたサプリメントで紹介済みのキャリアも、全く新たなデータで再設定されています。
ウォーハンマーRPGの看板キャラクター「スレイヤー」についても新たなバリエーションが示されています。さらに、スレイヤーでありながら別キャリアの成長を選択できる、いわば兼業スレイヤーに関する記述もあり。
大量の銃火器で武装したスレイヤー・エンジニアや白鯨との死闘を追い求めるスレイヤー・キャプテン、飛行機械を乗りこなす命知らずのスレイヤー・パイロットなどを作り出すことができます。
これまでのルールに基づくとスレイヤーの誓いを立てた者が行き着く先は「栄光ある最期」それも引き返せない一本道でした。『Dwarf Player's Guide』の選択ルールにより「栄光ある最期」に到るUターン禁止の道筋が各人各様に増えたのです。一応申し上げておきますと、一旦スレイヤーになった者が別のキャリアの成長を選択したとしてもスレイヤーの誓いが取り消されるわけではございません、悪しからず。
新たな《異能》〈技能〉も数多くございます。
例えばウォーハンマーRPGの世界で黒色火薬を発明した種族はドワーフですので、彼らは黒色火薬武器を知り尽くしています。そのため「特性:黒色火薬」の効果を最大限に引き出すための種族専用異能がございます。
伝統を重んじるのであれば、せいぜい三千年の歴史しかない黒色火薬武器よりも弩を選ぶ方もいらっしゃることでしょう。「クロスボウ類」の威力を高める異能もございます。
独自の異能は文化に根ざしたものだけではございません。ドワーフはアルコールの代謝が他種族とは異なっておりますので、異能を修得することにより酒の力で一時的に能力値を引き上げることができるようになるのです。
経験点ボーナスを得る異能が欲しくはありませんか?
経験点にボーナスが付く異能と言えば従来から《運命付け》がありましたが、獲得できるのは人間のキャラクターのみで、しかもキャラクターが死亡したときにしか効果を発揮しないものでした。
ドワーフ専用異能《祖先の怨恨(Ancestor Grudge)》は、特定の条件を達成する度に追加の経験点を得ることができるようになるものです。追加経験点を得るためにキャラクターに死んでいただく必要はございません。
さて、これまで発売されたサプリメントでは人間のキャラクターについては出身地に基づいて、ハーフリングの場合は出身氏族に基づいて、初期成長にバリエーションを付与する選択ルールが紹介されてございました。
『Dwarf Player's Guide』では、ドワーフのキャラクターについても同様のルールが追加されています。ドワーフ王国最大の都市カラザ=カラク出身者は《祖先の怨恨》異能を取得できますし、工業の中心地ザフバル出身のドワーフは工学技術に長けています。ゴブリンやスケイヴンとの戦いの最前線であるカラク=エイトピークや、戦神グリムニルの大神殿があるカラク=カドリン、地下道の拡張工事が続くカラク=イゾール、山岳王国ごとに初期成長で得る《異能》と〈技能〉に特徴が現れています。
蒸気船や潜水艦が寄港する港町バラク=ヴァル出身であれば、操船技術を修得した初期キャラクターだって作れますよ。
ええそうです、手前たった今「潜水艦」と申しました。
ドワーフの工学技術というのは実に全くもって大したものです。エンパイアの臣民たちが夢に見ることもないような、壮大極まる機械仕掛けが日々組み立てられているのですから。
第四章では数々の追加アイテムをご紹介。
職人の仕事道具やドワーフの弁護士が交渉に際して用いる伝統的な石板、鉱夫のヘルメットなどの日常的なアイテムも有れば、船底から甲板まで鋼鉄で覆ったモニター艦やドレッドノート級戦艦など巨大な物も掲載されてございます。
ウォーハンマー世界で最も強固な金属グロムリルで作られた鎧もデータが掲載されておりまして、一応は価格も示されております。しかしながら、計算上は最低でもこの値段になるという参考価格でございまして・・・。誠に申し上げ難いのですが、ドワーフではない種族に対してグロムリルが売りに出されることは「無い」のだそうで。
さらに付け加えさせていただきますと、非ドワーフ種族にグロムリルの鎧一領が送られた事例は全ドワーフ王国の歴史書を紐解いても一度、ひょっとすると二度あったかどうか不確かなほど希な出来事だそうです。
グロムリルの希少性は比類なきものですので、外の世界では滅多にお目にかかれません。ドワーフの有力者がエンパイアの大貴族の機嫌を取るための贈り物としては、むしろ飛行機械が選ばれますな。
左様、空を飛ぶ乗り物にございます。空気よりも軽い気体を巨大な袋に詰め、船ほどの大きさのある乗り籠を吊した飛行船と、風車のような羽根を蒸気エンジンで回して空を飛ぶ“ジャイロコプター”が代表的なものでございます。
ハインリッヒ・トッドブリンガー男爵に送られた飛行船「スカイウルフ」が中央山系の上空を悠々と進む姿をご覧になった方もいるのではありませんか?
もちろん、より一般的な個人用の武器だって掲載されておりますぞ。ドワーフの名匠が鍛えた斧やハンマーにスレイヤーが扱う凶悪な鎖斧、そして近接戦闘用の「技師用武器類」まで。
中でも刮目すべき物を一つ挙げるなら、手前は「スチーム・ガントレット(Steam Gauntlet)」を選びます。動力付きの金属製グローブで、間合いこそ短いもののその威力は折り紙付き。これさえ有れば非力なアナタも豪腕のオーク族長とタイマンでガチ殴り合いができます。
第四章の締めくくりは、有名なルーンアイテムの紹介記事が数件。そして次の章ではいよいよ、ドワーフのルーン魔術とマジックアイテム作成ルールの詳細が明かされます。
『Dwarf Player's Guide』第五章につきましては、良い知らせと悪い知らせ、そして悪い知らせと良い知らせがございます。
まずは良い知らせ。このルールを用いればマジックアイテムを作れます。アナタの冒険パーティーにルーン鍛冶がいれば魔法のアイテムを手に入れる機会がぐっと増えます。何ならアナタ自身がルーン鍛冶になってアイテムに魔力を込めているかもしれません。
確かに、『Archives of the Empire Vol.II(帝国公文書集 第弐巻)』にもマジックアイテムを作成するルールが掲載されていましたが、かなり成長したキャラクターでなければ達成できない厳しい条件が課されていました。
『Dwarf Player's Guide』に掲載されているルーン鍛冶のルールを導入すれば、信用できない人間や憎むべきエルフの魔法使いよりもずっと早く、確実に、安定した効果を持つマジックアイテムを作り出すことができるのです。これこそ伝統と実績に裏打ちされたドワーフの匠の技ってもんです。
次に悪い知らせです。ルーンアイテムを作り出すには、数々の制約に従わなければなりません。例えば、武器の効果を高めるルーンはどのような武器に刻むべきか厳格に定められております。そして鎧の防御効果を高めるルーンはグロムリル鎧の一領揃えにのみ刻むことができます。
先に申し上げましたとおり、グロムリルの鎧ひと揃いが他種族に与えられた事例は歴史上ほぼ皆無なわけでして・・・。
その他にも、ゲームバランスが崩壊しないように様々な制限がかけられています。
マジックアイテムを量産しようなどという虫の良い考えは通用しないのです。量産してもかまいませんが、必要な労力に対して見合わないと申し上げておきましょう。詳しくは126ページに記載の「誇りの掟」を参照くださいませ。
もう一つ悪い知らせがございます。一時的ルーンは存在しません。
ルーンアイテムの制作には「冒険外活動」を行う必要がありますので、それなりに時間がかかるものです。ウォーハンマーRPG第2版時代には、制作に長い時間がかかる「永続ルーン」と短い時間で制作できる「一時的ルーン」の二種類がありました。
しかし第4版の世界では、「一時的ルーン」は存在しません。当代最高のルーンの巨匠“厳格なる”クラッグ御大がそう言っているのですから信じるしかないでしょう。
良い知らせといたしましては、ルーンアイテム制作に必要な時間を短縮するルールが設けられていることが挙げられます。「欠陥のあるルーン」であれば、アイテムの完成に必要な成功度を減らすことができるのです。
もちろんドワーフの職人が仕事に手を抜くことはあり得ないことですし、ルーン鍛冶ともなればなおさらです。アナタのキャラクターがあえて「欠陥のあるルーン」を作ろうとすることはないでしょう。
しかし、プレイヤーであるアナタは別です。プレイヤーが望むのであれば、アナタのキャラクターが意図せずして欠陥のあるアイテムを作ってしまうこともあるでしょう。
第六章はドワーフの信仰に関する内容でございます。三大祖神グリムニル、バラヤ、グルングニに始まり、死者の守り手ガズルや最初の技師モルグリムなど特定の役割を持つ神々も紹介。
大神殿の所在地や主要な祭日、描かれる際の姿や神殿の内装、そして戒律も示されています。
興味深い点と致しまして、ドワーフの神々はいずれも武装した姿で描かれるということがございます。
埋葬儀礼を確立したガズルは死者の安寧を守る役割があるので、武装した姿で描かれるのもまあ当然でしょう。
家庭の守護者で醸造の神、そして表音文字の発明者という地母神バラヤの彫像でさえ、角付き兜に鎖帷子と盾で武装しているのです。
ドワーフの歴史は戦いの連続でございます。四千年ほど前のスケイヴンの襲来とそれに続くゴブリン戦役は一旦終息したものの、断続的な籠城戦は今なお続いています。
ドワーフの神々がいずれも軍神としての側面を持っている理由はこのためでございましょう。
そして大祖神は、圧倒的に不利な状況を覆す力をドワーフに授けています。
ルーン鍛冶ほどのレパートリーはありませんが、ドワーフの司祭たちは祖神が司る役割に応じたルーンアイテムを制作出来るのです。
例えば死者の守り手ガズルの司祭は死霊術師にバチ喰らわせるルーンを扱うことが出来ますし、金属加工の祖神スメドニルに仕える司祭はルーン魔術で武器の切れ味を高めることが出来ます。
確かに往古のドワーフ大帝国は失われて久しいですが、今なお彼らはオールド・ワールドの山岳地帯に確固たる拠点を持つ一大勢力です。
ドワーフたちが栄光を取り戻すために必要な数々の追加ルールとアイテムのデータは『Dwarf Player's Guide』に記されています。
足りないものはあと一つ。そこのアナタ!新たなキャラクターを創造して大冒険を繰り広げ、失われた古ドワーフ王国をゴブリンの手から取り戻したいと思いませんか!
The Corsairs of Captain Flariel:ウォーハンマーRPG4版
今回紹介いたしますWFRP4eサプリメント『The Corsairs of Captain Flariel(フラリエル船長の海賊団)』のテーマはダークエルフです!…と申し上げたところで気が付いたのですが、4版の基本ルールブックにはダークエルフに関する記述が一切ございません。ただの一言たりとも語られていないのです。
しかし、彼らはウォーハンマー世界の歴史に重大な影響を与えてきた種族なのです。
例えば、様々なファンタジーものにおいてドワーフとエルフは頗る不仲と相場が決まってございます。ウォーハンマーRPGの世界も左様な設定があるわけでして、特にドワーフは「嫌悪(エルフ)」の心理特徴に関する選択ルールまで設けられているほどです。
二種族の不和は、数千年前に起きた「髭戦争」(あるいは復讐戦争)に遡るということは皆様ご承知の通りと存じます。
RPG版で明言されたことは無かったと記憶しておりますが、ウォーゲーム版の設定によると実は!髭戦争はダークエルフの策略によって引き起こされたものなのであります。
あるいは、エルフが衰退しつつある種族というのもまたファンタジーRPGのお約束でございまして、ウォーハンマー世界においても、かつて栄華を極めたエルフの王国は今や著しく衰退しております。
ルールブックではその理由は曖昧にぼかされていますが、かすかなヒントが示されてございます。28ページをご確認ください、エルフの故郷ウルサーン島で数千年もの間内戦が続いていることが示唆されております。そう、内戦と書かれています。ウルサーンのエルフは、元々は同族であるダークエルフと永きに渡る戦いを続けているのであります。
他にも様々ございますが、ダークエルフはウォーハンマー世界に甚大な被害を与えた悪役の一大勢力として確固たる地位を築いています。ダークエルフの様々な悪行の結果、オールド・ワールドが今の姿になったと申し上げても過言ではありません。
そして『The Corsairs of Captain Flariel』には、ダークエルフがどのようにウォーハンマー世界を揺り動かしてきたか子細に描かれて・・・おりません。
ダークエルフがどのような種族か数ページを費やして描写しておりますが、エンパイアの学者が証言を書き留めた手記の体裁で示されておりますので、明かされる情報は断片的なものとなります。
とはいえ、オールド・ワールドの住民から見たダークエルフとはどのような存在か、雰囲気を掴むには適した形式になっています。
最初の3ページでダークエルフがどのような種族か把握しましたら、各種データが掲載されているページに進みましょう。
ダークエルフのクリーチャーデータが掲載されているのみならず、NPC強化テンプレートも載っております。新たに公開された「Sea Raider Templates(海の略奪者テンプレート)」を用いれば海賊船長から漕ぎ手まで、船上で活動する様々なキャラクターをすぐに用意できます。
もちろん、ダークエルフ以外の種族にもこのテンプレートを適用できます。Cubicle7のサイトの紹介記事に書かれているように、北方人の船乗りやブレトニアの私掠船長、ゴブリン河賊やアンデッド海賊を作ることだってできます。
さて、ウォーゲーム版のプレイヤーであればご存じの通り、ダークエルフの戦力は海軍だけではありません。
ヒドラや海竜などを敵にけしかける獣使いや、暗黒の魔術を操る妖術師のテンプレートも『The Corsairs of Captain Flariel』に掲載されてございます。
生まれつき魔法に適性を持つ種族であるが故、ダークエルフの妖術師は恐るべき敵役として猛威を振るうことでしょう。テンプレートに沿って各種能力値と《異能》〈技能〉を成長させた場合、経験点に換算してざっと7000点以上。さらに複数の魔法体系から呪文を選択することができます。
もう一つ付け加えておきますと、ダークエルフ独自の魔法体系もございます。掲載されている呪文はわずか数件ですが、中には極めつけに強力な攻撃呪文がございます。どのくらい強力か申し上げますと、えーとそうですね、DOTダメージの範囲攻撃呪文で抵抗にファンブルした相手を即死させるおまけ付き、というものです。
もしアナタがウルサーン生まれのエルフの場合、『The Corsairs of Captain Flariel』に載っているような情報は、(苦い経験を通じて)既に知り尽くしていることでしょう。しかし、アナタがそれ以外の種族であるならば、ダークエルフの恐ろしさを知っておくためにも、読む価値のある資料だと言えます。
The Hahnbrandt Militia:ウォーハンマーRPG4版
久方ぶりの更新となりました、皆様如何お過ごしでしょうか。
ここ4ヶ月の間にウォーハンマーRPGの邦訳版に幾つか動きがございました。『帝立動物園(The Imperial Zoo)』『武器を掲げよ!(Up in Arms)』の書籍が3月下旬に発売されております。さらに、4月下旬にはそれぞれのPDF版も販売が始まりました。
一方、原語版のほうはどうかと申しますと、現時点における最新の追加資料は『The Hahnbrandt Militia(ハンブラント民兵隊)』でございます。そしてその内容は『武器を掲げよ!』ととても相性が良いものでした。本日はその話を致しましょう。
『The Hahnbrandt Militia』は表紙や広告も含めて全19ページのミニサプリメントで、ハンブラントの町を守る兵士たちのデータが示されております。
本書によりますと鉱山街ハンブラントの統治者はヴァレンシュタイン伯爵とのこと。ヴァレンシュタイン伯のお名前は、スターターセットに付属している『ユーベルスライク・ガイドブック』に登場いたしますので、お聞き及びの方もいらっしゃることでしょう。
『The Hahnbrandt Militia』には、様々なNPC兵士を簡単に作ることができるテンプレートが掲載されております。このテンプレートは、以前紹介した『The Cluster Eye Tribe(百眼族)』や『The Night Parade(百鬼夜行)』と同じ書式で書かれてございます。
言うまでもないことですが、本書に掲載されているハンブラントの兵士たちは、このテンプレートを用いて作成されております。
作成できるのはエンパイア人の兵士だけではございません。ハイ・エルフの槍兵やドワーフのサンダラーあるいはウッド・エルフの弓騎兵も作ることが出来ます。若干データの修正が必要ですが、GMが少し工夫するだけでティリア人の弩弓兵だって作れます。
さて、中世をモデルにしたファンタジーTRPGにおいて、頻繁にGMを悩ませる問題がございます。「このゲームでは町の兵士ってどれくらい強いの?この町にはどのくらいの人数がいるの?」という問いでございます。
『The Hahnbrandt Militia』があれば、この疑問に明快な答えを出すことができるのです。
『武器を掲げよ!』に掲載されている“ティリアの地名辞典”のページを開いてください。52ページにございます。
地名辞典のページには、ティリア各地の町の住民数、防衛のために駐屯している職業軍人そして市民軍の人数、当地の特産品などが掲載されております。
兵士たちの人数の横に練度を表す三段階評価が示されていることにお気づきでしょうか?
『The Hahnbrandt Militia』には、地名辞典で示す練度a・b・cの兵士がそれぞれどの程度の強さなのか、データが示されているのです。
兵士の練度を表す三段階評価は、これまでの地名辞典でも共通しておりますので、ティリアだけでなくエンパイア領内各地の町や村にも、同じデータが適用できるのです。
左様、手前たった今“これまでの地名辞典でも”と申しました。
邦訳されているのは『武器を掲げよ!』だけですが、ウォーハンマー世界各地のデータを示す資料はこれまで何冊か出版されてございまして…えーと確か、
・『Death on the Reik COMPANION(ライク河上に死す:冒険の手引き)』ライクランド大公領の地名辞典
・『Power behind the Throne COMPANION(玉座の影の権力者:冒険の手引き)』ミドンハイム公領の地名辞典
・『Salzenmund the City of Salt and Silver(ザルツェンムント 塩と白銀の街)』ザルツェンムント公領とノードランド郡の地名辞典
ざっとこんなもんです。
このほかにも、『Sea of Claws(鉤爪湾)』には鉤爪湾沿岸と国際貿易港の地名辞典、『Lustria(ラストリア)』にはラストリアの地名辞典が設けられてございます。しかしながらこの2冊には、駐屯する兵士の人数と練度が記されてございません。ご注意くださいませ。
とはいえ、サプリメントにおける地名辞典の役割は、兵士の人数を確認することだけではございません。アイテムの入手難易度に関わる町の規模を知ることができます。交易ルールを用いるシナリオでは、特産品のデータが大いに役立つはずです。このように、地名辞典は冒険の様々な側面を広げてくれることでしょう。
そしてもう一つ、『Archives of the Empire vol.III(帝国公文書集 第参巻)』に拠りますと、商業神ハントリッヒの司祭としてキャリアレベルを上げるために必要なアイテムに地名辞典が含まれております。ハントリッヒの司祭を目指すそこのアナタ!これを機会にサプリを一冊買い足しては如何でしょう?
Tribes and Tribulations:ウォーハンマーRPG4版
Waaagh!(訳:イクサだぁぁァ!)
失礼、興奮して叫んでしまいました。
2024年最初のウォーハンマーRPG第4版追加資料集は『Tribes and Tribulations(戦辛蛮苦)』でございます。
表紙絵を見れば本書のテーマは一目瞭然、オークにゴブリンそしてトロールがぎっしり詰まっております。ウォーハンマー世界で悪役を担っているオーク&ゴブリン、すなわちグリーンスキンと総称される種族の背景設定とデータを満載した資料なのでございます。
ちなみに英語の定型表現で「Trials and Tribulations」と申しますと、試練や困難に次々と遭遇する様子を表すのだそうで。日本語に訳しますとそうですね・・・艱難辛苦とか千辛万苦とか、まあ大体そのような意味合いでございましょうか。
さて、1月19日にウォーハンマーRPGの界隈に新たなニュースが届きました。丁度この日に戦略ゲーム版ウォーハンマーの新作『Warhammer: The Old World(ウォーハンマー:ジ・オールドワールド)』が本格始動しておりまして、何と!このタイミングに合わせてキュービクル7エンターテイメントは『ジ・オールドワールド』を題材にした新作RPGを開発中と発表したのであります。
『ジ・オールドワールド』の舞台は帝国暦2270年代ですから、ウォーハンマーRPG4版の時代のざっと250年前、エンパイア三皇帝時代の頃でございます。これはこれで楽しみではあるのですが、そうするとWFRP4版はどうなる?不安になりますよね。手前は不安になり申した。
インスタグラムで公開された記事の続きを読んで参りますと、『ジ・オールドワールド』RPGとウォーハンマーRPGは併存して展開していくとの記述がございまして、「WFRPの製品もこの先数年分の企画が進行中、どんどん出版していくから安心してね!(意訳)」ということですので、まずは一安心といったところです。
WFRP4版で進行中の企画は何があったか思い返してみますに、昨年夏にキュービクル7から発表された出版予定に依りますれば、えーと確か「ドワーフに関する設定資料集」「エルフとウルサーンの諸王国」「貿易都市マリエンブルグ」「混沌の暗黒神に関する資料」、この4つが2024年に展開されると伺っております。
他にも、盗賊や野外活動を行うキャラクターのためのデータ集を作成中という話がだいぶ前にありました。
オーク&ゴブリンに関するデータ集については、これまで全く言及が無かったので完全に不意を付かれました。うれしい驚きです。
話が逸れてしまいました、『Tribes and Tribulations』の話を致しましょう。
ウォーハンマーRPGにおけるオークとゴブリンはメイン悪役の一角を占めてございまして、戦いと破壊と略奪を何よりも好む種族と設定されております。
特にオークの好戦性は凄まじいもので、目の前にいる全てのものを、それこそ生物/無生物を問わずあらゆる物をギタギタのボコボコに叩きのめしたいという衝動に駆られており、敵が居なくなると仲間内で争い始める習性を持つという、つまり何と言うかその・・・、エンジョイ&エキサイティングな連中なのであります。
何故これほど好戦的な気性を持っているのかという謎については、ウォーハンマー40Kの方で理由が示唆されてございます。尤も、エンパイアに暮らす善良な臣民の皆様が40K世界の秘密を知ることはありませんので、知らなくても全く差し支えございません。
オークやゴブリンは(とりわけオークは)行動原理が単純なためGMにとって使いやすい悪役である一方、そのシンプルさ故にキャラクターとしての差異化が難しいという欠点があります。
個性的なオークやゴブリンをシナリオに登場させたいそこのGMのアナタ!いますぐ『Tribes and Tribulations』を手に取ってください。
各種「クリーチャー強化テンプレート」をオークとゴブリン及びその亜種に適用することでどのようなキャラクターが作れるか、いくつもの例が示されています。
いかにも、手前たった今オークとゴブリンの亜種と申しました。
これまで出版された追加資料でデータが紹介されている亜種、たとえば森林地帯に棲息するフォレストゴブリン、地底奥深くに潜むナイトゴブリン、金属の使用を拒み先祖帰りを起こしたサベッジオークなどに加えて、4版では初登場となる種族も掲載されています。
東方の荒野を駆ける騎馬民族のホブゴブリン、悲嘆山脈でオウガの召使いとして生き延びているノブラー、そしてあらゆるグリーンスキン種族の中で最強と目されているブラックオークも遂に登場。
さらに、オウガやトロールについての記事もございます。その件については後述することと致しましょう。
ウォーゲーム版におきまして、オークやゴブリンは一定の確率で仲間割れを起こして同士討ちをするというルールになっております。『Tribes and Tribulations』の追加ルールにより、WFRPでもグリーンスキン種族は仲間割れを起こすようになりました。
ホブゴブリンがいると仲間割れの確率が高まります。一方、ハガネの規律を持つブラックオークの皆様は「オーク&ゴブリンの反目表」の影響を受けません。まあ、ブラックオーク自身は仲間割れを起こさないとしても、仲間割れを起こした手下をタコ殴りにするでしょうから、結果はあまり変わらないと思うんですけどね。
とはいえルール的には、ブラックオークの目が届く範囲でオークやゴブリンが同士討ちを始めることはありません。
グリーンスキン種族が乗騎として使役する動物や戦場で用いる大型の兵器についてもデータが紹介されています。さらには、オークやゴブリンの名前一覧まで載っており、至れり尽くせりの内容。
『Tribes and Tribulations』では複数の章を使ってオークとゴブリンの部族を紹介しています。名前を挙げますと・・・、
・ドラクヴァルドの森に棲息するフォレストゴブリン「百眼族」
・大型兵器の扱いに長けたゴブリン「折れっ鼻族」
・再起の機会を窺うオークの略奪隊「黒色山賊団」
・ゲリラ戦を得意とするサベッジオーク「岩蛇族」
・ホブゴブリンの部族「オグラ=カーンの狼賊団」
・オウガ傭兵「マトソッグの売剣団」
いずれの集団の構成員も「クリーチャー強化テンプレート」を用いて作られておりますので、テンプレートでどのようなNPCを作れるか具体的に示すものとなってございます。
同じテンプレートを用いたとしても、それぞれ種族が異なり、さらに設定や所持品そして乗騎を変えているため、多種多様な個性を作り出すことが出来るのです。
それぞれの章で各集団の強みも紹介されています。カリスマ的なリーダーがいるとか、特殊技能を持っているだとか、豊かな物資を得ているとか、そういった背景の説明がされています。加えて部隊編成と得意な戦術、旗印についても記載あり。
トロールについては別途章を設けております。トロールは様々な環境に適応できる生物でございまして、ルールブックに載っている学者のコメントによるとエンパイアには23種のトロールが棲息しているとの話でした。
「トロール用テンプレート」を活用することで、ストーントロールやリバートロール、ケイオストロールなど様々なモンスターを作ることが出来ます。古老トロールや巨大トロールなど、種類に関係なくあらゆるトロールに適用できるテンプレートもございます。
『Tribes and Tribulations』には2つのクリーチャー用テンプレートが掲載されております。丁度良い機会ですので、これまで発売されてきたテンプレートの内容を振り返ってみましょうか。
・『Cluster Eye Tribe(百眼族)』クリーチャー強化テンプレート
・『Night Parade(百鬼夜行)』アンデッド強化テンプレート
・『The Warband of Bayl of many eyes (多目のバイルの戦旅団)』ケイオスウォリアー強化テンプレート
・『Salzenmund: City of salt and silver(ザルツェンムント:塩と白銀の都市)』様々な小妖精テンプレート
・『Tribes and Tribulations(戦辛蛮苦)』クリーチャー強化テンプレート(再掲)、トロール用テンプレート
ざっとこんなもんです。
『Tribes and Tribulations』には他にも、オウガが操る大食魔法の追加データが掲載されております。大食魔法に関する詳しい内容は既に発売されている『Archives of the Empire volume.II(帝国公文書集 第弐巻)』を参照するようにと書かれていますが、『vol.II』には載っていない内容もございます。
例えば、「大食魔法の誤発動表」。オウガの魔術は、人間やエルフが扱う魔術とは異なる体系でございます故、誤発動の結果も異なってございます。
設定上、ウォーハンマー世界のオウガは学術的に呪文を理解して魔法を使っているものではありません。はらわたの底から湧き上がってくる感覚に従って魔法の力を操っているものでございます。そして呪文発動のルールにも、この設定が反映されているのです。
誤発動に関しても同様に、オウガの魔法は彼らの胃袋で生成されているという設定が活かされているのです。
どういうことか説明いたしましょう。オウガの呪術師が誤発動を起こすと、彼らの消化器官の中で有害な魔法的副産物が発生します。さほど深刻なものでなければ当人の健康を害するだけで済みますが、場合によっては胃から食道を逆流して吐き出され、あるいは、その、消化管を順繰りに通って排出され、暴走した魔力が周囲に被害を及ぼすものであります。
誤発動表の結果によっては、オウガが種族的に持つ飢えを体現した神”大アゴ様”の力の一端に触れてしまい、内側から食われてしまうということもあり得ます。
「大食魔法の誤発動表」には様々な記述がございますが、胃腸のトラブルを招く結果が数多く示されている、と申し上げておきましょう。
魔法が追加されたのはオウガだけではありません。グリーンスキン種族が使う“グァーグ!魔術”にも各種の追加データがございますぞ。
これまで『スターターセット(Warhammer Fantasy Roleplay Starter Set )』『Empire in Ruins(エンパイア荒廃す)』『Lustria(ラストリア)』で小出しに紹介されて参りましたが、今までの内容を再録し、さらに新たな呪文も加えてグァーグ!魔術を一挙に掲載。
設定上、人間やエルフの魔術師は魔法を操るためにウォーハンマー世界を吹き抜ける魔力の風から力を引き出していますが、オーク・ゴブリンの魔法は全く異なる所からエネルギーを得ているのです。この設定がルールにも反映されていました。
もちろん、誤発動につきましても他種族とは異なっており「グァーグ!魔術の誤発動表」が新たに設けられています。色とりどりの閃光や電弧そして爆発などなど、グァーグ!魔術の不安定さを示す描写が多々ございました。
欠点ばかりが追加されたわけではありません。敵に強烈なダメージを与える攻撃的な呪文も複数あり。モルク神(狡賢さの化身で究極の蛮性を兼ね備えた神、特にゴブリンが崇拝している)の御手を召喚して敵一体を軽くつまみ潰して戴くとか、ゴルク神(蛮性の権化で最高の狡賢さを併せ持つ神、特にオークが崇拝している)のおみ足を招来して敵軍を踏みつぶして戴くとか、そういったスケールの大きな新呪文が使えるようになったのです。
さらに、オーク&ゴブリン専用のマジックアイテムも複数掲載!
このように、『Tribes and Tribulations』が手元にあればプレイヤーの皆様に様々な好敵手をご用意出来るものと存じます。
GMの皆さん、準備は万端ですね?それではご一緒に!
膝を軽く曲げて腰を落とし、拳を天に向かって突き上げて、
「Waaaaaagh!(訳:イクサだぁぁぁぁぁァ!)」
Taverns of the Old World:ウォーハンマーRPG4版
気が付けば前回の記事からすっかり間が空いてしまいました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
この9ヶ月の間も、ウォーハンマーRPG第4版の追加資料が何冊か出版されております。
しかしながら、今回のお題でございます『Taverns of the Old World(オールド・ワールドの酒場)』より前に発売された3冊の資料にはいずれも内容を紹介し難い理由がありまして、更新が遅れてしまった次第にございます。今回まとめて紹介いたしましょう。
今年6月に『Ubersreik Adventures vol.III(ユーベルスライク冒険集 第三巻)』が発売されております。言うまでもないことですが、邦訳版が出版されている『ユーベルスライク冒険集(Ubersreik Adventures)』シリーズの3冊目。言うまでもないことですが、冒険の主な舞台はユーベルスライク公領。そして言うまでもないことですが、シナリオ集でございます。したがいまして、ネタバレにならないように伝えるのが些か難しうございます。
シナリオ本編の内容に触れずにお伝え出来る範囲でお話しするということでご容赦願いたく存じます。
ユーベルスライクは『ウォーハンマーRPG スターターセット』でも主要な舞台となっております。しかしながら、『vol.III』とスターターセットでは若干時代が異なってございます。スターターセットは帝国暦2512年のユーベルスライクを舞台としており、一方で『Ubersreik Adventures vol.III』では帝国暦2515年以降に起きた出来事を取り扱っているのです。
大した違いは無いと思っているそこのアナタ!今すぐ『ユーベルスライク・ガイドブック』をスターターセットの箱から取り出し、10ページに記載されているコラム「ところで、今って何年なのかな?」を読み直してくださいませ。この三年の間にユーベルスライクは大変な動乱に巻き込まれたのでございます。長編キャンペーンシナリオ『Enemy Within(内なる敵)』の冒険を生き延びた皆様ならご存じの通り、エンパイアもまた混乱の渦中にございました。
『Ubersreik Adventures vol.III』の冒頭では、帝国暦2509年から2516年にかけて起きた様々な事件がエンパイアの権力構造にどのような影響を与えたか、時系列に沿って説明されております。「様々な事件」の中には、これまで発表されてきた公式シナリオでの出来事もあれば、設定だけが存在しプレイヤーたちが関わることのないイベントもあります。『 vol.III』によって、これまでの公式シナリオの背景や前後関係が明かされているのです。
もちろん、アナタの自作シナリオでは『vol.III』で示された歴史とは違う展開であったり、あるいは『Enemy Within』キャンペーンが想定とは異なる結末を迎えたためアナタのグループでは本書の記載をそのまま使うことが出来ない、ということもございましょう。
心配ご無用「But that Didn't happen in My GAME!(だけどさ、ウチの卓ではこうならなかったんだよ!)」というコラムが設けられておりまして、公式の展開とは違う結果になった場合にシナリオをどのように調整したら良いか、言い訳の仕方と併せて紹介しております。
8月に発表された『Forest of Hate(憎悪の森)』は短編シナリオでございます。
シナリオの内容に直接関係の無い話題の中に大変興味深いものがございましたので、その話をいたしましょう。
『Forest of Hate』ではエルフの葬送儀式に関する設定が語られています。シナリオ本編とほとんど関わらない記述であるものの、これまで発売されてきた設定資料の情報と接ぎ合わせていくことで、ウォーハンマーRPGにおけるエルフ種族の死生観に関わる重要な設定が浮かび上がってくるのです。
例えば『Archives of the Empire vol.I(帝国公文書集 第一巻)』では、ローレローンの森の木々がエルフの女王を守っている理由について記載がありました。たった7単語の記述ですが、その設定を踏まえて『Forest of Hate』を読むことで、森エルフの価値観に対する理解が深まることでしょう。
9月に発表されたのは『Reikland Miscellana(ライクランド雑録集)』。その名前の通り、これまでPDFで販売されていた8つのミニ設定集を1冊にまとめたものでございます。
うち4つは邦訳版の出ている『ライクランドの建築(Buildings of the Reikland)』『ライクランド奇譚 ウォーハンマーRPG 単発シナリオ集(One Shots of the Reikland)』『ライクランドの記念碑(Monuments of the Reikland)』『比類なく有益なスラサーラの呪文集(Sullasara's Spells of Unrivalled Utility)』。
残りの4つはまだ邦訳が出ていない『Patrons of the Old World I&II(オールド・ワールドの後援者たち1&2)』『Shrines of Sigmar(シグマーの神殿)』『Blood and Bramble A Score and Four Spells for Witches and Hedgewitches(血と棘 魔女と似非魔術師のための二十と四の呪文集)』でございます。
すっかり長く話し込んでしまいました、当初お伝えする予定であった『Taverns of the Old World(オールド・ワールドの酒場)』の話を致しましょう。
題名からお察しの通り、オールド・ワールド各地の酒場や宿屋に関するデータ集です。
酒場の設備や価格帯、あるいは客層をランダムに決めるための表が多数掲載されておりますので、サイコロを振るだけでシナリオの舞台となる酒場や宿屋に様々な個性を付与することが出来ます。
その日泊まる宿の設定を決めるだけでなく、シナリオフックとしてもご活用頂けることでしょう。
汎用的なNPCデータも複数紹介されておりますので、様々なキャラクターをその場で用意しなければならなくなったときにご活用頂けます。例えば酒場の用心棒や宿の料理人、安酒場の亭主あるいは高級ホテルの支配人などをシナリオに登場させる際に、大いに役立つことでしょう。典型的なNPCデータでは物足りないという方は『Up in Arms(武器を執れ!)』に掲載されている雇い人テンプレートを用いてみてはいかがでしょう。元・船乗りの用心棒や、引退した冒険者で宿屋のオーナー、あるいは更生した盗賊で腕利きの料理人といったNPCが簡単に作れます。
残念なことに、『Taverns of the Old World』にはアナタのキャラクターを大幅に強化するアイテムや新たなキャリア、あるいは便利な新《異能》だのといったものは載っておりません。
しかしながら、シナリオの雰囲気を盛り上げる各種の小道具が載っておりますので、GMのアナタにはきっと役立つはずです。
〈世間話〉〈大酒飲み〉技能の利用価値がグッと高まりますし、エンパイアで消費される代表的な酒の銘柄もずらりと取り揃えております。
ヴュルドバット産のワインやマリエンブルグ・ペールエールのようなありきたりの飲料から、皇帝カール・フランツ陛下ご愛飲の蒸留酒“エヒト・ブランデンブルガー”まで、お値段も様々。
バグマンの特級酒を始めとする様々なドワーフ製醸造酒もございます。
スターターセットには「ワインの味などてんで判らぬくせにワイン通を気取っている」御仁が登場しておりますので、そのような輩に文字通り一杯食わせるときにも『Taverns of the Old World』のワインリストは活用できます。
来年にはウルサーン諸王国の設定も明かされるそうですので、アナタのキャラクターもオールド・ワールド各地を冒険することになることと存じます。
旅先で宿の目星を付ける際にこの一冊があれば快適に過ごせることでしょう。まあ、サイコロの出目にも依りますが。
Lustria:ウォーハンマーRPG4版
「陸地が見えた!ラストリアだぞぉぉぉォ!」
乗客の皆様、お待たせいたしました。本船は間もなく新大陸ラストリアの東端、スケギーの港に到着いたします。
ラストリア大陸に関する追加資料集『Lustria』の発売が予告されたのは昨年夏のことでした。表紙画像が公開されていたので間もなく予約開始かと思いましたが、ずいぶん待たされたものです。
その間様々な出来事がございました。ザルツェンムントを出航し鉤爪湾の荒波を越え、混沌騎士が率いる略奪団を退け、さらには幽霊船にも遭遇しましたっけ。
とはいえ、こうして皆様と共に無事に新大陸に、・・・かの有名な戯曲『荒野のスヴェン』の舞台であるラストリアに辿り着き、新たな冒険の世界へと足を踏み入れることが出来ることを喜ばしく存じます。
まあ、生きて帰れるかは別問題ですが。
さて、皆様ご存じの通りウォーハンマーRPGの主な舞台はオールド・ワールドと呼ばれています。
世界史の用語としての“Old World”は旧世界あるいは旧大陸と訳されておりまして、大雑把に言うと大航海時代以前にヨーロッパ人が認識していた世界を指すものでございます。そして、“New World”は南北アメリカ大陸を指す用語として使われてございます。
今回の追加資料集で扱いますラストリア大陸はエンパイアの探検家たちから“New World”と呼ばれており、地図上における位置は我々の世界における南米大陸に相当しています。ラストリア大陸には広大な熱帯雨林が広がり、肉食魚の生息する長大な大河や猛獣の棲息するサバンナがあり、各地に階段状のピラミッドが存在してございます。このように、地勢的にも我々の世界における南米大陸に酷似しているのであります。
オールド・ワールドの住民はラストリアを新世界と認識しておりますが、設定を知っているとこれはなかなか皮肉なものです。登場人物のほとんどが知らないことですが(もちろん、プレイヤーであるアナタは知ることが出来ます)ウォーハンマーRPGの世界で最古の文明種族はラストリアで誕生したリザードマンなのです。
したがって、「新世界」と呼ばれているラストリアは、エンパイアよりよほど古くからの歴史を持つ土地なのです。
申し添えておきますとリザードマンは今なおラストリアを支配している種族なのです(もちろん、アナタのキャラクターも思い知ることになるでしょう)。
新作サプリメント『Lustria』は、冒険の舞台となる地域の単なるガイドブックに留まるものではございません。ウォーハンマーRPG世界の成り立ちに関わる設定が示されているのであります。
すっかり前置きが長くなってしまいました。『Lustria』の副題は「A Mysterious New World of Grim and Perilous Adventure」、神秘に満ちた新たな冒険の舞台がどのようなものか見て参りましょう。
第1章の前半は、まだまだ“おとなしい”内容です。山脈や密林、大河や湾、平原に沼沢地など尋常な地形が描かれた地図、地勢や気候に関する一般的な記事といったものが数ページ続きます。ここではオールド・ワールドの住民が持っているラストリアに対する知識の範囲が示されております。
読み物を挟んだ後半から話の雲行きが一気に変わります。
登場人物が知ることのない、ウォーハンマー世界の根幹に関わる重要情報が示されます。
ウォーゲーム版のウォーハンマーに慣れ親しんでいる皆様には周知の話でございましょうが、WFRP第4版では何度か曖昧に示されるに留まっていたため、以下に示すSF的な設定には戸惑う方も出るものと存じます。
『Lustria』で明かされる設定とはすなわち「ウォーハンマーRPGの舞台となる世界は高度な星間文明を持つ古代種族がテラフォーミングにより作り上げた実験場だったが、恒星間移動に使うワープホールが制御不能になったため遺棄された惑星である。」という内容でございます。この設定が詳しく語られたのはWFRP4版では『Winds of Magic(魔力の風)』以来ですかね。
追加サプリのお約束である年表も第1章に掲載。何と帝国紀元前一万五千年(千五百年ではなく!)から始まります。古代種族が惑星の公転軌道を変え、超大陸を割って現在の大陸と海を作り、ウォーハンマー世界に住まう様々な種族を創造し・・・と創世神話のように壮大な規模の話から始まり、混沌の襲来による文明の崩壊や鼠人間スケイブンとの戦いあるいはダークエルフによる略奪など歴史の転換点となった戦いを差し挟みつつ、現代に至るまでのラストリア大陸の歴史を描き出しています。
第1章で紹介している地勢が尋常なものだったのとは対照的に、第2章では強大な魔力を秘めた多種多様な土地が掲載されています。ルールブック第10章「荘厳なるライクランド」あるいはシナリオフック集『ライクランドに冒険あり!』でも魔法的な力を秘めた土地は幾つか紹介されておりましたが、どのような理由でその土地に魔力が集まっているのかに関する背景、あるいは種明かし、は避けられていました。
しかし、『Lustria』では魔法の力を持つ土地をもはや過度に謎めいたものとして扱ってはいません。キャラクターたちが知り得ない背景まで含めて設定やデータが掲載されています。
以前出版された『Winds of Magic』で魔法についてルール上の扱いが詳細に示されたためでしょう。
第2章で紹介されている名所旧跡は18件。階段ピラミッドや巨大な地上絵、さらには我々の世界の伝説にある「命の泉」に相当する土地も紹介されています。
第3章は入植地スケギー、帝国歴9世紀に北方人ロステリクソンによって築かれた町でございます。エンパイアの都市と比べるのも烏滸がましい小さな居留地ですが、ラストリア探検において重要な拠点となる港町です。
『Salzenmund(ザルツェンムント)』『Sea of Claws(鉤爪湾)』をお読みの方ならご存じの通り、北方人は優れた船乗りとして世界中で知られており、エンパイア人とは大きく異なる文化を持っています。
えーと、つまりその、スケギーにおいてはですね、エンパイアでは禁教とされている暗黒神が公然と信仰されており、信仰と文化の両面において支配的な地位を占めているのです。
統治者アデラ王、ちなみにスケギーでは統治者の称号に性別による違いをもうけてございませんので女性でも称号は「王」でございます、そのアデラ王ご自身も北方の神から祝福を賜っています。つまりルール的にはミュータントだってことです。
スケギーの政治体制や経済、町の地図や主要施設がこの章で示されております。ルールブックやスターターセットで紹介されてきたライクランドの街とは驚くほど異なってございます。異国の風情を是非ご堪能ください。
第3章の後半ではスケギー周辺にある小規模な集落が紹介されています。
スケギー以外の港を探検の拠点にしたいなら止めやしませんが、狂信的な修道院とか幽霊が取り憑いている廃村だとかに比べれば、スケギーはまだマシな方です。
第4章にはスケイブンによって滅ぼされた都市の詳細が描かれています。スケギーから南西に数百マイル、密林の道なき道を踏み越えた先にある神殿都市キュエ=ツァの廃墟でございます。
スケイブンはそれぞれ得意分野を持つ氏族に分かれており、中でも特に有力な四大氏族がございます。スケイブンについては『The Horned Rat COMPANION(角在りし鼠 冒険の手引)』にて詳しく説明されていますので詳細な説明はそちらを読んでくださいませ。
鼠人間スケイブンの歴史においてラストリアは大きな位置を占めております。四大氏族の一角を占める大氏族、疫病の申し子たるペスティレン族はラストリア大陸にて誕生したのです。したがいまして、ペスティレン族の疫病教団にとってラストリアは重要な聖地なのです。
ラストリア東岸には、スケイブンが崇める神“角在りし鼠”に捧げる祭壇と玉座の間がございます。見た目に恐ろしいだけではなく特殊ルールが設定されており、単に近づいただけでもアナタのキャラクターを危険に曝すものとなっております。
次の章もまた恐怖に満ちた内容となります。第5章はラストリア南東に広がる吸血鬼海岸、その名前の通り吸血鬼が住む海岸でございます。この地の支配者の名はルーサー・ハーコン卿。PCゲーム『Total War Warhammer』シリーズに登場する人物ですので、名前をご存じの方もいらっしゃることでしょう。
ルーサー・ハーコン卿はスケギーの成立とほぼ同時期にラストリアに上陸した吸血鬼で自称吸血鬼海岸の海賊王、最高大提督、あるいはラストリア皇帝を名乗ってございます。どうも誇大妄想の傾向が見られます。
記憶の欠落が指摘されているなど、他にも色々と精神的に不安定なところがあるご様子。
自称ラストリア皇帝の居城と支配する都市、領土、腹心についてこの章で描かれています。
第6章はラストリア大陸の南端にあるエルフの要塞「黄昏の城塞」の紹介記事。
城の歴史に続いて概要が示されています。ハイ・エルフ水軍の軍港を抱える島だけではなく、周囲には墓地や薬草園など特定の役割に特化した島々がございます。中には交易をおこなっている港もあるようでございますぞ。
ラストリア周辺のハイ・エルフ居留地に関する記事もあります。エルフの水軍を指揮する将軍や城塞そのものにも隠された設定があり、シナリオフックとして利用できそうです。
地域紹介だけではなく、様々な話題が4章から6章にちりばめられてございます。
たとえば数々のNPCデータ、スケイブンを指揮する疫病教団大僧正やルーサー・ハーコンとその腹心、あるいは彼らの同盟者も載っています。
もちろんエルフ水軍の将軍にもデータが設定されており、彼らが使う軍船の武装に関する追加データも『Sea of Claws』と同じ書式で掲載されています。
さらにはダークエルフ艦隊を指揮する海魔卿ロクヒィル・フェルハートと部下の海賊たちの武装も紹介されています。
第6章には追加呪文もあり。魔法で濃霧を発生させて奇襲を行ったり拠点の場所を隠したりというのは、いかにもエルフやダークエルフが好みそうな戦術です。
第7章ではいよいよリザードマンの都市が紹介されます。ラストリア大陸各地に点在する神殿都市について、統治者や都市の概要に関する記事が続きます。神殿都市の一つを例に取り、都市の構造や施設そして防衛力について紹介するコーナーもあり。
エンパイアの都市と比べると野蛮に見えますが侮ってはいけません。エンパイアに魔法の使い方を伝えたのはエルフたちですが、エルフに魔法を教えたのはリザードマンです。上古の時代にエルフに魔法を手ほどきしたまさにその魔術師が、今なおラストリアの神殿都市を治めているのです。せいぜい百年かそこら魔術をかじった程度の連中では想像もつかない強大な魔力がラストリアには満ちており、神殿都市の統治者はその力を意のままに操ることが出来るのです。
リザードマンは周囲の自然環境を操作する魔術に通じており、熱帯雨林の肉食植物の多くが温血動物のみを攻撃する性質を持っている、つまり変温動物であるリザードマンは安全に森を通過できる(ルール上もそうなっています!)のも、魔法的な影響によることが『Lustria』で示唆されています。
したがって、リザードマンの神殿都市を敵に回すことは、ラストリアの大地そのものを敵に回すことでもあるわけです。
リザードマン種族の詳細に関しては第8章「‘旧き者’の従者たち」に記されてございます。
古代種族‘旧き者’についての記事から始まり、テラフォーミング計画の要となるべく創造された種族“スラン”に関する記事がそれに続きます。
リザードマンの支配階級であるスランは玉座に腰かけた巨大ガエルのごとき外見で、ウォーハンマー世界で最も強大な魔術師です。どれくらいの力を持つかというと、‘旧き者’の命令に従い惑星の公転軌道を変え、大陸と海を分かち、陸地に山脈や湖を築いたのは彼らだという話ですから、まあ設定上は手に負えない強さでございます。
ゲーム上のデータとして実際に強いのかも知りたいですよね!
『Lustria』にはスランのクリーチャーデータが掲載されています。
そうです、データが載っているのです。しかも複数。スランの中では最も力の弱い者でさえ、魔法や知的活動に関する技能の値は100を超えています。最強レベルの者となると、複数の能力値が(技能ではなく能力値が!)100を超えています。
さらに種族特有の特殊ルールを幾つも持っており、特殊ルールだけで見開きページを丸ごと費やすほどです。
それだけではありません、ウォーハンマーRPG第2版の頃は強力すぎるためデータが存在していなかった魔法体系「至高魔術」のリストが『Lustria』に掲載されているのです。
ほとんどの場合、至高魔術を使うことが出来るのはNPCに限られることでしょう。しかし理屈の上ではPCもリストにある呪文を修得することは可能です。
もちろん、ルールの制約上エルフの魔術師に限られますが。
第8章の中盤以降は、スランに仕える様々なリザードマン種族の紹介記事です。鰐に似た外見の戦士階級種族であるザウルス。二足歩行するイモリのような姿のスキンクは労働者階級。スキンクはリザードマンの中では最も多様性に富んでおり、中には神官や偵察兵になる者もいます。ザウルスよりも巨大な体格を誇るクロキシゴールは見た目の通りの怪力で、神殿都市の建材を軽々と運んでいきます。有翼の蛇のごとき姿をしたコアトルはリザードマン社会階層の外に位置づけられていますが、‘旧き者’の御使いとして神聖視されているようです。
先に述べた通り、スキンクは他のリザードマンよりも個性に幅があります。戦士としての役割に特化したザウルスや、怪力を活かした単純労働のみを担うクロキシゴールとは違い、スキンクはリザードマンの社会を維持するための様々な役割を果たしています。
神官や書記、職人、農業労働者など様々なスキンクNPCを簡単に創造するためのテンプレートが第8章に載っています。
プレイヤーキャラクターとしてスキンクのキャラクターを使うための情報も掲載されています。
そうです、アナタはリザードマンをキャラクターに選ぶことだってできるのです。
ルールブックに載っている他の種族とはあまりにも異質な存在であるため、リザードマンのキャラクターを運用する際に注意すべき事項についてもこの章にあり。身体機能から文化、信仰や社会構造に関する設定も詳細に述べられています。
オールド・ワールドの住人はラストリアのリザードマンを野蛮で攻撃的な種族と見なす傾向があります。リザードマンの方でもオールド・ワールド人を野蛮な敵対種族と認識しておりますので、まあおあいこですね。
第9章はラストリアの生物について。追加モンスターデータ集『Imperial Zoo(帝立動物園)』では、オールド・ワールドの南方に生息する恐竜たちが紹介されておりました。
期待に違わず、『Lustria』には様々な恐竜のモンスターデータが載っています。再掲されているカルノサウルスやステガドンに加え、全身を分厚い鱗で覆っている鎧竜や空を滑空する翼竜、水生の魚竜も新たに掲載。
しかし、ラストリアで恐ろしいのは巨大な怪物ばかりとは限りません。毒性の刃を持つ植物や犠牲者を待ち伏せする肉食性の植物、病原菌を媒介する昆虫や寄生虫などなど。
これらに比べれば、いくさ群れを組んだサベッジオークの方がまだ与し易い相手かもしれません。
ラストリアの熱帯雨林は大小さまざまな危険を取りそろえてアナタのお越しをお待ちしております。
第10章ではラストリアでの冒険に関する様々な記事を紹介。
冒険のきっかけや動機の例、複数の追加キャリア、開拓地の運営ルール、神殿都市の探索表もあれば神殿都市の略奪表もあり。ラストリアにおける新たな冒険外活動のルールもございます。
第11章にはラストリアを舞台にしたシナリオが掲載されています。詳細なデータは省いているものの、新大陸における冒険の雛型として使用できるものが幾つか紹介されています。
ずいぶん長く話し込んでしまいましたが他にも内容は盛り沢山。オークのまじない師が用いる呪文、リザードマンの扱う武器や‘旧き者’が遺した兵器、追加のクリーチャー特徴、新たな疫病ルール、不死鳥王の三種の神器に関する設定などなど、残酷で険難な世界の冒険に新たなメニューが多数追加されました。
爽快な経験をお望みでしたら、滑空飛行装置のデータも載っております。
ぜひお試しください。スリル満点ですよ。
Archives of the Empire volume Ⅲ:ウォーハンマーRPG4版
2023年最初の記事は『Archives of the Empire volume Ⅲ(帝国公文書集 第三巻)』でございます。
過去にCubicle7エンターテイメントのブログで予告されていた出版予定によりますと『vol.Ⅲ』はPDFのみで販売される小編との話でございました。しかしながらその後公開された記事を読みますに、どうやら書籍としても出版される方針に変わったご様子。
『vol.Ⅲ』の総ページ数を数えてみましたところ、前作『vol.Ⅱ』と全く同じ95ページ。なかなかの量でございます。
『Archives of the Empire』シリーズでは毎回イサベラ・フォン・ホルスヴィヒ=シュリスタイン殿下の手紙が掲載されております。
過去に手前がこのブログで書いた内容の繰り返しになりますが、イサベラ様は皇帝カール・フランツⅠ世陛下の妹を僭称して療養所に幽閉された身元不明の(おそらくは貴族の血統に連なる)女性です。
『vol.Ⅱ』にNPCとしての詳細なデータが掲載されています。公式シナリオの記述に依りますと、どうやら本当に皇帝陛下の妹君であるらしいことが示唆されてございます。
その素性はどうあれ、穏やかで思いやりがあり、教養と洞察力を備えたご婦人でございます。一方で、相応の敬意を持って接しなければ大変に激高なさる御方でございますゆえ、面会の際はくれぐれもご注意ください。一応付け加えておきますと、殿下は「恐怖」「狂乱」のクリーチャー特徴をお持ちです。
言い間違いではございません。殿下がお持ちのクリーチャー特徴は「恐れ」ではなく「恐怖」です。無用な刺激を与えぬように願います、狂乱中は手が付けられませんので。
話題が逸れ申した。『Archives of the Empire』シリーズで冒頭に掲げられるイサベラ様の手紙には、毎回思い出話や身の回りの出来事が記されておりまして、その内容が『Archives of the Empire』各巻に記されているコンテンツの予告編となっているのでございます。
『Archives of the Empire volume Ⅲ』の内容はこれまでの2冊より雑多なものです。
最初の章はキャラクターたちによる起業とビジネス運営の為のルール。第2版でも『オールドワールドの武器庫』にキャラクターたちがビジネスを始めるための追加ルールがありました。しかし、2版当時はちょっとした収入を得るものでしかなく、選んだ職業による追加の効果は特に示されていませんでした。
第4版ではより細かく設定されておりまして、キャラクターと同様にビジネスにも四段階の成長ルールがございます。キャラクター個人がキャリアを成長させるためにギルド許可証や商売道具を揃える必要があるのと同様、事業を拡張するためには資金や設備、そして使用人を集める必要がございます。このように、キャラクターの成長とビジネスの成長は似通ったシステムで運用出来るようになっているのです。
掲載されているビジネスは10種類。商店や工房、宿屋といったものから寺院や貴族の領地管理、騎士団や犯罪団の運営まで様々な選択肢がございます。
そして、ここからが肝心な話。ビジネスが成長する毎にキャラクターの地位も高くなります。さらに、各業種それぞれに特殊ルールが設定されており、例えば商店の経営者であれば商品を売却するときの判定が容易になります。あるいは工房を経営しているのであれば対応する技能の判定にボーナスを得ます。事業を育てて使用人を増やし、あるいは経営の規模を拡大することで判定をより容易にすることも出来ます。
独自の追加ルールを持つ事業もございます。犯罪団を率いるのであれば、ギャング同士の縄張り争いを行うことができます。襲撃に備えた隠れ家を用意し、用心棒を雇い、財産を隠匿して犯罪帝国を拡張することが出来るのです。
成り上がりを目指すそこのアナタには貴族の荘園管理のお仕事をお勧めいたします。庭師や別荘の管理人から始まり、やがては地方長官や総督にのし上がり、さらに上を目指して有力貴族と肩を並べることだって出来ます。
ウォーハンマー世界で起業のご予定がないそこのアナタにも有用な記事がございます。信仰する神格の寺院内でのみ聖職者が使用できる特殊な異能や騎士団の構成員が追加で習得できる異能が紹介されています。
NPCが経営する商店や企業の設定もこの章に掲載。
第二章は鎧の構造に関する記事で、鎧に関する追加ルールが幾つか。
追加の鎧も載っております。板金鎧の下に着込む布製の衣服や、布や革に金属片を留めて作ったブリガンディン・アーマーといったもの。
新たに登場した兜にもご注目ください。これまでのような視界を遮るものだけではなく、顔を覆う面頬を上げることが出来る洗練された仕組みの兜もございます。この種の兜であれば、面頬を上げている場合に限り〈知覚〉テストへのペナルティを軽減できるのです。
鎧に関する短い章が終わると、第三章からしばらくオールド・ワールドにおける宗教と信仰に関する内容が続きます。
シグマーやウルリックのようなエンパイアの主要な神格とその教団につきましては、既にルールブック第七章に記載されてございます。
今回『vol.Ⅲ』にて語られますのは、エンパイアの社会で主流にはなっていない諸神格の話題でございます。中でも抜きん出た三柱の神々については、教団の指導者、聖地、主要な祭日と聖典、聖印などの詳細な説明があります。
まずは商業神ハントリッヒ。ティリアの神話に依ると、かつて人間だった頃に軍神ミュルミディアと共に各地を旅した商人だったと伝えられています。また別の伝説に依れば、海神マナンの息子として生まれ、世界中を旅して回ったとのこと。あるいは盗賊の神ラナルドの従兄弟であるとする伝承もございます。詐術を用いて不死を得たご親戚とは対照的に、ハントリッヒ様は卓越した交渉術を以て神の地位に昇ったのだそうで。
ラナルド様のご親族につきましてはオールド・ワールドの神話でも判然としない所が多々ございまして、戦神ウルリックの従兄弟であるという話もございます。お二人は世界中を冒険し、時として仲違いをしつつも様々な試練に立ち向かっていったと聞いております。
北方人の戦士と南方人の盗賊という二人組の冒険譚というのは、どこかで聞いた気がいたしますね。確か鼠人の軍勢と戦う話もあったはずです。今ちょっと作者の名前を失念しておりますが、…そう確かフリッツ某とかそのような名前でした。
話が逸れてしまいました。ハントリッヒ教団はエンパイアにおける構成員は少ないものの、既知世界最大の貿易港マリエンブルグにおきましては強い影響力を持ってございます。当地におきましてはヘンドリクと呼ばれており、銀行制度を築いた伝説上の偉人と信じられております。
太陽神ゾルカンの記事もございます。ゾルカン信仰はエンパイアでは然したる影響力を持っていないものの、ティリア半島のレーマ共和国では支配的な地位を占めています。これまでごくわずかに言及されているのみでしたが、えーと確か短編集『吸血鬼ジュヌヴィエーヴ』の一編に登場していたはずです、今回『Archives of the Empire volume Ⅲ』にて詳細な設定と公式なルールが紹介されています。
古代ティリアの頃から信仰されてきた太陽神であり、激しい憤怒に燃え立つ復讐の神でもございます。秩序の神であり、混沌の暗黒神とは激しく対立しています。その一方でオールド・ワールドにおける影響力は減じ続けております。
その理由と致しましてはやはり、シグマーの魔狩人よりも狂信的と言われる厳格さにあるのでしょう。感情を揺るがす原因となる歌や音楽そして踊り、さらに冗談を厳しく禁止しており「正義の怒りを除き、あらゆる感情を抑制せよ」という戒律がございますので。
ルール上でも厳しい制限が課せられているものの、ゾルカンの《奇跡》は強力かつ攻撃的なもので、ゲーム的な制約に見合ったものでございます。
自由な空気と様々な娯楽で知られる文化の都レーマが、これほど厳格な姿勢を持つ教団の中心地となっているのは意外なことかと思われます。ティリアの社会は常に独裁と反乱の間を揺れ動いており、強力な秩序の神を社会の柱として据えることが求められていた、というのが背景の一つでございましょう。
手前考えますにですな、ウォーハンマー世界の歴史は我々の暮らす世界と鏡写しになっているわけです。するとゾルカン教団の厳格な姿勢はサヴォナローラのフィレンツェ神権政治時代を踏まえての設定ではないかと。いずれも美術品や奢侈品を火に投じて焼き尽くす傾向がございますので。
そういえば、オールド・ワールドで最も危険な禁書『天空の予言の書』の著者ネクロドモを火炙りにしたのもティリアのゾルカン教団であったと手前は聞き及んでおります。
地母神リアの記事もございます。都市部においては時代遅れで野蛮と見なされているものの、女神リアへの信仰は農村部で今なお強い影響力を持ってございます。
第五章ではリア教団の組織構造、神話、主要な祭日や聖地、そして他教団との関係が紹介されております。
商業神ハントリッヒ、復讐の神ゾルカン、地母神リアそれぞれの司祭が追加キャリアとして紹介されてございまして、もちろん追加の《奇跡》も掲載されています。
下位神や地域神、祖先崇拝などの記述もあり。先史時代から連綿と続く土着の信仰に関する追加ルールもございます。『Archives of the Empire volume Ⅲ』には遙か古代から続く太古教の司祭を作るための追加ルールも載っているのです。太古の信仰が残るアルビオン島の記事も少々。
古代から続く民間信仰の章があるということで予想が付いているかもしれません、似非魔術師のための追加ルールもございます。都市における似非魔術師の生活についての記事もあり。当然ながら追加呪文も各種掲載。
似非魔術師を強化するものとしては他にも、動物の使い魔に関する記事がございます。以前紹介した追加サプリ『Winds of Magic(魔力の風)』にも使い魔に関する各種ルールはございました。しかし、あちらは魔法大学校に所属する公認魔術師を主な対象としております。
魔法大学校の魔術師たちは、使い魔としてホムンクルスを作り上げることを好み、使い魔として動物を選ぶのを時代遅れと見なすものでございます。
一方で、非公認の魔術師たちは野生動物を使い魔にすることを好む、この話題は『Winds of Magic』で既に語られているとおり。
動物を使い魔にする方法が、『vol.Ⅲ』で明かされました。動物の使い魔専用のキャリアと新異能、素型となる様々な野生動物の追加データもあり。
猫や烏の他にも穴熊のデータがございます。『vol.Ⅰ』で追加された新キャリア、ハーフリング文化の誇りである「Badger Rider(穴熊騎兵)」が騎乗する大柄な穴熊に関する選択ルールもあり。
似非魔術師、魔女、公認魔術師それぞれの使い魔に対する態度の違いを説明する記事もございます。
第七章は、帝都アルトドルフの住民に関する選択ルール。出身地方によって獲得できる初期異能や技能に差を設ける選択ルールはこれまでのサプリにもありました。アルトドルフは人口百万人の大都市でございますゆえ、街の地区ごとに初期技能の選択肢が設定されているのです。アルトドルフの北側にある妖術地区、つまり魔法大学校があるあたり、の住民は初期技能で〈知識(魔法)〉を選択することだってできるのです。
強化されるのは非公認魔術師だけではございません。第八章では〈魔風交信〉技能の新たな使い方について掲載されています。帝立魔法大学校で教えている八つの魔法体系それぞれに対応する〈魔風交信〉の追加の効果が示されているのです。
最後の章ではNPC冒険者のパーティーがデータ化されています。老騎士アダルベルト卿とその御一行。何とも・・・まとまりの無い連中と申しますか、言ってしまえば有象無象でございまして、えーと、つまりその、司祭から道化まで非常に幅広い人材を引き連れてらっしゃいます。
ユングフロイト家に忠誠を誓う騎士であったというアダルベルト卿の経歴、『ウォーハンマーRPG スターターセット』で示されているユーベルスライクの現状、『Archives of the Empire volume Ⅲ』冒頭に掲載されたイサベラ様のお手紙の内容を考慮しますに、何とも嫌な予感がいたします。