無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

ハクの本名の漢字表記を推定する。『千と千尋』について考えたこと。

ひとつ気が付いたことがありましたので、書き留めておきます。

先日、『千と千尋の神隠し』に登場する少年、ハクの正体は古事記日本書紀にも登場する神、ニギハヤヒがモデルではないか、と記事を書きました。その件に関しまして、もう一つ。

最初は気にしていなかったものの、ハクはニギハヤ“と名乗っているように聞こえたのです。

もちろん、歴史上世界中のさまざまな宗教で、神様の名前の正確な発音が伝えられていなかったり、同一の神様が地方によって別の名前で呼ばれていたり、別の神様が時代とともに同一の神様の別の側面とみなされるようになったりした例は、枚挙に暇がありません。
例えば、仏教の大黒天と神道大国主オオクニヌシ)が、“ダイコク”の音が通じるとして同一視されていった、などです。

そもそも、ニギハヤヒの名も、古事記日本書紀で表記が異なっています。

では、ニギハヤヒをニギハヤミと呼ぶ地方が存在するのか?
残念ながら寡聞にして、そのような事実があったのか確証を得るにいたっておりません。

しかし、作り手側の意図を推し測ることによって、なぜニギハヤヒではなくニギハヤ“”だったのか、見当をつけることは可能です。

千と千尋の神隠し』劇中で、ハクの正体が川の神であると示唆されています。

前述のように、ニギハヤヒの表記は古事記日本書紀の間で異なっています。しかし、ニギハヤヒの“ハヤヒ”の部分はどちらも同じ “速日” の字が当てられています。
神武天皇遠征の際、東の地に暮らしていた豪族が奉っていたため、日の出の早い地の神として名付けられたと考えられます。

ハクの正体が川の神であることとあわせて考えますと、ニギハヤミという名は邇芸速日ニギハヤヒ)の名を下敷きにしつつ、川の流れを表す速水”の字を当てるためだったのではないか。

つまり、ハクの本当の名は、邇芸速水と表記することが出来ます。

名前の残り部分、“コハクヌシ”については、類似の名前が神話に登場していないか、現在調査中です。

今のところ思いつく限りでは、中国の川の神、河伯にちなんで河伯主”もしくは河伯主神”と表記するのがあり得そうです。コハクではなくカハクと発音するほうが自然という問題点は残りますけれども。

とりあえず、ニギの表記を古事記に合わせると、
邇芸速水河伯主神(ニギハヤミコハクヌシ、豊かで流れの速い川の神)
がハクの本名である、と仮説を立てておきます。

以前の関連記事はこちら!
千と千尋もののけ姫とトトロについて、その1・その2
http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/27606890.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/27656934.html
千と千尋の神隠し
http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/18240124.html