無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Winds of Magic:ウォーハンマーRPG4版

ンジャー’サク’ルジンバール ティーンチ!(“歪みを作りし者”ティーンチ万歳!)
失礼、つい興奮して叫んでしまいました。
ウォーハンマーRPG第4版の新サプリメントWinds of Magic(魔力の風)』が遂に発売されたのであります。その名前の通り魔法に関する追加データ集でございますので、第2版の『魔術の書:レルム・オヴ・ソーサリー』に相当するものとなります。

単なる追加呪文や追加アイテムのデータ集と想像している方もいらっしゃるかも知れません。さにあらず、『Winds of Magic』にはウォーハンマー世界の設定に深く関わる内容が記述されています。しかも、それらの設定は単なる読み物として提示されているのではございません、ゲームで扱うために必要な各種のルールと併せて掲載されているのであります。

これまでWFRP第4版で何冊もの追加資料が発行されております。しかしながら、『Winds of Magic』に掲載されている情報量はとりわけ頭抜けたものでした。

付け加えておきますと、従来の追加資料と比べて情報が整理されております。したがいまして、必要な情報を探し易くなってございます。

本書は全部で十五の章に分かれております。内容を見て参りましょう。

最初の章で描かれておりますのはウォーハンマー世界における魔法の歴史でございます。

神話時代の“古き者”の到来、先史時代に起きた混沌の襲来、エルフ王国の衰退、エンパイア建国期の古代における魔術禁令、中世の三皇帝時代に魔術師を保護したミドンハイムの狼皇帝、二百年前の帝立魔法大学校設立とその後の騒乱、現在のエンパイアにおける魔術の現状まで。長大な歴史を整理して概要を述べています。

さて、手前が冒頭にて『変容の書』の言葉を引用致しましたのには理由がございます。ウォーハンマー世界における魔法とティーンチ神は切っても切れない縁があるのです。

遙か昔、兄弟神との争いでティーンチ神が深手を負ったとき、その力が細かな欠片となり地上に散らばっていった、これが魔法の起源である。斯様な神話が『Winds of Magic』で語られています。

ウォーゲーム版のウォーハンマーに触れたことのある諸賢はご存じの話と思います。既に知っていたという方は挙手くださいますでしょうか?

・・・魔狩人さん、あいつです。

冗談はさておき、先程の神話は禍つ神々を崇める北方人たちの伝承であり、エンパイア領内では異端思想とされるものでございます。迂闊に口にすると魔狩人に目を付けられるやもしれません。お気をつけくださいませ。

この章には、ルールブックの年表に載っていた幾つかの歴史的事件の話題も取り上げられています。

Winds of Magic』では、完全に読み物に特化したページは第一章のみ。以降の章には必ず何らかの追加データ、もしくは再録データが掲載されてございます。

第二章は、魔法の行使についてのルール各種。再掲も有れば調整が入ったルールも有り、もちろん全く新しいデータも取り扱ってございます。

魔法具材や超過発動、戦闘における接触呪文、射撃呪文の扱いなどゲーム上の魔法の扱いが一通り揃っております。

この章の最初の見所は誤発動表でございましょう。

何故かと申しますに、魔法使いが呪文の誤発動を起こしたとき【秘術の印】の影響を受ける新ルールが追加されているためであります。

ウォーハンマーの世界における魔法使いは徐々に自らの扱う魔法体系を体現する存在へと変わっていくものでして、例えば炎の魔術師は激し易い性格になり、金属の魔術師は動作が堅くぎこちなくなり、死の魔術師は徐々に骸骨めいた容貌へと変わっていきます。本書をもって、第4版でもそのことがルールに反映されたのです。

多くは不利な特徴となるものですが、《樹上性》のクリーチャー特徴を得るとか、金属の価値が直観的に把握できるようになる、等のようにキャラクターにメリットをもたらすものもあります。

ロールの出目によっては《ウルグの覆い》等の異能を獲得することもございます。

いかにも、『眠れぬ夜と息つけぬ昼(Rough Nights and Hard Days)』で追加された新種族ノームが持つ異能、《ウルグの覆い》と同じものです。

《ウルグの覆い》異能の持ち主は、影の魔法体系の呪文を扱う際にボーナスを得ることができます。それだけではなく、〈魔風交信:影の魔法体系〉技能で〈隠密〉の判定ができるようになります。

Winds of Magic』では、《ウルグの覆い》と同様の強力な異能が八大魔法体系それぞれに設けられているのでございます。

第二章には新たな秘術呪文も追加されております。
フェンビーストの強化、敵の発動する魔術の妨害、使い魔の強化、などのサポート的な呪文が幾つも載っています。

ということはつまり・・・、〈直観〉テストに成功したそこのアナタならば察しがついていることでしょう。フェンビーストや使い魔の作成ルールも掲載されているのです。

そう、アナタの魔術師PCも、頼りになる護衛や相棒となる使い魔を作り出せるようになりました。

魔法被造物のデータは第十三章にまとめて掲載されてございます。すぐに該当ページを開きたい気持ちは分かりますが、まずは第二章の残りのページに目を通してくださいませ。

使い魔の創造には儀式呪文を用いることになりますので、まずはそのルールを確認する必要がございます。

第二章では新たな呪文様式として儀式呪文のルールが掲載されています。そして各種儀式呪文のデータ、例えば強力な魔法アイテムを作り出すものや魔法被造物を作り出す儀式呪文、が続きます。

追加の秘術呪文は特定の魔法体系に属してはおりませんので、似非魔術師や魔女あるいは暗黒の魔術師にも修得可能です。儀式呪文は種類によりますが、多くは魔法体系に関わらず修得できます。

Winds of Magic』掲載の新たな呪文のルールを導入することで、冒険シナリオに様々な要素を加えることができると手前は確信してございます。

第三章では追加キャリアが紹介されております。
典礼(Beadle)、名称は仰々しいですが役割としては大学職員であり、能力は衛兵が元になっている戦士系のキャリアです。

なぜ大学職員が戦士系のキャリアなのか説明が必要ですね。『Altdorf: Crown of the Empire(アルトドルフ:エンパイアの帝冠)』で語られているとおり、アルトドルフ大学や帝国博物館は州軍や市警備隊とは別に独自の警備組織を編成しております。

何故独自の警備隊が必要なのかご理解いただくには、エンパイアの代表的な大学を例に挙げると解かり易いでしょう。帝立技術者大学校、ナルン砲術学校、帝立魔法大学校、いずれもエンパイアで最も強力な兵器の数々を管理している機関です。それ故に、スパイや盗賊あるいは内部で生じた危機に対処できる専門的な警備兵が必要となるのです。

アルトドルフ大学は別に危険ではないだろうですって?とんでもない!学生の多くが貴族子弟であるということは、彼らが何かやらかしても市警備隊では手出しできないということであります。このようなわけで、エンパイアの大学は自前の警備チームを持つ必要があるのです。

次に紹介いたします新キャリアは形而下錬金術(Mundane Alchemist)、魔術師ではなく薬剤師の一種と位置づけられています。医療の知識は薬剤師ほどではありませんが、その代わりに魔法に関する造詣が深く、上級キャリアになると初歩的な呪文も使えます

予見者の一種として幻視者(Scryer)が登場しました。基本ルールブックの予見者と持っている異能や技能は似通っていますが、予見者は未来を見通す力を持つのに対し、幻視者は過去に起きた出来事を見ることが出来ます。つまるところ、小説『ベルベットビースト』に登場した心霊捜査官ロザンナ・オフュールスのようなサイコメトリー能力者のことを指しています。

監察魔術師(Magister Vigilant)はその名の通り、魔法大学内部に設けられた監察組織のメンバーです。暗黒の魔術の影響を防ぐために活動しており、いわば魔法大学内の魔狩人の役割を担っています。

新キャリアのキャラクターが使うことのできる新技能や、これまでのルールで紹介されてきた技能の新たな使い方も第三章に載っています。

『Altdorf: Crown of the Empire』で紹介されていたサイコメトリー技能も、幻視者のキャリア紹介に伴い再掲されています。

託宣についても新たなデータが紹介されています。予見者や占星術師以外のキャラクターも未来を知るための判定を行えるようになりました。
例えば、夢を通じてモール教団の司祭がお告げを受ける、あるいは悪魔術師がディーモンから未来を聞き出すといった方法に加え、アルトドルフの魔力占術機を使用するという手もあります。

錬金術師が作り出す驚異のアーティファクト、すなわち望遠鏡や磁石そして石鹸などについても各種データが揃っています。価格や材料費、そしてもちろん作成のためのルールがあります。
日用品ばかりではなく、魔力を操作したりあるいは強力な武器にもなる錬金術アイテムも掲載されてございます。

第四章から第十一章まで、帝立魔法大学校八大学府それぞれについての記事が続きます。いずれの章も同じ体裁、同じページ数で書かれています。掲載されている内容としては、以下の通り
・オールド・ワールドの人々から一言
・各学府の概要
・新キャリア
・魔力の風が及ぼす影響
・大学の校舎
・他の組織との関係
・サンプルNPC
・追加呪文

各12ページで八大学府を紹介するので合計96ページ、これだけで通常の追加サプリ一冊に相当する情報量です。

紹介されているNPCは駆け出しの魔術師から上級魔術師、主席魔術師まで様々。高名なるバルタザール・ゲルト師のデータも掲載されてございます。

新キャリアも見逃せません。各学府特有の魔術師が紹介されています。ルールブックに掲載されている基本的な魔術師にちょっとした変化を付けた程度のものもあれば、異能や技能が大幅に異なるものも有り。キャリアレベル毎の所持品も学府によって特徴があります。

たとえば、灰色の学府の影術師は隠密活動に適した能力を持つ魔術師となります。生命の学府と獣の学府の魔術師であれば、ご想像の通り野外活動に適した異能や技能を修得できるようになっています。
黄金の学府の錬金術師には大きな変更が加えられており、そのキャリアの性質は学者であり職人、そして応用化学の専門家といった塩梅で、地位が高くなるとちょっとした貴族よりも裕福なキャラクターに成長します。

魔法大学の紹介が終わると様々なマジックアイテムの紹介が始まります。

第十二章では魔術師のローブや杖、巻物や呪文書などが紹介されています。『Archives of the Empire vol.II(帝国公文書集 第二巻)』でもマジックアイテムが紹介されておりましたが、今回追加になったアイテムもございますので是非目を通してください。付け加えておきますと、魔術師の呪文発動を強化するアイテムに価格が記載されてございます。つまり購入できるってことです。呪われたアイテムの紹介も充実しております。

魔法薬に関する新たなルール、効果や副作用そして作成方法のルールもこの章に多数載っております。

第十三章は魔法被造物のコーナー。最初に掲載されているのは「元素の化身」、いわゆる炎の魔神だの森林の精霊だのといったものです。

ディーモンプリンスと比べると一歩及びませんが、能力値から推定するとワイバーングリフォンさえも圧倒する、きわめて強力な存在となっています。

純粋な魔力で構成されたモンスターがディーモン以外にも設定されたことで、GMの皆様に新たな着想をもたらすことでしょう。

ルールブックをお読みの方はご存じの通り、翡翠の学府の魔術師がフェンビーストを使役しているという話題がございます。『Winds of Magic』が手元にあれば、公式なルールに則ってフェンビーストを運用できます。

使い魔はクリーチャーとしてのデータだけでなく、キャラクターとして扱うためのルールが整備されています。何と!使い魔専用のキャリアもあります。

第十四章では魔力の風の流れが土地に与える影響についての各種ルールを扱います。

魔力の風の流れについての話題や魔力による汚染についての話題は、例えオールド・ワールドの住人であっても魔術師でなければ知ることができない事柄です。

さらに、エルフが人類に魔術を伝えた際に幾つかの重要な秘密を明かさなかったため、限られた魔術師しか知り得ない情報、例えば“古き者”が築いた地脈やエルフが作り出したウルサーンの大渦などの話題もこの章に載っています。

何故エルフは魔力の流れについての重要な知識を秘匿しているのか。理由の一つは明らかで、あまりに危険すぎるためでしょう。
もう一つの理由は、説明しようにもゲーム上の公式ルールが設定されていなかったことによるのでございましょう。

冗談はさておき、Winds of Magic』にはウォーハンマー世界の根幹に関わる話題が掲載されており、しかもその設定をゲーム上のデータに従って運用するためのルールまで載っているのです。
もしアナタが混沌の領域へと繋がるポータルを開こうとする邪悪な魔術師だったらをシナリオに登場させたいのであれば、大変お役立ちとなること間違いなしです。

その他にも、特定の魔力が強い土地の紹介があります。『ライクランドの記念碑(Monuments of the Reikland)』に掲載されていた建物も載っています。
『Archives of the Empire vol.I(帝国公文書集 第一巻)』によると、ローレローンの森の中にも特定の魔力が収束している場所が幾つかあるようです。

最後の章は悪役NPC紹介。
オールド・ワールド最大の混沌教団を率いる首魁のデータが掲載されています。シナリオ集で何度か黒幕として言及されていた人物のNPCデータが遂に明らかになりました。
他にも、ウォーハンマー40kの世界にも登場する強力なディーモンや、独自の魔法体系を操る妖術師まで個性的な悪役が待ち構えております。

さあ、これで全十五章に一通り目を通したことになります。お気づきかと思いますが、ドワーフのルーン魔術、エルフの至高魔術、キスレヴの氷の魔術などの新呪文体系は本書に掲載されておりません。

しかし、それを補って余りあるほどの圧倒的な情報量が詰まっていることはお分り頂けるでしょう。

繰り返しになりますが、Winds of Magic』にはウォーハンマー世界の設定に深く関わる内容が記述されています
魔術師を強化する数々のルールも掲載されています。役立つアイテムだってあります。

それでも購入を躊躇っている魔術師のそこのアナタ!
本書の末尾に帝国魔法許可証の様式が掲載されてございます。
帝国歴2512年シグマー月1日発行で魔術長官の署名入り。
あとは記入欄にアナタのお名前を書き込むだけで免状が出来上がります。
どうです、お値打ちでございましょう。

Night Parade:ウォーハンマーRPG4版

 死霊術師の 触れ役が
 鍔広帽子を 引き上げた
 帽子の下より 現れたるは
 笑顔の張り付く 肉無き髑髏
 邪術で燃え立つ 虚ろな眼窩
 慄く村人 前にして
 只の一言 かく宣えり
 「皆様の屍を頂戴します」

ウォーハンマーRPG第4版に新たな追加サプリメントが登場しました。キュービクル7エンターテイメントの発売スケジュールに全く掲載されていなかったので不意をつかれましたが、実に嬉しい驚きです。

クリーチャー強化データ集の2冊目となる『Night Parade(百鬼夜行)』の形式はPDF、内容はアンデッドの強化テンプレートとなります。

これまでもウォーハンマーRPG第4版では、同系統の役割を持つ書籍は体裁をそろえてございました。

例えば内容が対になるNPCデータ集『Patrons of the Old World(オールド・ワールドの後援者たち)』と『Hirelings of the Old World(オールド・ワールドの雇われ人たち)』は同じ書式で書かれています。

あるいはシナリオフック集『ライクランドの記念碑(Monuments of the Reikland)』と『Shrines of Sigmar(シグマーの聖堂)』は、章立てや構成にいずれも同じ形式を採用しています。

クリーチャー強化データ集の1冊目『Cluster Eye Trive(百眼族)』では、フォレストゴブリンの群れ“百眼族”を題材に、「族長」「呪術師」「精鋭」などの役割に応じた能力値と異能の強化テンプレートが紹介されていました。オークやゴブリン、獣人などの文明化されていない種族を想定した強化テンプレートでございます。

今回発売された『Night Parade』に掲載されている組織は、ジャスパー翁率いるアンデッドの群れとなります。

その様子は名に違わずまさにパレード。鐘を鳴らし踊りながら練り歩くゾンビの一団、髑髏の群れが聖歌隊のごとく合唱し、奇怪な行列の中心には動く屍で飾られた山車、山車の上に乗るのは首魁のジャスパー翁。

斯様に芝居がかった集団でありますが故、決め台詞も同じくらい芝居がかっております。

さて、先程手前は山車と申しました。追加モンスターとして屍車のデータが掲載されています。左様、ウォーゲーム版のウォーハンマーでも登場する“コープス・カート”のデータであります。

死霊術師と周囲のアンデッドを強化したり、敵対する魔術師の魔法発動を妨害したりと様々な場面で活躍できますので、死霊術師の皆様の騎乗動物として最適です。

『Night Parade』に掲載されている強化テンプレートの例を挙げましょう。

ルールブックに載っている下級のアンデッドがザコくてお悩みのGMのそこのアナタ!

「ワイト」のテンプレートを用いれば、スケルトンやゾンビが見違えるように強力なアンデッドになります。

もちろん、ワイトもしくはそれに類するスケルトン・チャンピオンは、これまで発表された幾つかのシナリオにNPCとして登場しています。

あるいは、『Imperial Zoo(帝立動物園)』にはモンスターデータとして死霊騎士(ワイト)が掲載されています。単に強力なアンデッドが必要なのであればそれらを流用するのも良いでしょう。

しかし、『Night Parade』のデータを用いれば、アナタだけのワイトを作ることが出来ます。それだけではありません、さらに強力なアンデッドのチャンピオンさえ作れるのです。

とはいえ、このテンプレートには今までの資料集で登場したワイトと整合性が取れない箇所が若干ございます。〈魔法被造物〉を〈心理ルール無視〉と〈魔法的〉に置き換えた方が良いのではないかとも思うのです。

ひと味違う乗騎を探している死霊術師のそこのアナタ!アンデッドの乗騎はいかがでしょう。

「骸骨軍馬」「屍の乗騎」のテンプレートは馬だけではなく、グリフォンのゾンビや大蜥蜴のスケルトンにも適用出来ます。GMはうんと想像力を働かせてみてください、そこには新たな可能性が広がっています。

なお、スケルトンにしてしまうと〈飛翔〉のクリーチャー特徴が失われてしまいます、ご注意ください。

長編キャンペーンシナリオの終盤に登場するような強大な悪役がご入り用でしたら、「屍王(Liche Lord)」のテンプレートがございます。

死霊術を極めて死から逃れる方法を見出した者だけが到達できる、まさにアンデッドモンスターの究極形、死霊術が築いた金字塔。

そういえば、金字塔ってピラミッドのことなんでしたっけ。ウォーハンマー世界で最初に死霊術を編み出したのも、ピラミッドがそびえる古代ネフェキーラ文明の都クェムリの祭司でした。

まあそういうわけで、「屍王(Liche Lord)」「屍使い(Liche Corpsemaster)」いずれもネフェキーラ語を話せるのであります。

儀式を経て死から甦ったばかりの死霊術師は、変容の過程で生前の力の大半を失っているようです。
それでも、「屍王」になるほど生き延びた、・・・生きていないですけど、者は帝立魔法大学校の主席魔術師に匹敵するほどの力を身に着けることになるのです。

何故そう言えるのかと申しますに、つい先日発売された『Winds of Magic(魔力の風)』にサンプルNPCとして主席魔術師が何人か掲載されていたからでして。

Emperor's Wrath:ウォーハンマーRPG4版

ウォーハンマーRPG第4版の短編シナリオ、『Emperor's Wrath(皇帝の憤激)』のPDF販売が海外のRPG通販サイトで始まっております。

短編シナリオですので、迂闊に何か話しますとシナリオ本編の内容に触れるおそれがございます。なるべくネタバレにならないようにお話し致しますが、一切の情報を遮断して本シナリオに挑みたいという方は、手前が話題を逸らしている間にページを閉じてくださいませ

これまでのところ、ウォーハンマーRPG第4版の短編シナリオは大きく3つのシリーズに分類可能でございます。

一つは『Ubersreik Adventures』の系譜にございます。邦訳版が『ユーベルスライク冒険集』の名前で出ておりますので、既に体験された方もいらっしゃることでしょう。原語版では各シナリオがPDF形式でバラ売りされており、ある程度本数がまとまった時点で書籍(と各シナリオバンドル版)の販売が開始されるようです。原語版では2冊目となる『Ubersreik Adventures Ⅱ』が出版されてございます。

二つ目が、『Old World Adventures(オールド・ワールドの冒険)』シリーズ。最初の一本目『Night of Blood(流血の夜)』は邦訳版がホビー・ジャパンのサイトで無料配布されてございます。その名の通り、オールド・ワールド各地を舞台にした短編シナリオで、クリスマスやハロウィンなどの時期に発売される傾向がございます。そのため、エンパイアの年中行事を題材にしたシナリオを扱う傾向があります。

とはいえ、ホリデーシーズン以外に発売されたシナリオもございます。舞台となりますのはライク河やズィルヴァニア近くの森、ユーベルスライクのような都市、あるいはエンパイアの街道の“どこか”のように場所が特定されていないシナリオまで、幅広いレパートリーがございます。『Old World Adventures』シリーズは今のところ書籍化はされてございません。PDFのみでの販売となっております。

三つ目は、それ以外の短編シナリオです。『ライクランド綺譚 ウォーハンマーRPG単発シナリオ集(One Shots of the Reikland)』や『墓穴掘るならご勝手に(It's your Funeral)』『眠れぬ夜と息つけぬ昼(Rough Nights & Hard Days)』など邦訳版が出版されてございます。これらは表紙に『Ubersreik Adventures』『Old World Adventures』いずれのシリーズ名も書かれておりませんので、その他の分類になるかと存じます。

その他の分類に関し付け加えますと、全五巻から成る長編キャンペーンシナリオ『Enemy Whithin(内なる敵)』の副読本にも、単発の冒険として運用可能な短編シナリオが毎回掲載されてございました。

話題が逸れ申した。短編シナリオ『Emperor's Wrath』の話を致しましょう。

先に述べました『Old World Adventures』シリーズのシナリオで、表紙と目次そして広告含めて全部で31ページ、うちシナリオが18ページで付録が9ページ。シナリオの冒頭3ページが付録の内容に直結しておりますので、事実上付録が全体の四割を占めていることになります。

いかにも、付録が充実しております。語弊があるやもしれませんが、まさしく付録に掲載されている内容こそが『Emperor's Wrath』の肝心要なのです。

『Emperor's Wrath』最大の見所をお話しいたしましょう。出版元であるキュービクル7エンターテイメントのページでシナリオの予告として掲載されており、さらに表紙画像でも明らかなことなのでネタバレには当たらないはずと考える次第にございます。

本シナリオには、スチームタンク(蒸気戦車)のデータが掲載されているのです。

事の重大性を申し上げますれば、スチームタンクは帝立技術者大学校の創設者レオナルド・ダ=ミラグリアーノ教授が五百年前に開発したもので、エンパイア広しと言えども今なお機構の再現に成功した者はおりません。

現存するスチームタンクはわずか8両。選帝候の権威の象徴である魔剣ルーンファングでさえ12振り存在していることを考えると、蒸気戦車の希少価値は計り知れないものであります。

『Emperor's Wrath』には、現存するスチームタンク全機についての公式データ、名称、武装、司令官、現時点の配備状況、主な戦歴、が掲載されています。

帝国の切り札ですから勇壮な名前が付いているのも当然で、蒸気戦車第一号機「Conqueror〈征服者〉号)」、混沌大戦や墳墓王討伐そして吸血鬼伯爵との戦いで活躍した「Deliverance〈天の救済〉号)」といったものがあります。

交戦中に砲が損傷してもなお体当たりで戦闘を継続した「Indomitable〈不屈の魂〉号」は機能不全を起こし現在修理中。装甲馬車を開発し軍事史に名を刻んだ「Von Zeppel〈フォン・ツェッペル〉」技師の名を冠する機体、など一つ一つのスチームタンクに背景が設定されてございます。

スチームタンクに搭載する蒸気砲、臼砲、旋回砲、三重連装砲なども各種データ化、弾薬や車体の改装についてもルール化されております。

これまで、『Enemy in Shadows COMPANION(影に潜みし敵 冒険の手引き)』掲載の四輪馬車のデータや『Death on the Reik COMPANION(ライク河上の死 冒険の手引き)』の蒸気船操縦ルールを基にスチームタンクをハウスルール化しようと四苦八苦していたそこのアナタ!

『Emperor's Wrath』にはスチームタンクの公式データが載っているのでございます。是非ご一読くださいませ。

さて、スチームタンクの詳細なデータが明らかになったのは嬉しいけれど、全機に公式な設定があるので自由に創作できる範囲が狭まってしまったと嘆いているGMのアナタ!

前回の記事で紹介致しました『Up in Arms(武器を執れ!)』の記述に従えば、ナーグルの従者タムール汗(Tamurkhan)がナルンを攻撃したのが帝国歴2511年となっております。

ウォーハンマーRPG第4版は帝国歴2510年代、スターターセットに依れば2512年を前提としているとのこと。

小説版の時系列から見てタムール汗の襲来後、つまり帝国歴2511年以降であればスチームタンクのデッドコピーであるところの『マリエンブルグ級陸上戦艦(Marienburg Class Land Battleship)』が存在していることになります。

マリエンブルグを治める豪商たちは、どうしても必要な方々に「お値打ち価格で」貸し出すこともあると聞いてございます。

『Emperor's Wrath』に掲載されている各種データを駆使して、マリエンブルグ級陸上戦艦のデータを作成するのはいかがでしょう。

Up in Arms:ウォーハンマーRPG4版

ウォーハンマーRPG第4版における追加データ集『Up in Arms(武器を執れ!)』の予約がキュービクル7エンターテイメントのサイトで始まっております。

題名から皆様ご高察の通り、武器の追加データが多数掲載されております。2版時代の『オールド・ワールドの武器庫』に相当する資料集と考えて頂いて相違なきものと存じます。

武器のデータ以外の内容も充実しておりまして、追加キャリアも多数掲載。手前はこれまでの追加資料から新規キャリアは3~4個程度であろうと推測しておりました。ところが何と15もの新キャリアが追加されているのです。さらに、戦闘における各種ルールも追加。

それだけではございません、これまで公式の設定がほとんど展開されていなかったティリア都市国家が紹介されています。

これほどの内容とは予想だにしておりませんでした、嬉しい驚きです。早速内容を見て参りましょう。

最初の章は『Up in Arms』の概要説明、1ページの短い章です。書籍の前半部が戦士のクラスに就いたキャラクターに関する内容であり、後半が追加ルール各種となるという説明でございます。

第2章は帝国州軍についての設定。制服や所持品そして州軍色といった軍装に関するあれこれ、平時の生活と戦時の活動、これらの話題で合計数ページ。

そしていよいよ新キャリアの紹介が始まります。弓兵、大剣歩兵、斧槍兵、ハンドガンナー、さらに砲兵も。

ウォーハンマーRPG第4版ではこれまで兵科が何であれ「兵士」のキャリアは共通した成長ルールが用いられていました。そのためルールブックの記載に従うと、新兵のキャラクターは射撃技術を伸ばす事が出来なかったのです。

しかし『Up in Arms』があれば、アナタも射撃に特化した兵士のキャラクターを作ることができます。ドワーフのハンドガンナーやエルフの弓兵にだってなれます。

各兵科における名高い部隊の紹介記事も載っています。決して後退しないと誓いを立てているカルロブルグ大剣隊、帝立砲術大学校が兵器開発の実地試験のため設立したナルン甲鉄兵団などなど。

コラムも充実しております。
ウッド・エルフとハイ・エルフの両種族はいずれも弓の腕前で名を馳せているが戦術はそれぞれ対極を成している、ハンドガンナー隊の長所は実戦投入までの訓練期間が短くて済むことである、など実に多様な話題が取り上げられています。

新キャリアとして野営追行者地図職人も掲載。野営追行者は過去の版では軍隊における酒保商人としての役割があったものですが、今回の版では完全に戦場あさりや骨拾い寄りの能力になっています。何しろ収入獲得技能が<野外生存術>となっておりますので。

第3章では帝国各地の騎士団を紹介。
騎士団は州軍とは異なる独自の指揮系統に属しており、新規団員の加入も独自の手続きによるため、章を分けたのでございましょう。

ここでも新キャリアが紹介されております。
騎士団に属していない自由騎士
軍神ミュルミディアに仕える太陽騎士団
戦神ウルリックに仕える白狼騎士団
最大規模の世俗騎士団である金豹騎士団

上記三つの騎士団については歴史、拠点、入団儀式、軍装、戦場での働きについて設定が示されてございます。

この章ではドワーフの職人がウムギたちの作る鎧の欠点について解説しています。“ウムギ”という概念は説明が難しいのですが、ドワーフの言語であるカザリッドで言うところの「見た目は立派だが大きいだけで見掛け倒しの安普請」のような事物を指す言葉です。「看板建築」と訳せば意味合いが近いでしょうか。ドワーフたちは人間のことをそのように呼んでいますえーと、つまりそういうことです。

とにかくまあ、人間が作った鎧の欠点をドワーフの鎧職人が解説するコーナーが設けられているわけです。どこが壊れやすいかの説明もございますので、鎧の破損や修理を描写する際のGMにお役立ちの記述かと存じます。

第4章は傭兵についての記事。ここで掲載されている追加のキャリアは軽騎兵、パイク兵、攻城包囲兵の三種。

設置式の大盾パヴィスを用いるティリア人傭兵部隊はオールド・ワールドの攻城戦で名を馳せてございます。これは我々の世界におけるジェノバの弩兵にちなむものでございましょう。

キャリア成長したクロスボウ兵は工兵になり申す。塹壕を掘ったり、城壁の地下を採掘して敵の城に侵入したり、あるいは逆に城から出撃するための地下道を掘って敵に奇襲をかけたり致します。

地下道の採掘ということで予想がついた皆様もいらっしゃることでしょう、オールド・ワールドにおける最高の工兵はドワーフ達だと言われています。なるほど、ツルハシとクロスボウそして爆発物で武装した工兵というのはドワーフのイメージに合致しています。

初期キャリアでクロスボウ兵になれば、各種装備に加え素敵な羽付きの帽子も貰えます。キャリアを積めば<知識(工学)><職能(鉱夫)>などの役立つ技術が学べます。さあ、アナタもクロスボウ兵団に加入して、邪悪なスケイブンやナイトゴブリンと戦ってみたくありませんか?

TRPGでは後で追加されたデータほど強い、たとえ同じ経験点で成長させたとしても追加サプリに載っているジョブの方が初期ルールブックに載っているジョブより強い、とする俗説がございます。

『Up in Arms』もしかり、追加されているキャリアは特定の戦術に特化する傾向があり、技能も異能もそのキャリアの役割に沿ったものが揃えられています。したがって、ただの「兵士」よりも高い能力を発揮できます。

第5章は地域紹介のページ。オールド・ワールド南方に位置するティリア半島の公式設定がいよいよ公開されました。

ティリアはエンパイアより自由な気風で知られており、政体も様々です。大公国、貴族共和制、豪商議会、商人ギルドによる運営、多様な都市国家が割拠しております。

この章ではミラグリアーノやルッシーニ、レーマにトバロといったティリアの諸都市の現状について、そして現在の統治者について、簡潔にまとめられています。

人口、君主、特産品、軍事力の一覧表もあります。特産品に柑橘類やオリーブがあるのが南国風です。ティリアは海洋国家なので海産物も特産品となっております。その他特記事項を眺めますと、アンデッドが治めている要塞都市があるのが気になりますね。スケイブンの都が近くにあると言われる地域では、住民全員が失踪する町が相次いでいることも目に留まりました。

追加サプリで毎回掲載されるお約束の歴史年表コーナーは当然ティリアの歴史となっておりまして、我々の世界のイタリア半島の歴史を模したものになっています。マルコ・ポーロに相当する人物やルネサンスに相当する出来事についての記述も有り。付け加えておきますとティリアの大都市はエルフの古代遺跡の上に建っております。

肝心なことを伝え忘れるところでした、ティリア出身のキャラクターを創造するためのルールもこの章に載っています。

6章はミュルミディア教団の記事。この章で扱う追加キャリアはミュルミディアの戦闘司祭、追加の《奇跡》も載っています。
ミュルミディア教団の歴史における重要人物についての記述もあります。例えば古代エルフの戦術家、あるいは決闘術の大成者剣聖ヴァランクールのような存命中の人物まで幅広い話題を取り扱っております。

この章の記述によると、帝立技術者大学校の創設者であるレオナルド・ダ=ミラグリアーノ教授も軍神ミュルミディアの信者だったそうです。これはレオナルド・ダ=ビンチの職業が軍事技術者だったことにちなむのでしょう。

ちなみに、ウォーハンマーRPGの世界にはレオナルド・ダ=ビンチを元ネタにしているキャラクターがもう一人います。軍事技師としての側面に基づくキャラクターがダ=ミラグリアーノ教授であるならば、芸術家としての顔を反映した人物が画家のダ=ベンツィオであります。

ダ=ベンツィオ最大の代表作がレーマ共和国シャリア大神殿の天井フレスコ画でございます。歴史あるレーマの都には見所が幾つもございますが、悠久橋やレーマ大闘技場と並ぶ名所をもう一つだけ挙げるとすれば、手前はこのフレスコ画を選びます。

この画にはひとついわくがございます。慈悲の女神シャリアと対になる邪悪な女悪魔が描かれておりまして、これはある人物をモデルに描いたものだと言われているのです。

話が逸れ申した。過去の版を体験している皆様ならご存じの通り、軍神ミュルミディア生誕の地がエスリア王国の都マグリッタか、ティリア半島のレーマなのかで分裂が起きています。4版でもこの設定は引き継がれております。

『Up in Arms』ではこの件についてページを割いて説明しており、単に出身地がどこかという対立以外にも、主要な三つの教典についての解釈の違いなど、様々な項目で違いが表れていることを示しています。

他にも、修道会や他の神格との関係性などの女神ミュルミディアに関する話題が一通り載っております。とても読み応えのある章でした。

7章以降は各種追加ルール。まずは負傷と致命傷に関する新ルールと数ページの致命傷表の章。

8章は題して「補給将校の倉庫」。様々なアイテムや追加の武器が紹介されています。

載っているのは武器だけではございません。弾薬帯や導火線、あるいは砥石のような消耗品と必需品、便利グッズもございます。

中でも驚くべき新製品はナルンの高名な発明家が開発した「キャプテン・ブラウンの万能焜炉」でございます。人気商品「キャプテン・ブラウンの即席調理釜」を製造する工房の新作であるこの焜炉は複数の料理を一度に加熱できるため調理時間を節約でき、さらに従来品より保温性断熱性が高くなっておりますので、熱を逃がさず少ない薪でもより早く料理を暖められるという優れもの。何と荷重点はたったの3点、行軍中のお料理に最適の逸品です。

言うまでもありませんが、武器の追加データもございます。これまで一括りにされていた「片手用武器」に種類ごとの特性や難点を追加し、あるいは価格を変え、武器に個性を持たせています。

ギャロットのような単純な格闘用武器であれば、必要な〈技能〉を持っているならばキャラクター自身で作ることが出来るようになりました。

フェンシング武器を使う「決闘者」は、データ的に他の戦闘系キャリアより格闘戦で不利だと思いませんか?ご心配なく、逆手にマントのような厚めの布を持ち「受け流し武器類」として用いることが出来るようになりました。

射撃武器も各種追加されてございます。拾い集めた小石をスリングの弾丸として使うためのルールや、深手を与える逆棘付きの矢などの矢弾に関する新たなデータもございます。

ハンドガンの銃身に斧を取り付けた“ガン・ハルバード”はいかがでしょう。もちろんウォーハンマーRPGですので、再装填中の暴発にはくれぐれもご注意ください。

ハンドモーター、いわゆるグレネードランチャーもございます。なんとグラップルガンとしても利用可能。

9章は騎乗戦闘の追加ルール各種。これまで曖昧なところがあった<臆病>のクリチャー特性が戦闘に与える影響について、記述がございます。

10章はNPC雇用に関するルール
ルールブック309ページに掲載されている「医者」「運搬人」「地元の案内人」などのNPCについて、何度かD100ロールするだけで個性付けが出来るようになります。
11章遮蔽と構造物の破壊
この章では、大砲や投石機、使用する砲弾に関するデータが掲載されています。これまでにも『Death on the Reik COMPANION(ライク河上の死 冒険の手引き)』など幾つかの追加サプリで大砲についてのデータが何度か登場しておりましたが、『Up in Arms』によってこれまで登場した各種データが整理されました。
ヘルシュトロム・ロケットバッテリーやヘルブラスター・ヴォレイガンのような強力な兵器も掲載されております。『ウォーハンマー ファンタジーバトル』の経験者ならこれらの兵器を目にしたこともございますでしょう。

投射兵器への防御となる遮蔽物の強度に関するルールもあります。

本編はここまで、以降は付録のページ。
優位の追加ルール冒険外活動に関する記述があります。
重要なのは、異能に関する記述をまとめたページかと存じます。
と申しますのも、『Up in Arms』で追加された異能、あるいは追加ルールを適用することで効果が変わる異能がまとめられているためであります。

遺漏はございますが、一通り『Up in Arms』の内容に目を通して参りました。すぐにでも使ってみたい追加データや設定が多数載っておりますが、少々問題がございます。

と申しますのも、現時点の『Up in Arms』PDFデータにはまだ誤記や誤植が残ってございます故。
表の題名と内容が合っていない箇所がある、収入獲得技能が不明なキャリアがある、文章が途中で途切れていると思しき箇所が有る、ほぼ同一の内容が繰り返されているページがある、など。

今はまだ先行予約期間中でございますので、書籍として印刷される頃には訂正されていることでしょう。手前といたしましては、データに訂正が入るまで本格導入を待つつもりでございます。

誤植なのか判別が付かない箇所もございます。

ティリアの西にある島、海賊たちが治める港湾都市サルトサのことでございます。位置的にはシチリア島に相当し、設定的にはポート・ロイヤルとかそのあたりを想像していただければ近いかと存じます。

無法の街かと思いきや、設定を読んでみると“海賊同士での盗みの禁止”など厳格な掟で秩序を維持していることが意外でした。

この港を仕切っているのは大物海賊達です。であるからして、統治者は「海賊王たち(The Pirate Princes)」だと思うのです。ところが現時点では「海賊王女(The Pirate Princess)」と書かれているのです。誤記なのか判別つきませんので、とても気になっているのです。

ちょっと出かけてくるにはサルトサは遠いですが、折角公式設定も出たことですし、確かめるためにティリアまで冒険に出るのも良いかもしれません。

The Imperial Zoo:ウォーハンマーRPG4版

皆様待望のウォーハンマー4版モンスターデータ集『The Imperial Zoo(帝立動物園)』が遂に発売されました。数え方にもよりますが掲載されているモンスターは50体以上、同種モンスターのバリエーションも数に入れますと60体を超えます。

その中には強化バリエーションどころではないほど強大な、個体名が付けられたクリーチャーさえも載ってございます。デトレフ・ジールックの戯曲にも登場する伝説の怪物とアナタのPCが戦うことだって出来るのです。

どうかそのようなことがありませんように。

プレイヤーの皆様、ウルリックの髭にかけてどうかご安心ください。『The Impeial Zoo』はモンスターデータ以外の部分も充実しているのです。後半部に設けられた付録のデータ集を用いることで、邪悪なGMが繰り出すクリーチャーGMが繰り出す邪悪なクリーチャーに対抗するアナタのPCもぐっと強化されることでございましょう。

内容を見て参りましょう。

『The Imperial Zoo』を開いて数ページ進むと、もう一つの表紙が出て参ります。活版印刷風の書体でこう書かれています「帝立動物園の依頼による知識を探求する為の三度の遠征 書記テオドシウス・スクライバー記す」。このように、ウォーハンマー世界の学者が記した冒険記という体裁で書かれているのです。

2版時代の『オールド・ワールドの生物誌』も単なるデータ集ではなくイン=ユニバース形式を採用しており、ゲームの追加サプリメントの中に「ヴュルトバットのオドリック著 災いなす獣の書 善美と下劣の生き物類考」という書物が入れ子構造になっていたことは皆様ご承知の通りです。

さて『オールド・ワールドの生物誌』では各クリーチャーについて立場の異なる3つの意見“世間の見方”“学者の見地”“やつらの言い分”が提示され、読み物としての内容に厚みを持たせておりました。モンスター種族の当人・・・人間ではないですけど便宜上、の言い分まで並んでいる斬新な構成に当時手前は驚かされたものです。

では、『The Imperial Zoo』ではどうなっているか申し上げましょう。スクライバー氏の探検隊に参加したメンバーが冒頭の見開きで紹介されておりまして、本書の挿し絵を描いた(という設定の)画家やエルフの狩人など6人で構成されております。タンカー、シューター、ヒーラー、ウィザード、そしてネゴシエーターが揃ったゲーム的にバランスの良いチームと言えましょう。

ところで、著者の名前がどうも引っかかるのです。テオドシウス・スクライバー、Scribeする人、名前の意味は「書き記す人」って事です。ゲームの登場人物に言っても詮無いことですが、架空の人物ぽくありませんか

話題が逸れ申した。スクライバー氏の探検隊メンバーが記したメモが時折本文中に挟み込まれています。薬剤師や戦士、狩人そして魔術師が、彼らの専門分野からそれぞれの意見を披露しています。

例えば、素材としての有用性はどうか、戦うときに注意すべきことは何か、神話や伝承における怪物の起源について、様々な話題が冒険記の合間に差し込まれているのです。

専門的な意見だけではなく、彼ら自身の個人的な意見もあるので読み応えがあります。最初は誰のメモか判り難いかもしれませんが、キャラクターの個性を反映した印章が押してあり、さらに筆跡というかフォントも変えているので、慣れればすぐに誰の言葉か判るようになっています。
細かいところでは、メモを留めるピンや単語の選び方にも彼らの個性が出ていました。

読み物としておもしろかった箇所はいくつもありますが、あえて一つだけ特に興味深かった内容を選ぶとすると「神話上のスクイッグの起源は“おっかねえ大アゴ様”か、それとも“ゴルク(あるいはモルク)”か」議論が提示されていたことです。これはウォーハンマーのシリーズの一つ『Warhammer Age of Sigmar』の設定に関連するものと手前推測いたします。

2版の『オールド・ワールドの生物誌』と比較した場合の違いとしては他にも、分類の仕方が挙げられます。
『オールド・ワールドの博物誌』はその題名の通り博物誌ですので、モンスターデータをそれぞれ「混沌の軍勢」「ロゥレンの森の住者」「角在りし鼠の子」のように分類して記載していました。

一方で4版の『The Imperial Zoo』は冒険記の体裁を取っておりますため、博物誌の形を借りた2版ほどには分類が明確ではありません。別の方法で、それも冒険記特有の方法で分類しています。

場所による分類になっているのであります。

三回の遠征がそれぞれ章を分けて記されており、いずれの章の始めにも地図と目次が付されています。

第一次遠征では、タラベックランドを中心とする地図が掲げられており、エンパイアの大半を占める広大な森林地帯の動物たちが紹介されています。森の中に生息する狼やゴブリン、そしてエンパイアの東端にある最果て山脈の動物、山脈を越えて東方からエンパイアへ渡ってきたと思われる動物類も扱っています。最果て山脈では高名なるカラク=カドリンの砦町にも滞在いたします。

第二次遠征はアルトドルフを中心とした地図から始まり、ライク河流域と沼沢地、西の隣国ブレトニアとの国境にある灰色山脈を舞台にします。当然の事ながら、淡水生のモンスターや灰色山脈の猛禽類を扱っています。

灰色山脈越えを実施しブレトニアでも調査を行い、当地の光景や国境沿いの砦町についても言及あり。

アセル・ロウレンの森と近いせいでしょうか、灰色山脈近辺では第一次遠征と若干印象の異なるクリーチャーも登場します。

第三次遠征はエンパイアの南方にあるティリア半島に向かう旅です。なぜ目的地がティリアかというとレーマ共和国の大闘技場には「帝立動物園に匹敵するほどの」猛獣が集められているためだというのです。ティリア半島に向かうための黒色山脈越えで遭遇した獣から、闘技場で飼育されている世界各地の猛獣、南方の海に生息する伝説上の怪獣までが紹介されており、最もエキゾチックな章でした。

付け加えておきますと、登場するレーマの豪商も猛獣に負けず劣らずのインパクトのある個性的なキャラクターです。

このように、エンパイアを取り囲む三つの山脈、国土の大半を占める森林地帯、主要な交通網であるライク河流域それぞれの生物種を紹介し、さらに南方の猛獣たちをも取り扱う冒険記なのです。

エンパイアの北の境、鉤爪湾につきましては本書では取り扱ってございませんでした。今後出版される『Salzenmund(ザルツェンムント)』に期待しましょう。

ザルツェンムントは地理的に興味深い場所にある都市でございまして、帝国最大の貿易港(マリエンブルグは除く、理由はご承知の通り)でありながらライク河タラベック河いずれの流域でもないため、帝国内の都市との主要交易路が陸路となっているのです。

話題を戻しましょう。これまでモンスターデータの章にざっと目を通して参りましたが、『オールド・ワールドの博物誌』とは異なりまして、スケルトン等のアンデッドあるいはディーモンのような魔法構造物についてはほとんど載っていません。ダークエルフやヴァンパイアのような文明を持つ知的種族もほとんど載っていません。『The Imperial Zoo』はその名の通り、動物に関する題材に集中しているのです。

それでも、ゴブリンとスケイブンそれにトロールが少々掲載されてございます。

ケイブンについては、「スクリール氏族の試作機」「モウルダー氏族による独創的な実験体」といったものも掲載。名前を聞くだけでワクワクしてきませんか?

ウォーハンマー世界に暮らす皆様は、トロールを知的種族と呼ぶかについて疑念をお持ちかもしれません。確かにルールブックによれば、一般的なトロールはオークの基準から見ても抜け作であります。しかしながら、魔法を操るトロールの鬼婆に限れば、確率的に申し上げましてアナタの初期キャラクターより賢い可能性がとても高いのです。

ゴブリンについても新たに追加されたルールがございます。これまで《祝福》《奇跡》の異能を取得できたのは人間だけ、追加資料『Rough Nights & Hard Days(日夜是騒乱)』を合わせても人間とノームだけでした。エルフ、ゴブリン、スケイブン、オウガなど他種族の司祭に関してはこれまで魔術師と同じルールで処理していました。何と!『The Imperial Zoo』ではゴブリンに独自の《奇跡》ルールが設定されているのです。

他にも動物が「優位」を取得するためのルールも追加されています。

GMが操るキャラクターを強化する内容についてはこのくらいでもう十分でございましょう。プレイヤー向けの話題を紹介いたしましょう。冒頭で述べました付録(appendix)のコーナーでございます。

倒したモンスターを素材に変えて換金したり、アイテムを作ったりするためのルールが掲載されています。『Imperial Zoo』の冒険記に登場した薬師が記した章という体裁で進みます。

素材に変えたモンスターの換金については、荷重あたり価格の相場、採取できる有用部位の荷重、鮮度による価格変動のルールが掲載されてございます。

そう、荷重あたり価格です。ラバの牽く荷車が冒険で何の役に立つのかと嘆いていた熟練行商人のそこのアナタ!投資した25Gを回収したいと思いませんか?

もちろん、手に入れた素材を売るだけではなく自分で利用したり、職人に加工してもらったりという事も考えられます。アイテムに加工するためのルールも整備されており、モンスターを材料にした強力なアイテムが次々と紹介されているのです。

ドラゴンの血で焼き入れした剣を作ったり、グリフォンの羽から作った矢羽根なんてものもあります。ルール的に特段の効果が設定されていない虫除けや接着剤などのアイテムも読んでいて楽しいものです。

付録の章を書いたキャラクターの本職が薬剤師であるため、武器だけではなくドラフトも多数追加されております。「薬剤師」のキャリアの活躍の幅が飛躍的に広がりました。

他にもこの章に載っている有用な情報といたしましてはモンスターの目録がございます。

名称、レア度、大きさ、危険度、荷重あたり価格の相場、掲載ページ、素材としての主な用途、これらが1ページに収まっております。どのモンスターがどのページに掲載されているか参照性が高いのは有り難いです。

なお、本書末尾のあたりにはクリーチャー特性とその効果をまとめた表もあり、こちらも便利です。

モンスターの危険性を測る指標につきましては2版時代には「屠殺容易度」というパワーワードがございましたが、今回はもう少しおとなしい表現になりました。「無害」「災難」「危険」「致命的」の4段階表示となっています。

追加アイテムの紹介が終わると、探検隊のメンバー6名のキャラクターシートとなってございます。『ウォーハンマーRPG スターター・セット』と同様にキャラクターの背景や秘密が記されています。

ちょうどプレイヤーの皆様の冒険者一行と同じ役割分担のチーム編成ですので『The Imperial Zoo』はスクライバー氏の一人称による疑似リプレイとして読むことも出来ます。

『The Imperial Zoo』を一度は読み終わったという方は、キャラクターシートに目を通してキャラクターたちの背景を頭に入れてから、もう一度読み直してみて下さい。きっと新たな発見があることでしょう。

Blood and Bramble:ウォーハンマーRPG4版

2022年最初の記事となります。冷え込む日が続きますが皆様いかがお過ごしでしょうか。手前はと申しますと、クリスマス前と予告されていた『The Imperial Zoo(帝立動物園)』の発売が遅れているため、他の追加資料を読んで心を落ち着かせているところです。

読んでいるのは昨年12月下旬に発売された2つのPDF『Hirelings of the Old World(オールド・ワールドの雇われ人)』そして『Blood and Bramble(血と棘)』であります。

Brambleが「木苺」なのか「茨」なのかどちらか手前には判断つきませんので、とりあえず不吉そうな語を選んで「血と棘」と仮称することに致しましょう。

『Hirelings of the Old World(オールド・ワールドの雇われ人)』
表紙の下部に副題がございます。「ウォーハンマーRPGにおける四人の“信頼できる”雇い人」。あえて強調しているところが不穏な感じがして良いですね。

貴族のボディガードを勤めていたオウガや、ユーベルスライクの犯罪王に仕える密偵など四名のNPCを紹介しております。もちろん数値的なデータだけでなく、彼らの背景や各々の野心が記述されており、彼らがきっかけになる冒険のシナリオフックも掲載されています。

英語版で既刊の『Patrons of the Old World(オールド・ワールドの後援者)』がPCの雇い主になる可能性のある人物を紹介しているのに対して、PC「」雇い主になる可能性のある人物を扱う資料となるものです。『Patrons of the Old World』と『Hirelings of the Old World』両者とも文章の記載の仕方が共通しておりまして、内容と形式いずれも対になってございます。

さて先程四名のNPCと申しましたが、掲載NPCはそれで全てではございません。彼らの現在の雇い主や友人、敵対者も何人か掲載されております。

とはいえ、不思議なことにデータが全く同じ人物が複数載っていたり、所持しているアイテムが何故か共通していたりと、誤植ではないかと思われる箇所があります故、後日訂正が入るかもしれません。もう少し様子を見守る必要がありそうです。

『Blood and Bramble(血と棘)』
こちらの副題は「似非魔術師と魔女のための二十と四の呪文集」となってございます。

二十四ではございません、二十と四です。英語でそう書いてあるのです。一応念の為新呪文を数えてみました。二十四個ありました。

冗談はともかく、副題の通り似非魔術師と魔女のための追加呪文集にございます。邦訳版が既に出ている『比類無く有益なスラサーラの呪文集(Sullasara's Spells of Unrivalled Utility)』が帝立魔法大学校に属している魔術師のための追加呪文集であるのに対し、こちらは帝国領内で活動を認められていない非公認の魔法使いのための追加呪文です。

付け加えておきますと、冒頭のページは魔狩人“火炙り薪”ゴットフリート師による報告書という体裁で始まってございます。したがいまして意見に偏りがあります。非公認魔術師の皆様は読んでいて不安になるかもしれませんがご心配なく。そのまま読み進めていただいて何ら問題ございません。

『Blood and Bramble』に掲載されている12の追加呪文により、似非魔術師の活躍の幅が大きく広がります。悪霊払いの香油を作り<エーテル状態>のクリーチャーにダメージを与え、清冽な泉の水を用いて解呪を行ない、骨接ぎの呪文でクリティカルヒットを治療する。新たな呪文は様々な局面で役立つことでしょう。

戦闘における火力でこそ魔法大学校の魔術師に劣りますが、仲間をサポートする役回りでの活躍が期待できましょう。

何より、いずれの呪文も発動に必要なCNが0なのです。

さて、邪悪な魔法使いのそこのアナタ!俗魔術も同じく12の新呪文が追加されてございます。
状態異常を起こさせたり、他人の幸運点を盗んだりと、いかにも邪悪な呪いの数々。骨砕きの呪文でクリティカルヒットを与えることもできますし、逃げ出した手下がどこにいるのか突き止めるために役立つ呪文も用意してございます。

追加呪文により活躍の機会が増えるだけではありません。左様、『Blood and Bramble』は単なる呪文データ集ではないのです。幾つかのサプリメントに言及はあったものの、これまで死に設定となっていた内容の詳細が描かれてございます。

すなわち、オールド・ワールドの精霊たちに関する記述です。

似非魔術師の技能に<知識:精霊>がございます。しかし精霊についてはこれまで明確なルールが無かったため、使い道のない技能でした。

『Blood and Bramble』では「骨泥棒モロック」ほか3種類の精霊が紹介されています。さすがウォーハンマーRPGだけあって、よくある四元素の精霊だのといった判りやすいものではございません。

精霊たちに関する設定や精霊が似非魔術師に与えてくれる加護について、そして精霊との交渉に必要なものについて記述がございます。

交渉に必要なものというのは、要するに加護を得るための精霊への捧げ物です。ルールブック78ページの似非魔術師もライク河の地域神“ライク爺様”への供物について語っていましたが、まあそういったものです。

例としては鼠や羊の骨とか、一枚の銀貨だとか、精霊に捧げる歌といったものです。術者の大切な記憶や目の色といった不可思議な要求をすることもあるようですね。

いずれにせよオールド・ワールドの精霊たちは古の契約に基づき、願いを叶える際は代価を求めてくるものでございます。

似非魔術師が精霊と交渉することが出来るようになった一方、俗魔術の体系にも新たな可能性が開かれました。悪霊や怨霊、あるいはレッサー・ディーモンを召還する呪文が追加されています。ロールの結果によっては、グレーター・ディーモンを呼び出すことも出来ます。

申し添えておきますが、この呪文には呼び出した存在を従わせる効果はございませんので、術者の命令を聞くかどうかは交渉によります、ご健勝を

エンパイアの臣民にとって、はぐれ魔術師は混沌教団とはまた別の脅威となるわけです。魔法学府とも混沌教団とも関係のない悪役というのは、GMにとっても使いでがあることでしょう。

後半には、いわゆる「良い魔法使い」「悪い魔法使い」のサンプル事例となるNPCが掲載されており、彼らにまつわるシナリオフックも紹介されています。いずれのシナリオフックも興味を惹かれる内容でした。

そういうわけで今回は、『比類無く有益なスラサーラの呪文集』に比肩するほど有益な呪文集『Blood and Bramble』の紹介でした。


さてと…、
魔狩人さん、こっちです!

Empire in Ruins COMPANION:ウォーハンマーRPG4版

ウィトゲンドルフ卿 万歳!
この度は『Enemy Within(内なる敵)』キャンペーン全5巻の長旅を終えられ、エンパイア救国の英雄として凱旋なさるとのこと、まことに目出度きことと存じます。領民一同を代表し、貴方様のご帰還を心よりお慶び申し上げます。

さて、先達て『Empire in Ruins COMPANION(エンパイア荒廃す 冒険の手引き)』が発売されたことはお聞き及びかと存じます。この知らせは既にGMの耳にも届いております故、悪意の限りを詰め込んだシナリオをGMが今まさに書き綴っている所でございましょう。左様なわけで、貴方様の旅はまだ続くものと思われる次第にございます。

冗談はともかく、シナリオ本編と副読本合わせて全10冊で構成される『Enemy Within』キャンペーンの全ての書籍が遂に出揃いました。

Empire in Ruins COMPANION』には、キャンペーン中に差し挟むことの出来る追加シナリオあるいはシナリオフックが各種掲載されてございます。勿論、独立した短編シナリオとして使うことも可能です。

Empire in Ruins COMPANION』の構成は『Power behind the Throne COMPANION(玉座の影の権力 冒険の手引き)』と似通っており、冒険の舞台になった場所や劇的な場面に関するシナリオフックが冒頭2章を占め、その次の章が悪役の組織設定となっています。

『Enemy Wthin』副読本シリーズに毎回設けられているNPC集のコーナーは、オストランド大公領とノードランドの現状を紹介する章に設けられています。

ご存じの通りウォーハンマーRPG4版では年表がしばしば登場します。『Empire in Ruins COMPANION』ではどうだったか?

驚いたことに、悪役個人の年表が載っていました。手前これには意表を突かれました。

しかし、何と言っても見逃せないのはEmpire in Ruins』シナリオ終了後のエンパイアで何が起こるのかを描いている章です。

この章の情報を元にすれば、『Enemy Within』全5巻の冒険を終えた皆様に新たな冒険を提供できるのです。

しかも、展開が複数に分かれているのです。シナリオ本編で悪役の企みを阻止する際に、どのように阻止したかによりその後のルートが分岐するのでございます。

たとえば、めでたしめでたしで終わる展開もあります。悪役が再興する展開もあります。これまで小説やサプリメントで無能扱いされていた人物がとうとう本気を出す展開があります。あるいはシナリオ本編よりも状況が悪化し、最悪の事態を招くことさえございます。申し添えておきますと、この章には極めつけに強力な悪役NPCが掲載されております。

『Enemy Within』キャンペーンを終えてエンパイア救国の英雄となったそこのアナタ!次はエンパイア再建の英雄になってみませんか?

他にも、冒頭の2章では聖遺物から怪現象までシナリオのネタに出来そうなデータを各種取りそろえてございます。

聖遺物をゲームに登場させる際は、人物の設定と同じくらい時間をかけて背景をしっかりと設定し、背景に合った効果を定めておくようにとのアドバイス有り。

怪奇現象のデータは、魔法の暴走からディーモンの出現まで様々ございます。

何が起きるか例を申しますと、机や椅子がその脚で街路を駆け抜け、蛙や魚そしてビールが空から降り注ぎ、生き返った精肉が店先から逃げ出す混乱の中でディーモンが暴れ回る、・・・という。

ピーター・ヴェンクマン博士に助けを求めたいケッタイな状況かもだ。

冗談はともかく、新たなディーモンに加えて‘さまよう看板’‘動き回る家具’‘生き返った食材’もクリーチャーとしてのデータが設定されています。
手前‘さまよう看板’がモンスターとして登場するのを見たのは『サタスペ』以来です。

コロッサル・スクイッグなどの大型クリーチャーも掲載。死霊術師の創造した超大型モンスターのデータも載ってございます。手練れのGMならばこれらの怪物を用いてプレイヤーの度肝を抜く方法を幾つも思いつくことでしょう。

データ以外にも設定や読み物に見所があります。冒険の舞台とならなかったオストランドやノードランドの設定、クライマックスの場面でPCが居合わせなかった場所では何が起きていたか、いがみ合っていた(あるいは手を結んでいた)悪役側の内情など、主人公の視点では見ることのできなかった様々な情報が掲載されているのです。

悪役が勝利した場合のホワット・イフ展開をお望みのそこのアナタ!『Enemy Within』と同じ時系列で舞台を変えて冒険をしたいそこのアナタ!『Empire in Ruins COMPANION』をお勧めいたします。

なお、追加シナリオやシナリオフックで、オウガや大規模戦闘そしてフレデルハイム大療養院に言及しておりますので、先日発売された『Archives of the Empire vol.II』をお手元に用意しておけばきっと役立つことでしょう。