無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

『千と千尋』が『もののけ姫』の続編であることの根拠

以前ブログの記事で、『千と千尋の神隠し』と『もののけ姫』には共通する題材が多く使われている旨、申し上げました。

最近二・三気が付いたことがございまして、そこから推論いたしますに共通する題材や同一の話題が扱われている以上の強力な結びつきがこの二本の映画にあり、千と千尋の神隠し』は『もののけ姫』の続編乃至は後日談である、との結論に達しました。

両映画の主人公の出自について考えてみましょう。
設定資料集によりますと『千と千尋の神隠し』の主人公千尋には、もののけ姫サンの子孫である!との冗談とも本気とも判別の付かない記述があります。
千尋と出会う少年の名はニギハヤミ。思いますに彼の名は「古事記」「日本書紀」にも記されている神、ニギハヤヒ(邇芸速日)から着想を得たものでしょう。ニギハヤミの正体が川の神であるように描かれているので、漢字を当てると邇芸速水となると思われます。

もののけ姫』の主人公アシタカは、“東の地に暮らす石の鏃(やじり)を使う勇猛な民”の出であると示唆されています。おそらくは、彼の設定もまた古事記」に由来するはずです。

古代日本史においては、
大陸から稲作と鉄器を伝えられた農耕民族と、採集生活を行う鉄器を持たない狩猟民族の争いがあったと言われており、「古事記」「日本書紀」「風土記」などにそのことを示していると思しき記述が見られます。
朝廷と争った豪族がナガスネビコやツチグモなどと名付けられたのは、手足の長い北方系狩猟民族(氷河期に陸路から渡ってきた)だったため、とする説がございます。
この説に従うと、ナガスネビコは長脛彦と表記できます。

もののけ姫』冒頭でアシタカは村人から“アシタカヒコ”と呼ばれています。
もし、アシタカヒコが足高彦という意味ならば、『千と千尋の神隠し』と『もののけ姫』の間には密接な関連が見出せます。

鉄器を持たず朝廷に敗れて東に移住した古の民の子孫アシタカヒコが、“足高彦”を意味するのなら、
大和朝廷と争った東の狩猟民族の長ナガスネビコにちなんで名付けられていることはほぼ確実になります。

ナガスネビコの祖先となった神はニギハヤヒである、と「古事記」「日本書紀」には記されておりまして、
このことから推測いたしますに、ニギハヤミはアシタカの一族の先祖である!
との仮説に辿り着きます。

ニギハヤミがアシタカの先祖であるならば、
もののけ姫サンの子孫である千尋とちょうど対になる
存在に位置します。

もののけ姫』の最後でサンとアシタカは再開を約束し互いに異なる道へ踏み出します。
その後彼らが再開したのか、アシタカの呪いを解く方法は見つかったのかは描かれていません。

千と千尋の神隠し』が『もののけ姫』の続編であると考えると、
アシタカの先祖である神と、人として生きるサンの子孫
アシタカとサンが世代を超えた形で再会する
数奇な運命を扱った物語
である、
と深読みすることができます。

以前の記事はこちら!
ハクの本名の漢字表記を推定する
http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/27749413.html
千と千尋もののけ姫とトトロについてその1、その2
http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/27656934.html
http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/27606890.html
千と千尋の神隠し
http://blogs.yahoo.co.jp/tokuni_imiha_nai/18240124.html