無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

『ジェヴォーダンの獣』監督が参考にした日本のアニメ

本日は、クリストフ・ガンズ監督の『ジェヴォーダンの獣についての話をいたします。18世紀フランスのジェヴォーダン地方で実際に起きた、謎の獣による住民殺害事件に題材をとっています。

で、わざわざ申し上げるまでもないことかもしれませんが、「この映画は実際に起きた事件を基にしている」という売り文句、あくまでも基にしているだけであって、実際の事件とはかけ離れたものが大半のようです。

例えばこの映画には、アメリカ大陸からやって来たネイティブ・アメリカン、モホーク族のマニという登場人物がいます。彼は、異国の格闘技の達人で、主人公の親友であり、ボディガードでもあります。博物学者の主人公と狩猟民族の戦士のコンビが獣事件に隠された陰謀を追う!ここまでなら、まあありがちな設定かもしれません。

でも、ネイティブ・アメリカンのモホーク族がカンフーを使うというのは、それまで見たことがありません。彼一人ではありません。何しろこの映画、ふと気がつくと他の登場人物まで次々カンフーを使い始めるのです。18世紀フランス人が!
少なくともこの部分に関しては、事実に基づいていないことは確かですね。

雑誌インタビューによりますと、クリストフ・ガンズ監督が『ジェヴォーダンの獣』でモホーク族のマニの設定を作り上げる時、参考にした日本のキャラクターがいたそうです。

狼と心を通わせる顔にペイントをした狩猟民族で、野性的な武術の使い手
監督に言わせますと、「マニは『もののけ姫』への僕なりのアンサー
…、なんだそうです。

豪華な貴族達の衣装、農民や狩人は泥と垢が染み込んだ色の厚手の服、メインキャラは性格に合わせた個性的な衣装・武器、と非常に正しい方向性を持ったキャラクターデザインなのも、
悪役の陰謀が手段と目的の間に関連が見られない、論理が飛躍しているのも
登場人物が次々カンフーの達人になっていくのも、

18世紀上流社会!秘密結社の陰謀!怪獣!カンフー!あとアニメ!
と、監督または脚本家が自分の好きなものを片っ端からぶち込んで作った結果なのではないかと、そう思うのです。

やけにボリュームたっぷりで豪華な見た目の割に、B級ジャンル映画の素材が存分に使われている、闇鍋のような映画でした。