無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Archives of the Empire volume II:ウォーハンマーRPG4版

『Archives of the Empire volume II(帝国公文書集 第二巻)』が遂に発売されました。前作『Vol.I』ではエンパイア領内に暮らす異種族、すなわちドワーフ、ハーフリング、そしてウッド・エルフについて詳細な設定が示されておりました。『Vol.II』でも全6章のうち最初の1・2章がエンパイアで暮らす種族の紹介に割り当てられております。

本書で紹介されているのは「大きくて、騒々しく、粗野で、きわめて暴力的な」種族、オウガでございます。ルールブックではクリーチャーとしてのデータが312ページに載っております。

オウガをプレイヤーキャラクターとして運用するための各種ルールが遂に『Archives of the Empire Vol.II』で公開となったのであります。

キュービクル7エンターテイメントのページで予告記事を読んでおりました故、オウガがPC種族に加わることは手前も存じておりました。しかし実際に目にして、その情報量に圧倒されたのであります。
オウガ棍棒ではり倒されたくらいぶっ魂消た、と申し上げて差し支えないでしょう。

さてアナタのお手元の英和辞書を引くと「Ogre(名詞:オーガー、あるいはオウガ)民話に登場する人喰い巨人、人喰い鬼」などと書かれているかと思います。

誤解しないで頂きたいのですが、ウォーハンマーの舞台となる世界においてオウガは必ずしも邪悪な人喰い巨人というわけではございません

第一に、彼らは必ずしも人間を取って食うわけではなく、どんなものでも食べてしまうのであります。どんなものでも、というのはつまり・・・、どんなものでもという意味です。ゴブリンやオーク、ドワーフにエルフ、トロールそして混沌のディーモンまで、文字通り何でも胃袋におさめてしまうのです。

第二に、彼らは必ずしも邪悪ではありません。なるほど恐ろしげな姿を見て怪物の類ではないかと思う御仁もいらっしゃるかもしれません。ですが『ウォーハンマーRPGルールブック』のどこにオウガが掲載されていたか、もう一度よく思い出してください。

「ライクランドの怪物たち」ではなく「暗黒の下僕たち」でもない。人間、ドワーフ、ハーフリング、エルフと並んで「ライクランドの住人たち」のセクションに載っているのです。

左様、オウガもライクランドの住人なのであります。『Archives of the Empire volume II』の第1章は、エンパイアで暮らすオウガについて様々な切り口から語っているのです。

これまでの各種追加サプリと同じく年表もあります。建国王シグマーの時代から近年のパラヴォン戦争まで数々の歴史的事件において、傭兵として狩人として、はたまた生きた建築重機として働きエンパイアを支えてきたオウガたち。彼らのこれまで語られていなかった活躍が幾つも記されています。

今までの追加資料では、「支配者、支配者の家族、家臣団、有力者、貴族家やギルドなど政治力を持つ組織、軍事力、領土」の順でその国土について、あるいはその種族について語ってきましたが、オウガはそうではありませんでした。

なるほど考えてみればそれもそうです。オウガは種族全体が放浪の旅へ向かう気質を持っており、エンパイアに領地を持っていません。支配者もいません。身を守るための軍隊を持つ必要も無かったことでしょう。何しろ彼らはそれぞれが一人軍隊とも言える怪力の持ち主なのですから。

人間はもとより、ドワーフ、ハーフリング、エルフとも甚だしく異質なオウガについて、まずは第1章を読めばキャラクター創造に必要な背景を把握できる事でしょう。
背景説明の中には、シナリオフックになりそうな話題も各種ございます。

第2章からいよいよプレイヤーキャラクターとしてのオウガについて。データが続々と披露されます。ひょっとすると、ルールブックに記載されている他のどの種族よりも内容が充実しているかも知れません。

キャラクター創造の手順はこれまで登場してきた各種族と同じです。能力値、職業、種族異能、技能、ランダム名前の表を用います。

オウガは他種族をどう見ているか、そして他種族からオウガはどう見えているのか、ルールブックと同様に「まったく、オウガときたら・・・」のコーナーもあり。

意外なことにエルフは、オウガに対してさほど悪印象を持っていないようです。そしてこの見方はハイ・エルフだけでなくウッド・エルフでも共通しています。洗練された文化で知られるエルフが、対極にあるオウガをさほど悪く言わないことに手前は些か驚かされました。しかしよくよく考えたところ、エルフの言い分は彼らの生き方に沿ったものであり、納得できるものだったのです。

キャラクター創造のページには、新たな心理的特徴や「どえらい二つ名」など幾つかの追加ルール、さらにオウガのキャラクターを運用する際に有用なその他の情報もあり。

例えば、「キャラクターへの10の質問」の中にも、オウガを理解するための手がかりとなる記述が見られます。

キャラクター創造の次は所持品。各種のオウガ専用装備が載っています。オウガをプレイヤーキャラクターに選択可能とはいえ、装備については一切合切「データはそのままで、価格と重量を○倍にすること」などの方法で簡略化しているだろうと高を括っておりました。

ところが何とまあ、数々の専用アイテムが並ぶコーナーが設けられていたのです。
近接武器だけではなく、オウガの狩人が使う銛撃ち機のような射撃武器、さらにはオウガが抱え撃ちする大型の黒色火薬武器まで。

武器にバリエーションが欲しいですか?オウガは一般的に棍棒を自分用にカスタムする事を好んでおります。そういうわけで改造したオウガ棍棒の扱いも載っています。

装備品の次は、いよいよオウガの魔術師について。“おっかねえ大アゴ様”の司祭でありシャーマンでもある「オウガのブッチャー」の話題でございます。

オウガのブッチャーは何かを食らうことで“大アゴ様”の力を引き出しているという設定となっています。そのため、オウガは独自のルールを持つ魔術師キャリアが設けられているのです。

ウォーゲーム版ウォーハンマーに登場するオウガの魔術師は、天から降りてきた凶星としての“大アゴ様”を崇める予言者や、喰らった獲物の血肉から力を引き出すシャーマン、あるいは悲嘆山脈にある火山を“大アゴ様”の現身とみなして崇拝する司祭など、幾つかの流派に分かれています。この設定はウォーハンマーRPG4版にも引き継がれていました。

しかしながら、オウガ魔術師についての背景設定はさほど量が割かれておりません。より詳しく知りたいのであれば、今のところはウォーゲーム版の設定を参考にする事になるかと思います。

それでもルール面は充実しており、オウガの魔法使いについての追加ルールは種族の特性に合わせたものとなっております。

例えばルールブックにもあるように、一般的な魔術師は【知力】で呪文を詠唱し、司祭は【協調力】を仕える神格との対話に用います。ではオウガの魔術師は(必然的に【知力】【協調力】の値が低いにも関わらず)どのように力を引き出しているかというと・・・、

設定とルールが論理的に一致している、優れた追加ルールでございました。

オウガ専用呪文も掲載されております。エンパイアの学者の間で「大食魔術」「食まじない」「胃霊秘法」など様々な名前で呼ばれているもので、“骨砕き”“脳ミソすすり”“トロールのはらわた”などの、聞くだに恐ろしげな呪文の数々が示されています。

魔術師以外にもオウガの傭兵と騎兵がキャリアとして新規に設定されています。

ええそうです、手前たった今、騎兵と申しました。言い間違いではありません。オウガの騎兵です。
オウガを乗せて走れる馬などいるのか?尤もな質問です。

ご安心ください、オウガが騎乗するのは、馬ではございません。騎乗用の動物が新たに追加されております。手前と致しましては、完全武装のオウガ騎兵がこちらへ向かって突進してくるような光景に出会いたくはございません。

とはいえ、この巨大な動物をどこで飼ったものか、思案のしどころではございます。確かに戦いでは圧倒的な強さを誇るキャリアですが維持コストも莫大なものでして、結局のところプレイヤーキャラクターとしてはバランスが取れているわけです。
・・・GMには関係ないんですけどね。

オウガに関する記事はざっとこの通り、“おっかねえ大アゴ様”もご満悦の圧倒的なデータ量でございました。

第3章はオールド・ワールドの星座について。
星座の形状、季節、その星座によって象徴される性格、関連する職業や神格といった内容が記されています。

「リアの大釜」「竜姿ドラゴマス」「グルングニの飾り帯」など、オールド・ワールドの夜空を彩る星座については、2版の『ウォーハンマー・コンパニオン』で既にご存じの方々もいらっしゃることでしょう。

今回新たに大きく追加された内容を2つ挙げましょう。

1つは星座が図入りで紹介されていることでございます。これにより、星座がどのような形なのか、明確に判るようになっております。

もう一つはより重要なものでございます。4版ではキャラクター創造の際に星座を決定することが出来るようになったのです。そして、星座によって能力値や異能に若干の修正が入るのであります!

過去の版ではキャラクターの性格を演じる際の味付けとして利用するものでした。選択ルールではございますが、4版ではルール上の意味があるものとなりました。

極端な話、“魔女の星の下に生まれたため”魔法が使える小作農、という初期キャラクターが出来上がることもあるわけです。

魔狩人さん、こいつです!

冗談はともかく、星座と結びついている神格について、オールド・ワールドの社会や文化で占星術はどのような位置づけか、など様々な話題があるため第3章にはいろいろな使い道がありそうでございます。

第4章は、マジックアイテムの表でございます。
このリストに全部で幾つマジックアイテムが掲載されているか、手前は説明することが出来ません。

何故なら、第4章に載っているのはマジックアイテムをランダムにジェネレイトするための表だからであります。そう、シナリオの報酬としてダイスをロールするだけで、GMはその場でマジックアイテムを設定することが出来るのです。

上級魔術師になるには魔法アイテムが必要と基本ルールブックに書かれているのに、魔法アイテムはルールブックに載っていないと嘆いていた中堅魔術師のそこのアナタ!
GMの前で『Archives of the Empire volume II』を開いて、以下のような独り言を言ってみましょう。

「魔法アイテムの特徴をランダムに決められる表があるのか、これは便利だなあ」とか「いろいろな魔法アイテムが載っているぞ」あるいは「不安定な魔法と呪い表!そういうのもあるのか」といったものです。

個人差もありますが、半月もすればアナタのGMはマジックアイテムが登場するシナリオを作りたくて堪らなくなっているはずです。

それでもだめなら、次の作戦です。GMがマジックアイテムを用意しないのであれば、アナタのキャラクターに製作させましょう
マジックアイテムを作るための冒険外活動のルールも設けられています。極め付きに優秀な魔術師の才能だけでなく優秀な職人としての技能が必要ではございますが、キャラクター自身でマジックアイテムを作ることが出来るようになったのです。

とはいえ、通常のルールでは魔術師のキャラクターは職人としての技能を持ち合わせておられない。よって、職人との共同作業となることでしょう。

共同作業を行わなければならないのであれば、マジックアイテムの作成においては公に正体を明かせない分、似非魔術師が不利ですって?

それはどうでしょう、似非魔術師の技能リストをもう一度読み直すと、大いに役立つものが見つかるものと手前確信してございます。

第5章はフレデルハイムの大療養所について。
フレデルハイム村のほど近く、シャリア教団の運営する療養所がございます。そう、『ライクランドに冒険あり(Adventure afoot in the Reikland)』で言及されているフレデルハイム大施療院でございます。ルールブック付属の地図をご覧ください、アルトドルフのすぐ北に位置してございます。

この療養所に関する詳細がこの章で述べられています。建物の見取り図や職員たちのデータが載っております。ウォーハンマーRPGが「残酷な世界の冒険」を名乗っているだけのことはあり、この建物にはずいぶんと秘密が・・・そしてシナリオフックが、隠されている模様です。

療養所に入院していることが既にルールブックで示されているあるキャラクターが第5章に掲載されています。それだけでなく、過去の資料を読んでいるアナタがあっと驚くキャラクターまで登場するのです。

第6章は大規模戦闘についてのルール
各種の条件に基づいた戦力差や戦場に現れるユニット、作戦やキャラクターたちの行動によってどのように戦況が変わっていくか、判定するための各種ルールが示されています。

例えば、ダークエルフの海賊団に襲撃された漁村を、村人と協力して守り抜くというシナリオが出来るわけです。すると、だれが菊千代役になるかが問題ですね

冗談はともかく、大規模戦闘でございますから、過去の版では扱われなかったブツが登場するわけです。すなわち、戦争兵器です。
よろしいですか、剣だの槍だのといった武器ではなく、大砲やら投石機だのといった戦争兵器のリストが載っておるのです。
ナルンの砲術大学校が誇る連射砲、ヘルブラスター・ヴォレイ・キャノンがとうとうRPGの世界にも進出してきました。

高価な上に運用には人手も要りますので、データがあってもなかなか手が届かないアイテムですが、
・・・GMには関係ありませんね。

最後に付録(Appendix)が設けられており、「状態」それもいずれも心理的なもの、について新たなルールが提示されています。

以上で本編全6章と付録をざっと見て参りました。

前半の膨大なデータ量に圧倒され、脳を休めるために読み物の章を開いたら内容の濃さに二度圧倒されるという、中身がぎっしり詰まった本でございました。

ところで気になったことがございまして、『Enemy within(内なる敵)』キャンペーンで登場していた御仁や、『Archives of the Empire Vol.II』の記述から考えますに、ホルスヴィヒ=シュリスタイン家は魔法の才に恵まれた家系なのですかね。

…おや、誰か来たようです。
誰でしょうこんな夜更けに。

Ubersreik Adventures II:ウォーハンマーRPG4版

前回の更新から一ヶ月が経過しました、皆様いかががお過ごしでしょうか。手前はと申しますと、『Empire in Ruins COMPANION(エンパイア荒廃す 冒険の手引き)』がまだ発売されていないので、過去に出版された追加サプリを読み直して心を静めているところであります。

これまでに発売されている追加資料を読んでおりますと、ウォーハンマーRPGには何人もの名探偵が登場していることに気づかされます。例えば“自称世界一の探偵”エルキュール・ド=ガスコーニュ氏、名前に職業そして独特のベルギー訛からエルキュール・ポアロがモデルなのは明らかです。アルトドルフ波止場警備隊の“ダーティ”ハラルドことハラルド・クラインダインスト署長。こちらは言うまでもなくクリント・イーストウッドが演じた刑事を元にしておりますね。

他にも腕利きの探偵と致しましては、シェリー・ソーンコッブル捜査官が『Patrons of the Old World(オールド・ワールドの後援者たち)』に掲載されてございます。お住まいが“ナルン市ベッケリン街112”という、どこかで聞いたような番地なのです。多分マイキー・ソーンコッブルとかそういう名前の有力者の兄がいるんだろうなあとか、そのうちどこかの滝で転落死を偽装するんだろうかとか、まあそのようなことを考えながら日々を過ごしております。

さて本日紹介しますのは、少し前に英語版PDFの販売が始まった『Ubersreik Adventures II(ユーベルスライクの冒険 その2)』と致しましょう。

何故『Ubersreik Adventures II』を話題に取り上げるのか、少々説明させて頂きたく存じます。

第一の理由は、『ウォーハンマーRPGスターターセット(WHRPG Starter Set)』邦訳版が遂に発売された、えーと、書籍版が9月末でPDFは10月下旬か、・・・ためであります。

スターターセットでエンパイアの都市ユーベルスライクの設定が披露された今こそ、ユーベルスライクを舞台にしたシナリオ集の見所を紹介するのに適した時期である、手前斯様に考えた次第でございます。

では何故『I』を飛ばして『II』から話をするのか、という至極尤もなご指摘もございましょう。『Ubersreik Adventures』シリーズは短編シナリオ集であり、故に迂闊に何かを話すとネタバレに触れる恐れがございます。『II』の方がまだネタバレを回避して話をし易い内容となっておりまして、これが理由でございます。

ネタバレしないように申し上げますれば、『Ubersreik Adventures』『Ubersreik Adventures II』 いずれもバリエーションに富んだ冒険シナリオが掲載されております。怪物退治あり、ミステリー仕立てあり、都市型ダンジョン探検あり、といった具合。

既に申し上げましたとおり冒険の舞台はユーベルスライク、従いましてスターターセットで言及されている人物や場所が扱われている訳なのですが、全体的に『II』の方がスターターセットとの結びつきが強いのです。

例えば、スターターセットで言及されていた(そして詳細データが伏せられていた)NPCは『Ubersreik Adventures』一冊目にも登場します。しかし、人数といい地位といい『II』の方に軍配が上がるのです。ユーベルスライクの重要人物たちのデータを知りたいのであれば、『Ubersreik Adventures II』を読むことをお勧めいたします。

さらに、『II』ではユーベルスライクならではの出来事を踏まえたシナリオも用意されています。

確かに、『I』もユーベルスライクを舞台にしていますが、必ずしもこの町を舞台とする必要がない面もありました。『I』のユーベルスライクは舞台というよりも背景といったところでしょう。

『Ubersreik Adventures II』最終章はシナリオではなく地域ガイドとなってございます。ユーベルスライクのかつての支配者ユングフロイト伯の領地である黒岩公領の紹介記事、ユングフロイト家の人々、家臣団、軍事力についての記事が掲載されております。

ウォーハンマーRPGではキャラクターが出世して上位のキャリアに就くにはそれに相応しいアイテムを入手する必要があるのは皆様ご承知の通り。「貴族」のキャリア最上位の「大貴族」になるのに必要な所持品には“領邦”がございます。

必要なアイテムのうち宮廷服や手鏡は容易にイメージできるが“領邦”って何だよ、と途方に暮れていたそこのアナタ!『Ubersreik Adventures II』の黒岩公領を参考にしてみては如何でしょうか。まあ、入手できるかは別問題ですけどね。

ちなみに別の章ですが、「大商人」になるために必要なアイテム“大邸宅”の参考になる見取り図も載っています。そう、見取り図が載っているのです。
一応申し上げておきますと、開錠道具の価格はルールブックの303ページに載ってございます。

冗談はともかく、これまで『Ubersreik Adventures II』の話をして参りました。では一冊目が『II』より劣っているかというと、そんなことはありません。スターターセットとの結びつきが強いが故に、『II』の方が特徴を指し示し易かっただけであります。

一冊目について、必ずしもユーベルスライクを舞台とする必要がないものもある、と手前先ほど申し上げました。まさしくそれこそが一冊目の強みだと思うのです。

つまり、エンパイアのどの町を舞台にしても成り立つ一般的なシナリオが載っているのが『Ubersreik Adventures』であり、スターターセットで設定が固まったユーベルスライクをよりじっくりと味わうシナリオ集が『Ubersreik Adventures II』なのです。

ウォーハンマーRPG4版では、資料が相互に言及しているところが幾つもありまして、たとえばシナリオフック集『ライクランドに冒険あり(Adventure Afoot in the Reikland)』に載っている「ゴーラム・グラットンガットの肉料理屋」は『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』でより詳しく扱われておりますし、「束縛する絆」で言及されている魔女アンジェラは『Patrons of the Old World II』に詳細が載っています。「“珍奇の”こそ我がミドルネームなり」のマルサシウス動物展は『Enemy in Shadows(影に潜みし敵)』に登場している・・・、それどころか表紙に載っています。公式の短編シナリオの中には『ライクランドに冒険あり』が基になっていると思われるものもあります。まだまだありますが、このくらいにしておきましょう。

設定が深まってくるのは良いことですが、関連資料があまり多いのも考えものでして、全5章追加資料含めて全10冊の『The Enemy Within(内なる敵)』のような大冒険をいきなり始めると息切れしたり、途中で挫折することもあるでしょう。

ルールブックさえあれば始められる短編シナリオ集『Ubersreik Adventures』、スターターセットがあればより一層楽しめる『Ubersreik Adventures II』、いずれも手軽に始められる冒険としてお勧め致します。

スターターセットに対応する『Ubersreik Adventures』シリーズと同様に、設定資料と対応する短編シナリオ集というものは他にもございます。

邦訳版の出ている『ライクランドの建築(Buildings of the Reikland)』には、対になる短編シナリオ集『One Shots of the Reikland(ライクランド短編シナリオ集)』がございます。短編シナリオ集では『ライクランドの建築』に掲載されている“ハーツクライム閘門”“ヴァーレン神殿”“飛びかかるペガサス亭”などを舞台にした冒険を扱っておりますので、こちらも同様に一読をお勧めします。

Empire in Ruins:ウォーハンマーRPG4版

エンパイア荒廃す!
全5巻から成るキャンペーンシナリオ『The Enemy Within(内なる敵)』最終章となる第5巻『Empire in Ruins(エンパイア荒廃す)』のPDFがついに公開されました。ずいぶん待たされたものです。これまで二ヶ月間、キュービクル7エンターテイメントのサイトを開いては「a few weeks(ほんの数週間)」「coming soon(間もなく公開)」「available soon(間もなく入手可能)」「Stay Tuned(乞うご期待)」という単語を眺めて過ごしておりました。9月中旬にもなると、これはもう予告されていた2021年第3四半期には間に合わないかと不安になっていたところです。付け加えておきますと「coming soon」と書かれていたのは8月11日の記事です。

しかし、待たされた甲斐はありました。GM向けに書かれているシナリオの背景説明で、最初の1ページ目から衝撃の展開が記されているのです。

どのような展開か申しますと、完全なネタバレになってしまいますので説明致しかねます。

話題を逸らしましょう。

Empire in Ruins』はキャンペーンの最終章に相応しく、これまでのシナリオの重要人物やゲストキャラクター、さらには一場面だけ登場したちょい役キャラに至るまで、大挙して再登場しています。

『The Enemy Within』キャンペーン以外からも、都市設定資料『Middenheim: City of the White Wolf(ミドンハイム:白狼の都市)』『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』に掲載されていた人物や、短編シナリオ集『Rough Nights & Hard Days(日夜是騒乱)』『Ubersreik Adventures(ユーベルスライクの冒険)』のキャラクターも出演しています。まさしく、何シーズンも続いてきた長編ドラマの最終回の如き趣きで、これまでのシナリオそして追加資料の集大成となっているのです。

Empire in Ruins』では、エンパイアの重要人物が多数登場します。中でも極めつけに重要な人物は、選帝候のお歴々でございましょう。

これまでの所、4版で能力値が明らかになっている選帝候は、ナルンのエマニュエル・フォン・リーベウィッツ伯爵夫人とミドンハイムのボリス・トッドブリンガー伯爵。それぞれ『Rough Nights & Hard Days』『Power behind the Throne(玉座の影の権力)』に掲載されてございます。お二人とも今回のシナリオで再登場。

前回登場した際は、とりわけ写真うつりが悪い瞬間を選んだような挿し絵となっていたナルン選帝候ですが、今回は澄まし顔で載っております。

挿し絵について申し上げますと、マリウス・レイトドルフ伯がなかなかに印象深いものでした。このお方は奇矯な言動と戦争を大変に愛好なさるご気性で名を馳せてございまして、まあその何と申しますか、警官隊とのカーチェイスの末に捕まった強盗のような、何かがヤバい感じにキマった笑顔をなさっています。

エンパイアで最高位の宗教指導者であるシグマー教団総大主教大司教、ウルリック会大僧正もNPCとしてデータが設定されています。

という事は・・・、もうお判りですね、彼らの所持品も載っているわけです。「首座の杖」や「翡翠の鷹獅子」といったマジックアイテムがデータ化されているのです。エンパイアの至宝と呼ぶべきアイテムのみならず、それ以外にも様々なアイテムやシナリオ上のギミックが登場します。

例を挙げますと、キャンペーンシナリオの4巻目『The Horned Rat(角在りし鼠)』の直後から今回のシナリオが始まるわけです。『The Horned Rat』のラストに登場したアレを自作シナリオに登場させるためのデータを知りたいと皆さん思いますよね!ええそうです、載っています。

登場人物以外にも、組織名に共通点を持たせていたとか、ある魔術師の部屋の内装が別の場所と共通しているとか、これまでのシナリオから様々なネタが取り入れられています。

すでに申し上げたことですがもう一度、『Empire in Ruins』はこれまでのシナリオそして追加資料の集大成となっているのです。

ネタバレにならないように本書の印象を申し上げましょう。

手前は過去の記事で“『The Horned Rat』は『ウォーハンマーRPG』でも壮大なスケールの冒険が出来るのだと、その事を教えてくれた”と申しました。『Empire in Ruins』はどうだったか?

さらに壮大な冒険になります。

ウォーハンマー小説で例えるなら、これまでのシナリオ集の単発シナリオが『ウォーホーク』くらいの騒動だとすると、『Empire in Ruins』はかの『ドラッケンフェルズ』さえも上回るような大事件を扱うのです。

読み終わった印象については述べましたので、本書の具体的な内容、かつ、シナリオ本編の内容に抵触しない話題をこれから扱いましょう。

本書には『The Enemy Within』キャンペーンをプレイする予定の無いGMにもお役立ちの情報が掲載されています。3つ挙げます。

テンプレートデータ:エンパイアに暮らす一般の人々
冒険の途中で出会うエンパイアの人々、たとえば小作農、使用人と使用人頭、兵士、騎士、巡礼者に至るまで、様々な一般NPCに使えるテンプレートが載っています。さらに、騎士はいずれの騎士団に所属しているか、狂信的な巡礼者はどの教団の支持者であるか、といったことによる能力値の違いも例示。アナタのシナリオに登場させる一般人NPCは、『Empire in Ruins』があればすぐに用意できることでしょう。

テンプレートデータ:ナイトゴブリン
『The Horned Rat』で一般的なスケイブンの能力値が示されたように、『Empire in Ruins』では様々なナイトゴブリンの一般的な能力値が提示されています。「スカーゴッボ(傷跡ゴブほどの意味)」と呼ばれる力自慢のゴブリンや、シャーマンのお告げを真に受ける「ルーニー(変人)」と呼ばれるゴブリンも新たに登場。

後者は旧版ではフェナティックと呼ばれていた連中ですね。鎖付き鉄球を使う危険な敵です。『Cluster Eye Tribe(百眼族)』でフォレストゴブリンの部族が紹介されていたのと同じような形で、ナイトゴブリン部族の中心人物や生態についても多少の記述あり。

新たな魔法体系:「リトル・グァーグ!」
ゴブリン専用呪文が追加されました。これまで出版された中では『Warhammer Fantasy Starter Set(ウォーハンマーRPG スターターセット)』でほんの少しだけ紹介されていましたが、今回さらに呪文が増えました。『Cluster Eye Tribe』に載っていた「Creature Advancement Template(クリーチャー強化テンプレート)」があれば、ゴブリンの呪術師を作り出すための選択肢がこれまでになく広がります。

 


最後にもう一つだけよろしいですか。
専用呪文といえば、キュービクル7エンターテイメントのサイトに掲載されていたお知らせを思い出したのです。

9月21日の記事によりますと、『Archives of the Empire vol.II(帝国公文書集 第弐巻)』では集団戦のルール、オウガPCの作り方、幾つかの追加キャリアに加えて大食魔術(オウガ独自の魔法体系)が掲載されるそうです。

Empire in Ruins COMPANION(エンパイア荒廃す:冒険の手引き)』についてのお知らせもありまして、冒険の舞台とならなかった他の大領邦では何が起こっていたのか、ゴブリン部族のさらなる紹介、追加シナリオが3本、といった記事が予告されていました。

『Imperial Zoo(帝立動物園)』は、校正を行う書記がグリフォンに襲われて負傷したため、PDFの公開が2021年第4四半期にずれ込みます、というお話も。

ざっとこんなもんだ!

The Horned Rat COMPANION:ウォーハンマーRPG4版

遂に『The Horned Rat COMPANION(角在りし鼠 冒険の手引き)』を入手しました。先日の記事で紹介いたしましたキャンペーンシナリオ『The Enemy Within(内なる敵)』シリーズ第4巻『The Horned Rat』の追加資料集であります。書名から皆様ご明察の通り、ウォーハンマーRPGの世界で悪役を担っている鼠人間の種族、スケイブンを大きく取り上げた設定集となってございます。

感慨深いものです。そう、あれは十一年前のクリスマスのこと、ウォーハンマー第2版時代に邦訳された最後の設定集が『スケイブンの書』でした。

設定資料なら吸血鬼や隣国ブレトニアもあるだろうに、何故にスケイブンの書が邦訳対象に!?と驚きながら読み進めて二度びっくり。ウォーハンマーRPGの舞台となるエンパイアの学者がスケイブンについて調査結果をまとめた書物という体裁で始まり、しかもその内容はスケイブンと戦う際に必要な装備や心構えだけではなく、侵入を警戒するために有用な鼠人の体臭の識別方法まで論じる、濃厚な設定資料集でした。まさしく、 『スケイブンの書』は鼠年の最後を締めくくるのにふさわしい本だったのです。

・・・まあ、2010年は寅年だったんですけどね。

冗談はともかく、『The Horned Rat COMPANION』はキャンペーンシナリオの副読本というだけには留まらず、4版のスケイブンに様々な追加装備を用意するデータ集でもあります。2版時代の『スケイブンの書』と同様の役割を果たしてくれることでしょう。

敵種族に焦点を当てている資料集ということもあり、今までとは若干体裁が異なってございます。

まず表紙の雰囲気が異なります。『Enemy Within』シリーズのこれまでの副読本はいずれも冒険の舞台を描いた風景画が表紙となっています。ところが、『The Horned Rat COMPANION』の表紙に大きく描かれているのは人物、しかも悪役のスケイブンとなっているのです。

さらに、『Enemy Within』シリーズの副読本には毎回、追加NPCのコーナーがありまして、3冊目の『Power behind the Throne COMPANION(玉座の影の権力 冒険の手引き)』以降は構成が変わっているのです。直近の2冊では、登場する他のNPCをどう思っているかを短くまとめた記述がキャラクター毎に設けられるようになっています。

その他にも、これまでの3冊と比べると記事の書き方に共通している箇所、異なる箇所があるのですが・・・、

ここで細かな体裁の話をしていても仕方がありませんね。
話題が逸れ申した、『The Horned Rat COMPANION』の内容紹介を始めましょう。まず皆様が一番知りたがっている件、「スケイブンに関する設定はどのくらいあるのか?」このことについてお答えしましょう。

定量的に申しますと、ケイブンに直接関わる内容が約70ページ、表紙や目次を含めて本書は全126ページですから半分以上がスケイブンについての記事でございます。

冒頭の章はスケイブンの歴史、そしてスケイブン社会の支配階級についての話題。スケイブン社会の頂点に君臨する13人評議会の構成員と役職が判る記述もあります。さらに、『The Horned Rat』シナリオ中での各組織の活動など、特定のシナリオに関する話題が含まれていました。左様、全てのページを設定資料に充てているわけではございません。

確かに、設定に関する記述の詳細さでは『スケイブンの書』に軍配が上がると言えましょう。しかし、ゲーム中に取り込むことが出来るデータの濃度は旧版に引けを取りません。旧版がゲームの雰囲気を盛り上げる設定の紹介に重きを置いているならば、4版はデータ集としての役割を強める方向に舵を切ったものとなっているのです。

ケイブンに限らず他の種族でも使用できそうなデータもまた、幾つもございます。設置式の盾パヴィス、輿に乗って戦うときのボーナス、捕獲用ネットなど、アナタのシナリオでティリアのクロスボウ兵やドワーフの豪族、あるいはダークエルフ人狩り部隊を登場させるときに活用なさってはいかがでしょうか。

『Enemy Within』副読本のシリーズでは必ずNPCデータ集のコーナーがありました。これまでの3冊ではそれぞれ、ベーゲンハーフェンの街の住民たち、ライク河流域で暮らす人々、ミドンハイム上流社会の人々、といったNPCが紹介されています。

『The Horned Rat COMPANION』では第2章がNPC集のコーナーとなっております。何と!掲載されているキャラクター全員がスケイブン、言うまでもなく全員敵。PCに味方するNPCが一人たりとも載っていないとは、ずいぶん思い切ったものです。

下級の鼠雑兵から鼠指揮官、暗殺鼠、疫病司祭など様々なスケイブンのサンプルキャラクターが、所属する氏族の解説に続いて載っています。

旧版でも紹介されている四大氏族に加え、大氏族の下で働く同盟氏族や、四大氏族には劣るものの評議会に議席を持つ有力氏族も紹介されてございます。彼らの力関係を知りたいのであれば、是非とも読むことをお勧めいたします。

いよいよ3章から追加データに特化したページが始まります。まずはスケイブンの武器庫にご案内。当然、新たな武器が続々と紹介されております。シナリオ集『The Horned Rat』で紹介された武器や旧版『スケイブンの書』に掲載された武器のみならず、新たな武器が紹介されており、GMの皆様に様々な選択肢を提供するものとなっております。

特に飛び道具が充実しておりまして、旧版で登場済みのラットリング・ガン、煙玉、狙撃銃、これらはもちろんデータ化されています。加えて、火炎放射器や妖術駆動削岩機、そして携行ロケットランチャーまで用意されています。信じられますか、アイツらファンタジーRPGの世界にロケットランチャーを持ち込んでくるんですよ。

・・・RPGの世界にRPGを持ち込んでくる連中か、深いな。

冗談はともかく、接近戦用の武器も様々なものがございます。格闘用の短剣や万能捕獲機など一般的な武器に加えて、妖刀だの魔剣だのといった類の強力な魔法アイテムも掲載されています。

武器以外の魔法アイテムも充実しており、スケイブンが調合する薬品、魔導技術者の繰り出す装置類、疫病教団の呪文書など、こちらもまた多種多様な内容が示されております。

もちろん、誤射や故障に事故、副作用を判定する表も新たに多数追加。

第4章はスケイブンの魔術データ集。基本ルールブックの表紙にスケイブンが描かれていることからもお分かりの通り、スケイブンは大変に贔屓されております。この度、種族専用呪文が大量に追加されました。専用の初歩呪文、専用の秘術呪文、そして専用の魔法体系が3系統。

ここまで読んだそこのアナタ!「そこまで恵まれているならスケイブンになりたい!」と思いましたね。でしたら、強力なスケイブンの魔術師を捜すのが良いでしょう。あくまで一時的な効果ですが、スケイブンの秘術呪文「Curse of the Horned Rat(角在りし鼠の呪い)」の効果で、アナタのPCもスケイブンに変身させられることが可能です。

・・・ええと、そういうことを言っているのではないと?

ええ、もちろん判っております。お聞きになりたいのは、つまり、その、PCとしてスケイブンを選択できるか?ということですね。それは難しい質問です。

灰色の予言者、妖術師、疫病教団司祭、魔導科学者、といった支配階級にある重要NPCについては、PCと同じ方法でデータを作成する手順が掲載されています。一方でスケイブンの雑兵たちについては、そのような手順が載っておりません。現状あくまで雑兵はモンスター扱いです。スケイブンPCの作成は「出来なくもない」という所でしょう。

第5章は怪物寓話集のコーナー、追加モンスターのデータ集です。両腕を兵器に換装し背中に御者席をボルト留めした強化型ラットオウガなどはいかがでしょう。巨大戦闘獣から小型のものまで、猛獣使いモウルダー氏族が作り出した自慢の怪物が複数載っております。

第6章は詳細な設定のあるスケイブNPC、第7章でスケイブンの謀略の手口、第8章がスケイブンの神を崇拝する人間たちの教団の紹介となります。

従来の『Enemy Within』副読本のシリーズでは毎回、暗黒神を崇める混沌教団が紹介されていました。今回その場所にスケイブンの教団が載っているわけです。ちょっと驚いたこととして、人間社会に入り込んだ「黄色い牙」教団には、数世代に渡って一族が教団員とか、社会的地位の高い教団員とか、そういう構成員も居たのですね。これまでのシナリオには、ごろつきみたいな連中しか登場しなかったので、少々不意をつかれました。

第9章以降、後半の約50ページはスケイブン以外の記述になります。

まずは『The Horned Rat』のシナリオで舞台となる中央山系周辺の地勢について。そして中央山系で遭遇する危険について、危険というのはつまり野生動物や山賊のたぐいですね、それら地域設定の章があります。

中央山系の中にある真鍮砦については別途章が設けられており、数ページにわたり詳細が説明されております。2版やウォーゲーム版のウォーハンマーに触れたことのある歴戦の皆様方なら真鍮砦の名をご存じでしょう。

帝国歴2510年時点の真鍮砦の主についての記事とNPCデータもあり。百五十年近く真鍮砦に滞在しているそうで、挿し絵もありますが外見から年齢を推し量るのは少々難しいですね。大まかにいって基本ルールブック334ページの人物のごとき印象の方です。

『The Horned Rat』劇中で出会う可能性のある、スケイブンと戦っている人物の紹介記事もあります。ついにPCに味方するNPCが登場しました。2名だけですけどうち1名は故人)。

ドワーフ専用の新キャリア「Ironbreakers(鋼砕き)」も掲載されています。頑丈な鎧で防御を固めた山岳王国の精鋭戦士たちです。

アナタのPCがドワーフで、新たにキャラクターを創造するとき、ランダムに選んだキャリアが「衛兵」「兵士」だった場合、代わりに「Ironbreaker(鋼砕き)」を選ぶことを手前は強くお勧めいたします。

と申しますのも、キャリア・レベル1の「Tunnel Fighter(洞窟戦士)」の時点で所持品に全身用板金鎧が含まれているためであります。初期装備品が他のキャリアより明らかに恵まれているのです。

とはいえ問題もございまして、上位のキャリアにレベルアップするには、“グロムリル製の武器または鎧パーツ”が必要という、なかなか御無体な要求がされています。

ですがご安心ください、グロムリルの設定は『Middenheim:City of the White Wolf (ミドンハイム:白狼の都市)』に少しだけ書かれていましたが、この度さらに詳細になった記事が出ました。「Ironbreakers」の次のページに載っています。グロムリルのアイテムの例もあり。

いずれにせよ入手するのは困難極まるアイテムですが、少なくともデータは判ります。それに、もしどうしても手に入れたいので有れば、ミドンハイムに1つだけあてがあるわけですし。

その他にシナリオが3本、うち1本はスケイブン関連のシナリオです。「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」の4版シナリオもあります。ということは当然、“自称世界一の探偵”アルフォンス・エルキュール・ド・ガスコーニュも登場、NPCとしてのデータも載っています。ウォーゲーム版ウォーハンマーにも登場する巨大モンスターを扱うシナリオもあり。

ざっと、このような内容です。

シナリオにスケイブンを登場させたいGMにとって実に使いでのある資料であり、そうでないGMが読むとたちまちシナリオにスケイブンを登場させたくなる、そのような追加サプリメントでした。

考えてみますれば、4版でも既に様々な追加資料が出版されています。主なものだけでも、大都市の設定本が複数、街道旅や船旅そして商取引のルール、幾つかの混沌教団、エンパイア領内で暮らす種族たち、話題は多岐に渡ります。

とうとうスケイブン設定集が出てしまったのですから、この後さらに語り得る話題がどれほど残っておりますでしょうか。まだ取り上げられていない設定はせいぜい・・・、

追加の武器データ、モンスター図鑑、ルーン魔術を含む新たな呪文データ集、殺戮の神カインを始めとする神々の設定本、吸血鬼設定集、キャリア全集、騎士道国家ブレトニア、氷の女王が治める地キスレヴ、辺境ボーダー・プリンス、遺跡探検の手引き、大砲と芸術の街ナルン、森の目タラブヘイム、貿易都市マリエンブルグ、混沌四大神の残る二柱コーンとナーグルを扱ったサプリ・・・、

まだまだ話題は沢山ありました、一安心。

そこでキュービクル7エンターテイメントのサイト7月7日の記事を振り返って、今後の出版予定を見てみますと、
・『Empire in Ruins(エンパイア荒廃す)』
 今年の第3四半期にPDF発売、書籍は来年第1四半期予定の『The Enemy Within(内なる敵)』キャンペーン最終章。
・『The Imperial Zoo(帝立動物園)』
 第3四半期にPDF発売予定。追加モンスター集。帝都アルトドルフの帝立動物園のみならず、オールド・ワールドに今も生き残るドラゴンやティリア海の巨大海獣など、エンパイアの国境を越えて様々な怪物を紹介。

ここまでは、従来のニュースと同様。

加えて、『The Enemy Within』キャンペーン終了後の予定についての記載があり。それによりますとプレイヤー向けの本が2冊計画されており、うち一冊は追加の魔法データ、もう一冊が装備品についての書籍となる模様です。

種族紹介についてのさらなる企画があり、エンパイアの国境を越えての異国の記事も予定。

『Archives of the Empire vol.II』では、エルフ、ドワーフ、ハーフリングに加えてオウガも紹介。『vol.III』と題したPDFのみ出版のちょっとした拡張データや、既に設定資料が出ている大都市アルトドルフやミドンハイムを舞台にしたシナリオも企画中。

ざっとこんなもんだ!

 

Cluster Eye Tribe:ウォーハンマーRPG4版

前回の更新から一ヶ月が経過しました、皆様いかがお過ごしでしょうか。手前はと申しますと、『Horned Rat COMPANION(角在りし鼠 冒険の手引き)』がまだ発売されていないので、過去に出版された追加サプリを読み直して心を静めているところであります。

『Middenheim: City of the White Wolf(ミドンハイム:白狼の都市)』掲載の魔法アイテムがいつの間にか価格改訂されているのに気付いたり、『Archives of the Empire vol.1(帝国公文書集 第一巻)』のウッド・エルフに関する記述で『ウォーハンマー40K』のエルダーの設定と共通する箇所を探したりと、そうして日々を過ごしています。

そんなとき、ついに追加資料『Cluster Eye Tribe(百眼族)』の販売が始まったのです。ウォーゲーム版のウォーハンマーにも名前が登場するフォレスト・ゴブリンの有力部族が紹介されている待望の一冊、早速入手いたしました。

何故ゴブリンの追加データが待望の一冊なのか?とても良い質問です。

思い起こせば2版時代、混沌の暗黒神や吸血鬼、そして鼠人間スケイブンの設定まで出版されているのに、オークとゴブリンの追加設定本はとうとう作られずに展開が終了してしまいました。

エンパイアの人民が最も多く遭遇する種族は何か?そう、もちろん・・・人間ですね。

えーと、エンパイアの人民が最も多く遭遇するモンスター種族であるにも関わらず、オーク&ゴブリンの公式資料が少ないことを嘆いていたそこのアナタ!ついにフォレスト・ゴブリンの追加データ集がPDFで出版されました。

フォレスト・ゴブリンは基本ルールブックでも少しだけその存在に言及されており、森に生息する巨大グモを飼い慣らして乗騎や番犬として利用しているゴブリンの亜種であります。

彼らの特徴として、蜘蛛神を崇拝する習慣を持っていることが挙げられます。一般的にオークやゴブリンは、双子の神モルクとゴルクを崇拝しています。“喧嘩がマジで強ぇ上に頭も切れる”モルクと“頭が切れる上に喧嘩もマジで強ぇ”ゴルク・・・、逆だったかな?どちらがどちらだったか手前には区別が付かないのですが、オークたちにも区別は付いていない模様です。とにかくまあ武力と知恵を象徴する神々であることを知っていれば基本的な情報としては十分でしょう。

一方でフォレスト・ゴブリンは、森の深奥部で遭遇した大蜘蛛を神の使いとみなして崇拝するようになり、巨大な蜘蛛を乗騎として森を駆け、蜘蛛から採った毒を矢に塗って襲撃を行う、まさに蜘蛛づくしの連中であります。

『Cluster Eye Tribe』の主な内容は、フォレスト・ゴブリンの能力値、百眼族の実力者達のデータ紹介、百眼族が用いる戦術と襲撃部隊の編成、加えてその他追加情報が幾つか。

これだけでもまあまあ十分な設定集ですが、しかし何と言ってもこの追加サプリの目玉は「Creature Advancement Template(クリーチャー強化テンプレート)」でございましょう。

たとえばシナリオに登場させるオークの族長をデザインするときを想像してください。どのようにキャラクターを作成していましたか?

オークは大柄なほど地位が高いのでクリーチャー特性の<デカい>を追加して、もちろん<精鋭>と、リーダーだから<統率者>も追加して、技能を幾つか成長させ・・・、

あるいは「山賊王」のキャリアに沿って、オークにふさわしい異能と技能は残し、そうでもない技能は削って、装備しているアイテムを入れ替え、アイテムに合わせて習得する武器の技能を変更し・・・、

いずれも、それはそれで楽しいかもしれません。でも、結構手間がかかります。

『Cluster Eye Tribe』8ページに掲載されているテンプレートを基本ルールブック記載の一般的なモンスターに当てはめれば、ちょっと強いザコから中ボス、さらにはエンパイアの英雄達に匹敵するラスボス級の悪役がすぐに出来上がります。少しばかり計算してみましたところ、経験点換算で1500exp弱から15000exp以上まで、幅広い強さのNPCを簡単に作成可能!

このテンプレートがあれば悪役の幅は大きく広がります。イノシシに乗ったオークの射手、ミノタウロスのシャーマン、スケイブンの大将軍、オウガの暴君に至るまで。

とはいえ、テンプレートでの強化そのままでは異能の数でウォーハンマー世界の英雄達に水をあけられています。そこはキャラクターの個性に合わせて、適切な異能やクリーチャー特性を追加して強さを調整することで、GMそれぞれの工夫を凝らしていただければよろしいかと。『Enemy in Shadows COMPANION(影に潜みし敵 冒険の手引き)』をお持ちであれば、四大神それぞれに対応した混沌変異を与えてみるもの良いかもしれません。

というわけで、今回は獣王やオーク大族長、はたまた蜘蛛神の大神官をたちまちのうちに作り出すことができるGM必携の追加資料『Cluster Eye Tribe』の紹介でした。

The Horned Rat:ウォーハンマーRPG4版

ケイブンがせめてきたぞっ
冗談はともかく、5月19日のキュービクル7エンターテイメントの記事によると、『The Horned Rat COMPANION(角在りし鼠 冒険の手引き)』PDF販売開始まで数週間となっていました。ところが、最近更新された商品説明のページでは“PDFは2021年第3四半期の上旬予定”となっておりました。何と申しますか手前大いに意気消沈しております。皆様いかがお過ごしでしょうか。

手前はと申しますと、少しでも気を落ち着けるため最新の第四版シナリオ『The Horned Rat』を読み始めたのであります。

『The Horned Rat』は全5巻からなるキャンペーンシナリオ『Enemy Within(内なる敵)』の4冊目となります。商品説明のページによりますと、“登場人物達はこれまでの冒険で遭遇したことのない、遙かに巨大な脅威まで導かれることだろう”とまあ、大体そのようなことが書かれております。

原語版ではこれまで、『Ubersreik Adventures(ユーベルスライクの冒険)』シリーズや『Rough Nights and Hard Days(日夜是騒乱)』、もちろん『Enemy within』キャンペーンなど複数のシナリオ集が発行されています。PDFのみ販売されている単発シナリオやシナリオフック集も複数ございます。

これまでにもシナリオの展開によってはエンパイアの大都市が丸ごと壊滅する(で、街がどのように破壊されていくかシナリオに細かく書かれている)というものもありました。これより規模が大きい冒険はそうはありますまいと、手前は頭から決めてかかって読み進めていたのであります。

ところが何とまあ『The Horned Rat』では、カール・ストロンバーグかヒューゴ・ドラックスのような、滅多矢鱈とスケールのでかい輩が登場するのです。近年すっかり珍しくなってしまったタイプの悪役です。これまでの悪人達の、暗黒神と契約して大金持ちになるとか、宮廷で権力を握るだのといった野望が小さく見えてきます。

例示した悪役の名前から察した方もいらっしゃるかもしれません。『The Horned Rat』は、世界的に有名なある映画シリーズを元ネタにしているのです。登場する固有名詞にくれぐれも注意してくださいませ。

ウォーハンマーRPG』におけるプレイヤーキャラクターは市井の人々で、ルールブックに載っているような歴史的大事件に巻き込まれたならば、何とか生き延びて逃げ帰るのがせいぜい・・・、だと思っていました。

今回発売された『The Horned Rat』は『ウォーハンマーRPG』でも壮大なスケールの冒険が出来るのだと、その事を教えてくれたのです。

さて、シナリオ以外に記載されている内容といたしましては、
・スケイブンの襲撃部隊を登場させるときに使える基本的な能力値
・スケイブンの拠点に忍び込んだときの警戒状況と遭遇の判定
・新たなNPCのデータ、これまで登場したNPCの何人かのデータ再掲も有り
ワープストーン兵器に関する幾つかのデータ

などといったところです。特に最後の一つは有難いですね。ミドンハイムやアルトドルフの追加資料に掲載されているスケイブンがデータの判らないアイテムを所持していましたが、今回その問題が解決したわけです。

他にも興味を引いたものを挙げると致しますと、NPCであればキスレヴ騎兵の隊長がデータ化されていること、でしょうね。キャリアとしての設定はされていませんけれども、まあエンパイアの銃騎兵とは若干能力が異なるなと、手前そのように思ったわけです。

さらに、これまでのサプリメントではスケイブンの四大氏族のうち三氏族しか幹部級の人材が登場しておりませんでしたが、今回ついにエシン族の暗殺頭領の一人が姿を現しています。あまり設定は掘り下げられていないものの、スケイブンに忠誠を誓う秘密教団の構成員も扱われていました。

注目すべき新アイテムはやはり何と言ってもスケイブンの妖術駆動削岩機(ワープ・グラインダー)。硬い岩盤もあっという間に砕いてしまう驚きの性能で、使用するだけで堕落点がみるみる溜まっていくステキな逸品です。

発売予定の商品説明のページの話題に戻りますと、「黄色い牙」教団の設定、スケイブンの専用異能、角在りし鼠の魔術、スケイブンの魔導技術に関する詳しいルール、等々は『The Horned Rat COMPANION』に掲載される予定ということです。

Altdorf:Crown of the Empire:ウォーハンマーRPG4版

ようこそアルトドルフへ。帝国領内最大の大河ライク河そしてタラベック河が合流するこの地・・・、より正確に言い直しましょう。オールド・ワールド全土で最大の2本の大河が交わるこの地こそ、まさしく交通の要衝であり、古く神君シグマー公の御代から続く文化の交差点でございます。

4版スターターセットのユーベルスライクから参加したお客様は、トイフェル河を経由してライク河を通り遠路はるばるいらしたものかと思います。あるいはベーゲンハーフェンからベーゲン河そしてライク河のコースと言ったところでしょうか。

本船はまもなく目的地であるアルトドルフに入港いたします。甲板から見えますひときわ高い建物は皆様ご存じの通り、皇帝カール・フランツⅠ世陛下のおわします帝国宮殿でございます。さらにその向こう、壮麗なドーム屋根が日の光を反射して眩しく輝いており・・・、ませんね

本日は霧が少々出ておりますので、目に優しい程度にぼんやりと輝いております。あの巨大なドーム屋根の建物こそが、エンパイア統一の象徴にして帝国の礎、シグマー教大神殿でございます。

この霧もアルトドルフ名物でございまして、『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』8ページの「霧と悪臭表」を用いて状況を決定することができます。

この街の名物は数多くございます。百件酒場通りを飲み歩くも良し、ケーニヒス広場の歴代皇帝像やカール・フランツ公園を見物して回るのも良いでしょう。お土産でしたらこの街最大のチーズ専門店、チーズ・オブ・エンパイアに向かわれるのはいかがでしょう。

魚市場の仮設舞台から帝立劇団まで、文化都市であるアルトドルフには街のあちこちに劇場がございます。手前のお勧めはフォルクスオーパー・アルトドルフの「荒野のスヴェン」。エキゾチックな舞台、個性的な登場人物が織りなす魅力的な筋書き、人気俳優揃い踏みのキャスティング、手に汗握る終盤の見せ場。文句の付けようがありません。

演劇の殿堂劇場の新作が意欲作であることは認めますが、タラダッシュの原作の意図を違えていると思うのです。「カラク=カドリンの虜囚」はアルトドルフ劇場で現在上演中、古典に範を取った手堅い作りで、余分な演出をそぎ落とした通の観客向けの洗練された作品です。

下船の際はガイドブックをお忘れなく。幽霊が出ると噂のケーニヒスヴァルド宮は帝国博物館のすぐ隣、したがいまして観光にうってつけのコースです。帝国博物館へ入館の際は服装にご注意ください、守衛に止められるおそれがございます。帝立動物園の案内図はガイドに載っておりませんので、現地で別途購入願います。縛り首見物の際はスリ置き引きの類にくれぐれもご注意を。

それではもう一度、ようこそアルトドルフへ!

エンパイア最大の都市、帝国の首都アルトドルフの設定資料『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』PDFが販売されております。皆様もうご覧になりましたでしょうか。ミドンハイムに続いて二冊目となるエンパイアの大都市のガイドブック、その内容をざっと見て参りましょう。

これまでの追加資料集と同じく、最初にその土地の歴史と年表が設けられています。続く章では政治体制について。現在の統治者の家族構成、宮廷の実力者達、政治力を持つ団体と徐々に説明範囲が広がっていきます。その後エリアガイドが始まりまして、地区の紹介の冒頭には都市の入り口で出会う人々が例示されます。宿屋や主要な通りといった内容に続き、いよいよ各地区の紹介記事。一通り地域の紹介が終わると、城壁の外にある物事の紹介記事、城壁の中に潜む脅威を案内し、最後に付録のページ、といった構成。

この構成は『Enemy in Shadows COMPANION(影に潜みし敵 冒険の手引き)』『Middenheim: City of the White Wolf(ミドンハイム:白狼の都市)』『Archives of the Empire vol.Ⅰ(帝国公文書集 第一巻)』、あるいは基本ルールブックの 「第Ⅹ章 荘厳なるライクランド」と同じです。

しかしながら、その規模が違う。まさにエンパイアの帝冠、オールド・ワールド最大の人口を誇る大都市、神君シグマーに祝福された都、洗練された文化の中心地、霧と悪臭と暴動の街アルトドルフ!

冗談はともかく、表紙を開いて最初の見開きページからして、今までとひと味違います。

冒頭の見開きではページを丸ごと使ったイラストに添えて、一方のページでその土地を持ち上げる文章が掲げられ、見開きの反対側で相反する冷徹な意見が述べられる、というのが基本ルールブックの頃から続くお約束でした。

基本ルールブックではどうだったか見てみましょう。一方のページでエンパイアがいかに強大な国であるか、国境を守る軍隊の士気がどれほど高いか、名君の政策が国を富ませており、農村部はいかに穏やかで、都市の暮らしがどれほど希望に満ちているかを書いています。

反対側のページでは、国境近くの砦は孤立無援で危険な状態にあり、貿易の主導権は他国に握られており、村落に暮らす人々は非常に排他的で、貧富の差が果てしなく広がる都市部は絶望的な状況である、と逆の意見が述べられます。

『Middenheim: City of the White Wolf』でも同じように、文化的で寛容な国際都市ミドンハイムを持ち上げる文章がまず掲げられ、対となる言い分が反対側のページに載っています。

『Altdorf: Crown of the Empire』で描かれるアルトドルフはどうでしょうか?

最初にアルトドルフで暮らす人の愚痴が示されます。曰く、混沌の荒れ地よりもむかつく場所である。この都市は国をむさぼっているのだ。悪臭と濃い霧が毎朝河から立ち上ってきており・・・、云々。

普段と逆に、非難が前で賞賛が後になっているのです。それでも、住民のお国自慢が前者、客観的な意見が後者という姿勢は不変のようです。
つまり、そういうことです。

最初の章はアルトドルフの歴史。エルフとドワーフの文明が頂点を極めていた先史時代、ウンベローゲン族が定住した古代史上の出来事、エンパイア建国後の数々の歴史上の大事件、そして数ページの年表となります。

アルトドルフの歴史はライクランドの歴史と密接に結びついておりますので、ルールブックなどで既に述べられた内容と重複している記述もございます。

年表を見てみましょう。以前の記事でも手前は述べておりましたが、過去の版に比べて第4版ではウォーハンマーの小説シリーズからの引用が多く登場しています。

年表の最近の部分だけでも、窓税暴動、ケーニヒスヴァルド家の断絶、霧の大暴動、といった、小説の内容と関わる事件が掲載されています。

次の章では、支配者層の紹介。年表の次に統治機構という構成も、これまでの追加資料集と同じです。

皇帝カール=フランツ・ホルスヴィッヒ=シュリスタイン陛下から始まり、そのご家族の紹介。挿絵には陛下と並んでルイトポルト皇子が描かれております。手前、皇子の姿が公式の資料に掲載されているのを初めて見ました、父君にそっくりですね。

後ろに控えている個性的な髭の厳めしい人物こそ、皇帝筆頭剣士ルートヴィッヒ・シュワルツヘルムその人であります。

以降のページで示される廷臣の人数といい、その地位や役職の多様さといい、エンパイアの首都にふさわしいものでございました。人類の盟友であるエルフとドワーフも、アルトドルフの宮廷に大使を送り込んでおります。シグマー教の教義によって統一を維持しているエンパイアはドワーフ諸王国との外交を重視しており、アルトドルフのドワーフ長老のみならず、各山岳王国の大使が帝国の首都に滞在してございます。

アルトドルフに置かれた三つの議会の紹介があり、それぞれライクランド州議会、ライクランド参事会、アルトドルフ市議会となります。ライクランド参事会につきましては、既に基本ルールブック「Ⅹ章 荘厳なるライクランド」で紹介済みですね。

この章に載っているとりわけ重要なNPCは何人も、それはもう沢山掲載されているのですが、一人だけ挙げるなら何といってもやはりサイラス・ゴルマン師。帝立魔法大学校を束ねる最高主席魔術師であり、つまりエンパイア最強の魔法の使い手だということになります。

来歴とNPCとしてのデータが載っているだけでなく、携えている数々の魔法アイテムもデータ化されています。最高主席魔術師の象徴である「ヴォランスの杖」のみならず、「火焔の杖」「輝きの剣」など幾つもの強力な魔法アイテムで武装しています。

アナタの冒険シナリオでこれらのアイテムを使ってみたいですか?丁寧に断りを入れて一時的に借りるのはいいですが、無断で持ち出すのはいけません。もし無断で持ち出す者がいたら、「探し出して即刻火刑にする為に全力を傾ける」と書いてあります。帝国最強の魔術師が「全力を傾ける」のです。手前はそういう目に遭うのは御免被ります。

他にも、「ベルベットビースト」で民衆からの憎まれ役となり、「ユニコーンの角」では悪役を担った、帝国財務省長官モルナン・ティバルトに1ページを割いています。イラストもこれがまた何とも陰険そうな、いかにも悪人面ですね。意外というかあまり意外でも無いというか、後々彼の足下を危うくする秘密も書かれています。

遙か東にある大帝国の首都、江京からアルトドルフに赴任したキャセイ大使にも同じく1ページ。前任者に負けず劣らずの謎めいた人物のようです。

Ⅲ章からいよいよアルトドルフの街

都市の入り口から話が始まります。街道旅のガイドブック『Enemy in Shadows COMPANION』では関所の管理人である街道巡視隊員、ミドンハイムのガイドブックでは市門の警備兵、その土地を訪れたときに最初に出会う人々がエリアガイドの章の最初に例示されます。アルトドルフの街を訪れたときに最初に出会う人たちはどのような方々でしょうか?

波止場ギャング「魚団」「鉤団」の構成員と幹部。あー、そうっすね。アルトドルフに入港すると、最初に会うのはこの人たちだわ。何か『マッド・マックス』に出てきても違和感が無さそうな人たちですね。

ウォーハンマーの小説「ベルベットビースト」で名前が挙がっていた鉤団のボス、ウィリー・ピックのNPCデータも載っています。

霧と悪臭と暴動の街アルトドルフ、「霧と悪臭表」が本書8ページに載っていることは既にお話ししましたので、残るは暴動。先年発生いたしました霧の大暴動事件で瓦解した革命団体は複数の派閥に分裂しており、それぞれ異なる動機と目標で活動を続けている模様です。

ギャングと暴徒を紹介するコーナーに、貴族のどら息子が集まるカール=フランツ盟友会も掲載されています。各々の団体が皆バラバラに活動しているため、それらを束ねて帝国を覆そうとする混沌教団の陰謀はなかなか進んでいないようですね。

Ⅳ章はアルトドルフでの生活に関する記事が続きます。

祝日と娯楽。アルトドルフの主な祝日の解説があり、日常の娯楽を紹介しています。娯楽の種類につきましては、その日何をして過ごしたかを決める表がございます。
真鍮級向けには「日々の憂さ晴らし表」、白銀級に「余暇の過ごし方表」、そして黄金級の「有り余る時間と富を如何にして楽しむか表」となっており、NPCの行動をランダムに決めたり、アナタのPCが余暇をどのように過ごしているか(あるいは日々の憂さをどう晴らしているか)を描写するのにお役立ちのコーナーであります。

宿屋と下宿。アナタのご住所がアルトドルフであったり、ご親戚が在住というならともかく、そうでないなら住む場所も必要でしょう。アルトドルフ最高のホテル「グランド・インペリアル」から最低の木賃宿まで、宿泊施設の典型例と価格帯、そこに滞在するとどのようなことが起こるかの例が示されています。

橋。アルトドルフは橋の街であります。エンパイア全土を流れる二つの大河の合流地であり、両方の大河に架橋できる唯一の都市なのです。

他の都市であれば、主要な橋が一本あれば名所として都市ガイドに載ることでしょう。アルトドルフはどうか?蒸気駆動の跳ね橋や、魔法大学校によって架けられた魔法の橋、歴史ある複数の橋がこの章に掲載されております。

Ⅴ~Ⅶ章がアルトドルフ市街各地区の紹介
街の区画を南岸、東岸、北部に分けてそれぞれ章を設けています。

政治と文化の中心となる南岸地区には貴族の邸宅や文化施設が立ち並び、もちろん帝国宮殿とシグマー教大神殿もこの地区に建てられています。

イースト・エンドと呼ばれる東岸は港湾労働者と商店が集まる経済の中心区域。場所によっては治安が行き届いておらず、不穏な噂が囁かれる場所でもあります。一方で中央市場やドワーフが多く暮らす鍛冶屋街などアルトドルフに不可欠な地区でもあり、高名な帝立技術者大学校もこの地区に位置します。

ドワーフの鍛冶屋街については、後の章で別に項目を設けているので、そちらも目を通して下さいませ。

北岸は学生街、エンパイア最高学府の一つアルトドルフ大学や、ウルリ・フォン・タッセニンク宗教学校の所在地です。魔力を見る力を持たない者はその場所さえ知ることができませんが、帝立魔法大学校もこの地区にあります。

地区の解説は3つだけですかと肩を落としているそこのアナタ!もう一度見て下さい、「章が」3つなのです。各地区の内容はさらに細かいセクションに分かれており、Ⅴ章南岸地区には16のセクション、Ⅵ章東岸地区には7つのセクション、Ⅶ章北部地区には10のセクションが設けられております。

各セクションごとに(章ごとにではなく!)多ければ10もの名所紹介があり、これだけでもいくつもの冒険の舞台が作れます。膨大なシナリオフックがこの本には納められているのです。

シティガイドは145ページにも及びます。どれほどの規模かと申しますと、『Middenheim: City of the White Wolf』におけるミドンハイムのシティガイドが75ページですから大体倍くらいですね。あるいは『Enemy in Shadows COMPANION』の全ページ合わせても128ページですから、まあとにかく大変なページ数です。

本書には数々の名所旧跡に名店、シナリオフックがふんだんに盛り込まれております。

「吸血鬼戦争ふたたび」でジュヌヴィエーヴが暴徒に襲撃されたケーニヒス広場、この場所にある歴代皇帝像を巡るシティ・アドベンチャーを繰り広げたいそこのアナタ!ピッタリのシナリオフックが掲載されています。

「ウォーホーク」事件の際にダーティ・ハラルドが大立ち回りを演じた百件酒場通りを飲み歩きしたい飲兵衛のアナタにはうってつけの、「百件酒場の梯子酒」リストもあります。常連客の客層も判ります。警備隊行きつけの<青角灯>、吸血鬼が潜んでいると噂される<三日月亭>、荒くれ者が集う<不機嫌な騎士>、様々な酒場が並んでいます。

他にも幾多の冒険があなたを待っています。旧波止場の怪談の正体を突き止める冒険も良し、イェーガー侯にばったり出会って幸運を授けてもらうのも良いでしょう。ベーゲンハーフェンの波止場ギャング黒鱒団のアルトドルフでの活動を調査することもあるかもしれません。

NPCも大勢載っています。波止場警備隊長ハラルド・クラインダインスト、心霊捜査官ロザンナ・オフュールス、帝国大元帥クルト・ヘルボルグ、過去のウォーハンマー関連作で登場した有名人がデータ化されております。あるいは、アルトドルフ随一の怪盗、蒸気駆動の義手を装着した海軍士官、犯罪王兼魔女、アルトドルフ大学学長。このように、地位も役割も階級も多様なキャラクターが載っています。

データ化されているということは…、お察しの通りマグニン投げナイフやオフュールス捜査官のサイコメトリーをルール的に再現することも出来るようになりました。

帝国大元帥の所持するソランド領のルーンファング、エンパイアでもっとも切れ味鋭い剣、第4版でのルール上のデータもこの度初めて明かされました。

残念な点として、帝立動物園や魔法大学校の内部詳細は掲載されていないことを挙げます。これらは今後発売される『Imperial Zoo(帝立動物園)』『Winds of Magic(魔力の風)』に期待ですね。

霧と悪臭の街と何度も申し上げておりますので、察した方もいらっしゃるかもしれません。アルトドルフは大都市でございまして、排水が問題となっているわけです。

ライク河タラベック河両大河の合流点に街が築かれておりますので、街の大部分は軟らかい土の層の上に乗っております。強固な岩盤は宮殿の土台部分など限定された場所に限られており、地下トンネルを掘るのが難しい土地なのです。

そうです、アルトドルフはスケイブンが拠点を築くのに向かない都市なのです。

駐屯軍司令バールックス指揮下の地下陣地の規模は、地上の都市に比較すると小規模なものに留まる模様です。

次の章で少し目を城壁の外に移してみますと、牢獄として使われているマンドセン城塞や、ブルシュテリン教授の墓、帝立技術大学校の射撃練習場など、これまでのウォーハンマー関連小説で登場した場所がいくつか示されていました。

都市の城壁の内側に潜む危険についても語る章があります。
革命団体やギャング団をもうⅣ章で取り上げてしまっていますが心配はご無用、第Ⅹ章ではアルトドルフ社会で暗躍する数々のスパイ組織が紹介されています。

帝国の情報機関は有力な組織ですが、皇帝は別に直属のスパイも召し抱えています。ミドンハイムのトッドブリンガー家だけでなくエンパイアの各地の貴族が諜報員をアルトドルフに送り込んでおり、灰色の学府やシグマー教団の隠密修道会も活動しています。ブレトニアの無貌団、キスレヴのチェキスト、マリエンブルグ、ウルサーン、ドワーフの山岳王国、果てはナーガロスに至るまで世界各国のスパイが集結しているのです。

混沌教団だって負けていません、これまでの追加資料で紹介された数々の混沌教団のアルトドルフにおける活動状況、そして新たな混沌教団の紹介が第ⅩⅠ章に掲載されています。混沌ではないものの活動が禁止されている組織も掲載。

付録のページは、アルトドルフでの冒険外活動についての追加ルールとなります。
基本ルールでも紹介されている冒険活動の拡張ルールもあれば、新しく追加された判定もあります。
魔法アイテムの鑑定方法、シグマーの聖地に詣でて「原罪点」を下げるための巡礼ルール、デトレフ・ジールックのような才能ある劇作家に投資するための冒険外活動、といったものです。

さて、アルトドルフ観光はいかがだったでしょうか。
ケイブンの脅威が思っていたほどではなかったので、『Horned Rat(角在りし鼠)』でケイブンが強化されるまでの間は、少し安心できそうです。