無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

Death on the Reik COMPANION:ウォーハンマーRPG4版

今回は船旅です。船旅の話です。前作の『Enemy in Shadows COMPANION』が街道旅のルールに傾注していたのに対し、『Death on the Reik COMPANION』は船旅のルールに特化した追加サプリメントなのです。

こんなご時世ですからせめてゲームの中だけでも優雅な船旅はいかがでしょう。襲いかかる河賊、悪天候に代表される様々な災難、河川で繁殖する寄生虫、巨大魚や危険な怪物たち、おまけに乗り合わせた乗客は鼻持ちならない貴族とその取り巻きという、オールド・ワールドを巡る素敵な旅に繰り出したいとは思いませんか?

もちろん、上記のような冒険を志す皆様方のために、危険に対処するための各種追加ルールと追加データもまた、この本に幾つも記されてございます。

追加の疫病ルールが有れば追加の薬草ルールも有り、河賊の紹介に章を設ける一方で河川巡視隊の組織を解説する章もあります。水生モンスターの追加データが載っていると思えば、別のページでは船に搭載する各種の追加装備が掲載されています、船の損傷についてのルールが有れば船の修理についての判定法方も載っている、などなど。捨てる神有れば拾う神ありというやつです。

まあシャリア様かナーグル翁か、どなたに拾われるのかはよくよく考えておきたい所ですが。

さて前作、『Enemy in Shadows COMPANION』と同様、登場人物の名前の由来などのイースターエッグの章が始めに設けられています。

追加の薬草各種のデータがその次に続いておりまして、これがやけに詳細です。価格、入手難易度、採集できる地域と季節の一覧表があり。使用方法についても分類されており、湿布薬か煎じ薬か、化学的な加工がされているか未加工で使うかによる違いがあります。さらに、それぞれの解説に植物の挿し絵入り。

ところでこの薬草に関する章、どうやら毒物としての使用が前提となるものが結構ありまして、さすがはウォーハンマーRPGと手前関心致しました次第。

次の章で『Death on the Reik』で使われなかった敵との遭遇をいわゆるディレクターズ・カットの“削除されたシーン”として紹介しています。

いよいよその後で、船旅に関する各種ルールの章が始まります。
『Enemy in Shadows COMPANION』で街道旅のルールの始まりに主要街道の紹介があったのと同様、『Death on the Reik COMPANION』ではエンパイアの三大河川、すなわちライク河、タラベック河、スター河についての解説から船旅が始まります。

船旅のルールの最初に載っているのが水門と料金所。河川における関所である水門を通る方法を学ぶことになります。水門と料金所で出会う可能性のある危険についての記述がそれに続きます、シナリオフックとしても使えることでしょう。続いて、船旅で遭遇する各種の困難と、事故が船体に与える損傷についてのルール各種。河川沿いに設けられている灯台を用いた冒険のシナリオフックが複数。

河川流域で暮らす(そしてPCが出会う可能性がある)様々な社会階層の人々の紹介がその後の章で始まります。『Death on the Reik COMPANION』ではかなりの人数のNPCが掲載されておりまして、ライク河流域の村人のみならず、貴族や魔術師、医者に料理人、技師、密輸商、拳闘士まで記述は多岐に渡ります。河川巡視隊の組織についての解説や、より後の方の章では河賊のデータ紹介も有り。しかも、いずれもデータ有りNPCです。

書籍の中盤に入りますと、船舶をカスタマイズするルールの説明が始まります。過去の版でも船に客室を作ったり、武器や装甲板を取り付けたりするルールは有りましたが、4版では選択肢はさらに広がっています。

何と、蒸気機関を船に搭載するための価格と操縦のルールも載っています。ウォーハンマーの世界ですから当然、蒸気漏れ、出力低下、ボイラーの爆発が事故発生のロール表に載っていることは皆様の予想の通り。加えて、この時代の技術ですので出力と重量にまだまだ課題がありまして、蒸気機関は積載可能な貨物の重量を大きく制限するのであります。

もっと実用的なアイテムをお求めですか?では、船を武装させるのはいかがでしょう。過去の版よりも搭載兵器のレパートリーは広がっております。

4版ではPCの船に大砲を積めるようになりました、つまりアナタの船にもってことです。投石機と臼砲の運用ルールと価格も載っています。大砲に込める弾丸にも種類があり、状況に応じて選択可能です。射撃武器がお嫌いでしたら、衝角突撃も出来ます。

ちなみに旋回砲について『Death on the Reik COMPANION』には、“オウガの傭兵が手持ち射撃することもある”という記述がありました。どうです、火器を抱えたオウガ傭兵を登場させてみたくなってきませんか。

肝心なことを伝え忘れる所でした、ヴォレイガンも掲載されています。期待させて申し訳ございませんが、“ヘルブラスター・ヴォレイガン”ではございません。それでも威力は対したものです。要するにウォーハンマー世界におけるガトリングガンであります。ファンブルすると肩の脱臼などの深刻な負傷をもたらすこともあり得ます。まあ、ファンブルでなくても射手がダメージを受けるんですけどね。

戦闘以外の平和的な内容をお望みでしたら、交易ルールはいかがでしょう。羊毛、穀物、贅沢品といった交易品の種類のグループ分け、季節毎の需要と供給、価格変動についての記述、そして取引の判定ルールが掲載されています。ライク河流域の主要都市の人口規模、統治者、主要産品、軍事力についての一覧表もありますので、シナリオ作成の一助になるかと。

後半に入りますと、事故だの天災だのの類ではない船旅の危険に関する解説です。すなわち、河賊、寄生虫、モンスター、混沌教団についての章が続くのです。特殊な背景を持った河賊や、寄生虫による症状など興味深い記述が有ります。

とりわけ、混沌教団について特筆すべき事柄があります。『Enemy in Shadows COMPANION』で紹介されていたのは、紫の手教団。都市の支配者階級に入り込みエンパイアを乗っ取ることを目標に掲げた組織でした。

これとは対照的な組織が『Death on the Reik COMPANION』で紹介されています。彼らは人類の居留地から離れた森の奥深くに棲む獣人と同盟を組み、武力によるエンパイア転覆を謀る集団で、その名も赤き冠教団。お聞き及びの方々もいるかと思います。

追加されている混沌魔術も紫の手教団のものとは大きく異なっています。紫の手教団では、炎を用いた遠距離からの攻撃や未来を見通す力を得るために用いる呪文が多いのに対し、赤き冠教団は、獣人の力を取り込んで戦闘能力を引き上げる呪文に重きを置いているようです。

加えて、前の巻で紹介された「Cult Magus(混沌教団導師)」よりも戦闘的な混沌の追加キャリアが載っています。そうです、「Warrior of Tzeentch (ティーンチのケイオス・ウォリアー)」のキャリアです。

ここまでくると『Death on the Reik COMPANION』も終盤に入りました。
豪華客船“ルイトポルト皇帝号”と、乗員乗客に関する設定及び追加データ。乗り合わせた乗客達が軒並み好感を持てない、感じ悪い奴ばかりというのがイイですね。

これまでとは趣の異なる追加シナリオが一つ。ストーリーは『Death on the Reik』と『Power behind the Throne』の間に起きた事件だよ!みたいな感じのやつ。

といった所で、一通り内容を見渡したことになります。街道旅、船旅のデータが出そろったわけですが、目的地はいずこに致しましょう。ちょうど先日ガイドブックが出版されたミドンハイムに向かうのはいかがでしょうか。

ローレローンの森やムート自治領も良いところだと聞いてはおりますが、キュービクル7エンターテイメントの11月19日の記事によると、それらの地域の設定資料は今年中の完成を目指しているとありました。向かわれるのはその後で良いかと。