無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Tribes and Tribulations:ウォーハンマーRPG第4版

Waaagh!(訳:イクサだぁぁァ!)
失礼、興奮して叫んでしまいました。
2024年最初のウォーハンマーRPG第4版追加資料集は『Tribes and Tribulations(戦辛蛮苦)』でございます。

表紙絵を見れば本書のテーマは一目瞭然、オークにゴブリンそしてトロールがぎっしり詰まっております。ウォーハンマー世界で悪役を担っているオーク&ゴブリン、すなわちグリーンスキンと総称される種族の背景設定とデータを満載した資料なのでございます。

ちなみに英語の定型表現で「Trials and Tribulations」と申しますと、試練や困難に次々と遭遇する様子を表すのだそうで。日本語に訳しますとそうですね・・・艱難辛苦とか千辛万苦とか、まあ大体そのような意味合いでございましょうか。

さて、1月19日にウォーハンマーRPGの界隈に新たなニュースが届きました。丁度この日に戦略ゲーム版ウォーハンマーの新作『Warhammer: The Old World(ウォーハンマー:ジ・オールドワールド)』が本格始動しておりまして、何と!このタイミングに合わせてキュービクル7エンターテイメントは『ジ・オールドワールド』を題材にした新作RPGを開発中と発表したのであります。

『ジ・オールドワールド』の舞台は帝国暦2270年代ですから、ウォーハンマーRPG4版の時代のざっと250年前、エンパイア三皇帝時代の頃でございます。これはこれで楽しみではあるのですが、そうするとWFRP4版はどうなる?不安になりますよね。手前は不安になり申した。

インスタグラムで公開された記事の続きを読んで参りますと、『ジ・オールドワールド』RPGウォーハンマーRPGは併存して展開していくとの記述がございまして、「WFRPの製品もこの先数年分の企画が進行中、どんどん出版していくから安心してね!(意訳)」ということですので、まずは一安心といったところです。

WFRP4版で進行中の企画は何があったか思い返してみますに、昨年夏にキュービクル7から発表された出版予定に依りますれば、えーと確か「ドワーフに関する設定資料集」「エルフとウルサーンの諸王国」「貿易都市マリエンブルグ」「混沌の暗黒神に関する資料」、この4つが2024年に展開されると伺っております。

他にも、盗賊や野外活動を行うキャラクターのためのデータ集を作成中という話がだいぶ前にありました。

オーク&ゴブリンに関するデータ集については、これまで全く言及が無かったので完全に不意を付かれました。うれしい驚きです。

話が逸れてしまいました、『Tribes and Tribulations』の話を致しましょう。

ウォーハンマーRPGにおけるオークとゴブリンはメイン悪役の一角を占めてございまして、戦いと破壊と略奪を何よりも好む種族と設定されております。

特にオークの好戦性は凄まじいもので、目の前にいる全てのものを、それこそ生物/無生物を問わずあらゆる物をギタギタのボコボコに叩きのめしたいという衝動に駆られており、敵が居なくなると仲間内で争い始める習性を持つという、つまり何と言うかその・・・、エンジョイ&エキサイティングな連中なのであります。

何故これほど好戦的な気性を持っているのかという謎については、ウォーハンマー40Kの方で理由が示唆されてございます。尤も、エンパイアに暮らす善良な臣民の皆様が40K世界の秘密を知ることはありませんので、知らなくても全く差し支えございません。

オークやゴブリンは(とりわけオークは)行動原理が単純なためGMにとって使いやすい悪役である一方、そのシンプルさ故にキャラクターとしての差異化が難しいという欠点があります。

個性的なオークやゴブリンをシナリオに登場させたいそこのGMのアナタ!いますぐ『Tribes and Tribulations』を手に取ってください。

各種「クリーチャー強化テンプレート」をオークとゴブリン及びその亜種に適用することでどのようなキャラクターが作れるか、いくつもの例が示されています。

いかにも、手前たった今オークとゴブリンの亜種と申しました。
これまで出版された追加資料でデータが紹介されている亜種、たとえば森林地帯に棲息するフォレストゴブリン、地底奥深くに潜むナイトゴブリン、金属の使用を拒み先祖帰りを起こしたサベッジオークなどに加えて、4版では初登場となる種族も掲載されています。

東方の荒野を駆ける騎馬民族ホブゴブリン、悲嘆山脈でオウガの召使いとして生き延びているノブラー、そしてあらゆるグリーンスキン種族の中で最強と目されているブラックオークも遂に登場。

さらに、オウガやトロールについての記事もございます。その件については後述することと致しましょう。

ウォーゲーム版におきまして、オークやゴブリンは一定の確率で仲間割れを起こして同士討ちをするというルールになっております。『Tribes and Tribulations』の追加ルールにより、WFRPでもグリーンスキン種族は仲間割れを起こすようになりました

ホブゴブリンがいると仲間割れの確率が高まります。一方、ハガネの規律を持つブラックオークの皆様は「オーク&ゴブリンの反目表」の影響を受けません。まあ、ブラックオーク自身は仲間割れを起こさないとしても、仲間割れを起こした手下をタコ殴りにするでしょうから、結果はあまり変わらないと思うんですけどね。

とはいえルール的には、ブラックオークの目が届く範囲でオークやゴブリンが同士討ちを始めることはありません。

グリーンスキン種族が乗騎として使役する動物や戦場で用いる大型の兵器についてもデータが紹介されています。さらには、オークやゴブリンの名前一覧まで載っており、至れり尽くせりの内容。

『Tribes and Tribulations』では複数の章を使ってオークとゴブリンの部族を紹介しています。名前を挙げますと・・・、

・ドラクヴァルドの森に棲息するフォレストゴブリン「百眼族」
・大型兵器の扱いに長けたゴブリン「折れっ鼻族」
・再起の機会を窺うオークの略奪隊「黒色山賊団」
・ゲリラ戦を得意とするサベッジオーク「岩蛇族」
・ホブゴブリンの部族「オグラ=カーンの狼賊団」
・オウガ傭兵「マトソッグの売剣団」

いずれの集団の構成員も「クリーチャー強化テンプレート」を用いて作られておりますので、テンプレートでどのようなNPCを作れるか具体的に示すものとなってございます。

同じテンプレートを用いたとしても、それぞれ種族が異なり、さらに設定や所持品そして乗騎を変えているため、多種多様な個性を作り出すことが出来るのです。

それぞれの章で各集団の強みも紹介されています。カリスマ的なリーダーがいるとか、特殊技能を持っているだとか、豊かな物資を得ているとか、そういった背景の説明がされています。加えて部隊編成と得意な戦術、旗印についても記載あり。

トロールについては別途章を設けております。トロールは様々な環境に適応できる生物でございまして、ルールブックに載っている学者のコメントによるとエンパイアには23種のトロールが棲息しているとの話でした。

トロール用テンプレート」を活用することで、ストーントロールリバートロールケイオストロールなど様々なモンスターを作ることが出来ます。古老トロール巨大トロールなど、種類に関係なくあらゆるトロールに適用できるテンプレートもございます。

『Tribes and Tribulations』には2つのクリーチャー用テンプレートが掲載されております。丁度良い機会ですので、これまで発売されてきたテンプレートの内容を振り返ってみましょうか。

・『Cluster Eye Tribe(百眼族)』クリーチャー強化テンプレート
・『Night Parade(百鬼夜行)』アンデッド強化テンプレート
・『The Warband of Bayl of many eyes (多目のバイルの戦旅団)』ケイオスウォリアー強化テンプレート
・『Salzenmund: City of salt and silver(ザルツェンムント:塩と白銀の都市)』様々な小妖精テンプレート
・『Tribes and Tribulations(戦辛蛮苦)』クリーチャー強化テンプレート(再掲)、トロール用テンプレート

ざっとこんなもんです。

『Tribes and Tribulations』には他にも、オウガが操る大食魔法の追加データが掲載されております。大食魔法に関する詳しい内容は既に発売されている『Archives of the Empire volume.II(帝国公文書集 第弐巻)』を参照するようにと書かれていますが、『vol.II』には載っていない内容もございます。

例えば、「大食魔法の誤発動表」。オウガの魔術は、人間やエルフが扱う魔術とは異なる体系でございます故、誤発動の結果も異なってございます。

設定上、ウォーハンマー世界のオウガは学術的に呪文を理解して魔法を使っているものではありません。はらわたの底から湧き上がってくる感覚に従って魔法の力を操っているものでございます。そして呪文発動のルールにも、この設定が反映されているのです。

誤発動に関しても同様に、オウガの魔法は彼らの胃袋で生成されているという設定が活かされているのです。

どういうことか説明いたしましょう。オウガの呪術師が誤発動を起こすと、彼らの消化器官の中で有害な魔法的副産物が発生します。さほど深刻なものでなければ当人の健康を害するだけで済みますが、場合によっては胃から食道を逆流して吐き出され、あるいは、その、消化管を順繰りに通って排出され、暴走した魔力が周囲に被害を及ぼすものであります。

誤発動表の結果によっては、オウガが種族的に持つ飢えを体現した神”大アゴ様”の力の一端に触れてしまい、内側から食われてしまうということもあり得ます。

「大食魔法の誤発動表」には様々な記述がございますが、胃腸のトラブルを招く結果が数多く示されている、と申し上げておきましょう。

魔法が追加されたのはオウガだけではありません。グリーンスキン種族が使う“グァーグ!魔術”にも各種の追加データがございますぞ。
これまで『スターターセット(Warhammer Fantasy Roleplay Starter Set )』『Empire in Ruins(エンパイア荒廃す)』『Lustria(ラストリア)』で小出しに紹介されて参りましたが、今までの内容を再録し、さらに新たな呪文も加えてグァーグ!魔術を一挙に掲載。

設定上、人間やエルフの魔術師は魔法を操るためにウォーハンマー世界を吹き抜ける魔力の風から力を引き出していますが、オーク・ゴブリンの魔法は全く異なる所からエネルギーを得ているのです。この設定がルールにも反映されていました。

もちろん、誤発動につきましても他種族とは異なっており「グァーグ!魔術の誤発動表」が新たに設けられています。色とりどりの閃光や電弧そして爆発などなど、グァーグ!魔術の不安定さを示す描写が多々ございました。

欠点ばかりが追加されたわけではありません。敵に強烈なダメージを与える攻撃的な呪文も複数あり。モルク神(狡賢さの化身で究極の蛮性を兼ね備えた神、特にゴブリンが崇拝している)の御手を召喚して敵一体を軽くつまみ潰して戴くとか、ゴルク神(蛮性の権化で最高の狡賢さを併せ持つ神、特にオークが崇拝している)のおみ足を招来して敵軍を踏みつぶして戴くとか、そういったスケールの大きな新呪文が使えるようになったのです。

さらに、オーク&ゴブリン専用のマジックアイテムも複数掲載!

このように、『Tribes and Tribulations』が手元にあればプレイヤーの皆様に様々な好敵手をご用意出来るものと存じます。

GMの皆さん、準備は万端ですね?それではご一緒に!
膝を軽く曲げて腰を落とし、拳を天に向かって突き上げて、
「Waaaaaagh!(訳:イクサだぁぁぁぁぁァ!)」