無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Taverns of the Old World:ウォーハンマーRPG4版

気が付けば前回の記事からすっかり間が空いてしまいました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

この9ヶ月の間も、ウォーハンマーRPG第4版の追加資料が何冊か出版されております。

しかしながら、今回のお題でございます『Taverns of the Old World(オールド・ワールドの酒場)』より前に発売された3冊の資料にはいずれも内容を紹介し難い理由がありまして、更新が遅れてしまった次第にございます。今回まとめて紹介いたしましょう。

今年6月に『Ubersreik Adventures vol.III(ユーベルスライク冒険集 第三巻)』が発売されております。言うまでもないことですが、邦訳版が出版されている『ユーベルスライク冒険集(Ubersreik Adventures)』シリーズの3冊目。言うまでもないことですが、冒険の主な舞台はユーベルスライク公領。そして言うまでもないことですが、シナリオ集でございます。したがいまして、ネタバレにならないように伝えるのが些か難しうございます。

シナリオ本編の内容に触れずにお伝え出来る範囲でお話しするということでご容赦願いたく存じます。

ユーベルスライクは『ウォーハンマーRPG スターターセット』でも主要な舞台となっております。しかしながら、『vol.III』とスターターセットでは若干時代が異なってございます。スターターセットは帝国暦2512年のユーベルスライクを舞台としており、一方で『Ubersreik Adventures vol.III』では帝国暦2515年以降に起きた出来事を取り扱っているのです。

大した違いは無いと思っているそこのアナタ!今すぐ『ユーベルスライク・ガイドブック』をスターターセットの箱から取り出し、10ページに記載されているコラム「ところで、今って何年なのかな?」を読み直してくださいませ。この三年の間にユーベルスライクは大変な動乱に巻き込まれたのでございます。長編キャンペーンシナリオ『Enemy Within(内なる敵)』の冒険を生き延びた皆様ならご存じの通り、エンパイアもまた混乱の渦中にございました。

『Ubersreik Adventures vol.III』の冒頭では、帝国暦2509年から2516年にかけて起きた様々な事件がエンパイアの権力構造にどのような影響を与えたか、時系列に沿って説明されております。「様々な事件」の中には、これまで発表されてきた公式シナリオでの出来事もあれば、設定だけが存在しプレイヤーたちが関わることのないイベントもあります。『 vol.III』によって、これまでの公式シナリオの背景や前後関係が明かされているのです。

もちろん、アナタの自作シナリオでは『vol.III』で示された歴史とは違う展開であったり、あるいは『Enemy Within』キャンペーンが想定とは異なる結末を迎えたためアナタのグループでは本書の記載をそのまま使うことが出来ない、ということもございましょう。

心配ご無用「But that Didn't happen in My GAME!(だけどさ、ウチの卓ではこうならなかったんだよ!)」というコラムが設けられておりまして、公式の展開とは違う結果になった場合にシナリオをどのように調整したら良いか、言い訳の仕方と併せて紹介しております。

8月に発表された『Forest of Hate(憎悪の森)』は短編シナリオでございます。

シナリオの内容に直接関係の無い話題の中に大変興味深いものがございましたので、その話をいたしましょう。

『Forest of Hate』ではエルフの葬送儀式に関する設定が語られています。シナリオ本編とほとんど関わらない記述であるものの、これまで発売されてきた設定資料の情報と接ぎ合わせていくことで、ウォーハンマーRPGにおけるエルフ種族の死生観に関わる重要な設定が浮かび上がってくるのです。

例えば『Archives of the Empire vol.I(帝国公文書集 第一巻)』では、ローレローンの森の木々がエルフの女王を守っている理由について記載がありました。たった7単語の記述ですが、その設定を踏まえて『Forest of Hate』を読むことで、森エルフの価値観に対する理解が深まることでしょう。

9月に発表されたのは『Reikland Miscellana(ライクランド雑録集)』。その名前の通り、これまでPDFで販売されていた8つのミニ設定集を1冊にまとめたものでございます。
うち4つは邦訳版の出ている『ライクランドの建築(Buildings of the Reikland)』『ライクランド奇譚 ウォーハンマーRPG 単発シナリオ集(One Shots of the Reikland)』『ライクランドの記念碑(Monuments of the Reikland)』『比類なく有益なスラサーラの呪文集(Sullasara's Spells of Unrivalled Utility)』。
残りの4つはまだ邦訳が出ていない『Patrons of the Old World I&II(オールド・ワールドの後援者たち1&2)』『Shrines of Sigmar(シグマーの神殿)』『Blood and Bramble A Score and Four Spells for Witches and Hedgewitches(血と棘 魔女と似非魔術師のための二十と四の呪文集)』でございます。

すっかり長く話し込んでしまいました、当初お伝えする予定であった『Taverns of the Old World(オールド・ワールドの酒場)』の話を致しましょう。

題名からお察しの通り、オールド・ワールド各地の酒場や宿屋に関するデータ集です。
酒場の設備や価格帯、あるいは客層をランダムに決めるための表が多数掲載されておりますので、サイコロを振るだけでシナリオの舞台となる酒場や宿屋に様々な個性を付与することが出来ます。
その日泊まる宿の設定を決めるだけでなく、シナリオフックとしてもご活用頂けることでしょう。

汎用的なNPCデータも複数紹介されておりますので、様々なキャラクターをその場で用意しなければならなくなったときにご活用頂けます。例えば酒場の用心棒や宿の料理人、安酒場の亭主あるいは高級ホテルの支配人などをシナリオに登場させる際に、大いに役立つことでしょう。典型的なNPCデータでは物足りないという方は『Up in Arms(武器を執れ!)』に掲載されている雇い人テンプレートを用いてみてはいかがでしょう。元・船乗りの用心棒や、引退した冒険者で宿屋のオーナー、あるいは更生した盗賊で腕利きの料理人といったNPCが簡単に作れます。

残念なことに、『Taverns of the Old World』にはアナタのキャラクターを大幅に強化するアイテムや新たなキャリア、あるいは便利な新《異能》だのといったものは載っておりません。
しかしながら、シナリオの雰囲気を盛り上げる各種の小道具が載っておりますので、GMのアナタにはきっと役立つはずです。

〈世間話〉〈大酒飲み〉技能の利用価値がグッと高まりますし、エンパイアで消費される代表的な酒の銘柄もずらりと取り揃えております。

ヴュルドバット産のワインマリエンブルグ・ペールエールのようなありきたりの飲料から、皇帝カール・フランツ陛下ご愛飲の蒸留酒“エヒト・ブランデンブルガー”まで、お値段も様々。
バグマンの特級酒を始めとする様々なドワーフ醸造酒もございます。

スターターセットには「ワインの味などてんで判らぬくせにワイン通を気取っている」御仁が登場しておりますので、そのような輩に文字通り一杯食わせるときにも『Taverns of the Old World』のワインリストは活用できます。

来年にはウルサーン諸王国の設定も明かされるそうですので、アナタのキャラクターもオールド・ワールド各地を冒険することになることと存じます。
旅先で宿の目星を付ける際にこの一冊があれば快適に過ごせることでしょう。まあ、サイコロの出目にも依りますが。