無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Emperor's Wrath:ウォーハンマーRPG4版

ウォーハンマーRPG第4版の短編シナリオ、『Emperor's Wrath(皇帝の憤激)』のPDF販売が海外のRPG通販サイトで始まっております。

短編シナリオですので、迂闊に何か話しますとシナリオ本編の内容に触れるおそれがございます。なるべくネタバレにならないようにお話し致しますが、一切の情報を遮断して本シナリオに挑みたいという方は、手前が話題を逸らしている間にページを閉じてくださいませ

これまでのところ、ウォーハンマーRPG第4版の短編シナリオは大きく3つのシリーズに分類可能でございます。

一つは『Ubersreik Adventures』の系譜にございます。邦訳版が『ユーベルスライク冒険集』の名前で出ておりますので、既に体験された方もいらっしゃることでしょう。原語版では各シナリオがPDF形式でバラ売りされており、ある程度本数がまとまった時点で書籍(と各シナリオバンドル版)の販売が開始されるようです。原語版では2冊目となる『Ubersreik Adventures Ⅱ』が出版されてございます。

二つ目が、『Old World Adventures(オールド・ワールドの冒険)』シリーズ。最初の一本目『Night of Blood(流血の夜)』は邦訳版がホビー・ジャパンのサイトで無料配布されてございます。その名の通り、オールド・ワールド各地を舞台にした短編シナリオで、クリスマスやハロウィンなどの時期に発売される傾向がございます。そのため、エンパイアの年中行事を題材にしたシナリオを扱う傾向があります。

とはいえ、ホリデーシーズン以外に発売されたシナリオもございます。舞台となりますのはライク河やズィルヴァニア近くの森、ユーベルスライクのような都市、あるいはエンパイアの街道の“どこか”のように場所が特定されていないシナリオまで、幅広いレパートリーがございます。『Old World Adventures』シリーズは今のところ書籍化はされてございません。PDFのみでの販売となっております。

三つ目は、それ以外の短編シナリオです。『ライクランド綺譚 ウォーハンマーRPG単発シナリオ集(One Shots of the Reikland)』や『墓穴掘るならご勝手に(It's your Funeral)』『眠れぬ夜と息つけぬ昼(Rough Nights & Hard Days)』など邦訳版が出版されてございます。これらは表紙に『Ubersreik Adventures』『Old World Adventures』いずれのシリーズ名も書かれておりませんので、その他の分類になるかと存じます。

その他の分類に関し付け加えますと、全五巻から成る長編キャンペーンシナリオ『Enemy Whithin(内なる敵)』の副読本にも、単発の冒険として運用可能な短編シナリオが毎回掲載されてございました。

話題が逸れ申した。短編シナリオ『Emperor's Wrath』の話を致しましょう。

先に述べました『Old World Adventures』シリーズのシナリオで、表紙と目次そして広告含めて全部で31ページ、うちシナリオが18ページで付録が9ページ。シナリオの冒頭3ページが付録の内容に直結しておりますので、事実上付録が全体の四割を占めていることになります。

いかにも、付録が充実しております。語弊があるやもしれませんが、まさしく付録に掲載されている内容こそが『Emperor's Wrath』の肝心要なのです。

『Emperor's Wrath』最大の見所をお話しいたしましょう。出版元であるキュービクル7エンターテイメントのページでシナリオの予告として掲載されており、さらに表紙画像でも明らかなことなのでネタバレには当たらないはずと考える次第にございます。

本シナリオには、スチームタンク(蒸気戦車)のデータが掲載されているのです。

事の重大性を申し上げますれば、スチームタンクは帝立技術者大学校の創設者レオナルド・ダ=ミラグリアーノ教授が五百年前に開発したもので、エンパイア広しと言えども今なお機構の再現に成功した者はおりません。

現存するスチームタンクはわずか8両。選帝候の権威の象徴である魔剣ルーンファングでさえ12振り存在していることを考えると、蒸気戦車の希少価値は計り知れないものであります。

『Emperor's Wrath』には、現存するスチームタンク全機についての公式データ、名称、武装、司令官、現時点の配備状況、主な戦歴、が掲載されています。

帝国の切り札ですから勇壮な名前が付いているのも当然で、蒸気戦車第一号機「Conqueror〈征服者〉号)」、混沌大戦や墳墓王討伐そして吸血鬼伯爵との戦いで活躍した「Deliverance〈天の救済〉号)」といったものがあります。

交戦中に砲が損傷してもなお体当たりで戦闘を継続した「Indomitable〈不屈の魂〉号」は機能不全を起こし現在修理中。装甲馬車を開発し軍事史に名を刻んだ「Von Zeppel〈フォン・ツェッペル〉」技師の名を冠する機体、など一つ一つのスチームタンクに背景が設定されてございます。

スチームタンクに搭載する蒸気砲、臼砲、旋回砲、三重連装砲なども各種データ化、弾薬や車体の改装についてもルール化されております。

これまで、『Enemy in Shadows COMPANION(影に潜みし敵 冒険の手引き)』掲載の四輪馬車のデータや『Death on the Reik COMPANION(ライク河上の死 冒険の手引き)』の蒸気船操縦ルールを基にスチームタンクをハウスルール化しようと四苦八苦していたそこのアナタ!

『Emperor's Wrath』にはスチームタンクの公式データが載っているのでございます。是非ご一読くださいませ。

さて、スチームタンクの詳細なデータが明らかになったのは嬉しいけれど、全機に公式な設定があるので自由に創作できる範囲が狭まってしまったと嘆いているGMのアナタ!

前回の記事で紹介致しました『Up in Arms(武器を執れ!)』の記述に従えば、ナーグルの従者タムール汗(Tamurkhan)がナルンを攻撃したのが帝国歴2511年となっております。

ウォーハンマーRPG第4版は帝国歴2510年代、スターターセットに依れば2512年を前提としているとのこと。

小説版の時系列から見てタムール汗の襲来後、つまり帝国歴2511年以降であればスチームタンクのデッドコピーであるところの『マリエンブルグ級陸上戦艦(Marienburg Class Land Battleship)』が存在していることになります。

マリエンブルグを治める豪商たちは、どうしても必要な方々に「お値打ち価格で」貸し出すこともあると聞いてございます。

『Emperor's Wrath』に掲載されている各種データを駆使して、マリエンブルグ級陸上戦艦のデータを作成するのはいかがでしょう。