無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

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Middenheim:City of the White Wolf:ウォーハンマーRPG4版

エンパイア北部の大都市ミドンハイムのガイドブック『Middenheim: City of the White Wolf(ミドンハイム:白狼の都市)』PDFが公開されてから間もなく1ヶ月となります、皆様いかがお過ごしでしょうか。

既に2版時代に『ミドンハイムの灰燼(Ashes of Middenheim)』という決定版があるのに、今更何か語るべきことがあるのかとお疑いのそこのアナタ!

WHFRP4版が「混沌の嵐」以前の時代を舞台にしていることを差し引いてもなお、ページを読み進める毎に今まで見たこともないミドンハイムの側面が明らかになってゆく、『Middenheim: City of the White Wolf』はそんな旅行案内になっているのです。

ガイドブックお決まりの名所案内はもちろん、オールド・ワールド全土で知られるかの有名なミドンハイムカーニバルの歴史とその概要、各種ショッピングのポイントから季節のイベント案内、地元犯罪組織のナワバリに至るまで、生粋のアルトドルフっ子もこの一冊でミドンハイムの歩き方がわかるお役立ち情報満載の一冊なのです。

ミドンハイムはどのような都市であるか、まずはおさらいしておきましょう。
・ウルリック教団の総本山があるため、シグマー教団の影響力が弱い。
・帝立魔法大学校より規模は小さいが、魔術師のギルドがある。
・アルトドルフ、ナルンに並ぶエンパイア屈指の大都市である。
ここまでは2版時代にミドンハイムを訪れたことがある方々はご存じのことと思います。4版のガイドブックによりますと、描写はさらに具体的かつ詳細になっております。

例えば、北部領邦ではシグマー教の鞭打苦行者はほとんどおらず、まともに取り合う人は少ない、むしろ嘲笑の対象となっている。

あるいはこうも書かれています、シグマー教団の魔狩人はミドンハイムでは住民から敵意を向けられ冷遇されている。活動が困難な場所だと思い知ることでしょう、と。

魔狩人に協力者が少ないことからお察しの通り、ミドンハイムは魔術師に対して寛容な土地柄となっています。ミドンハイムの魔術師ギルドは、帝立魔法大学校の設立からさらに数百年遡る伝統があるのです。

つまり、敬虔帝マグナスによって魔術が公認されるよりも前から、ミドンハイムは独自の判断で魔術師たちの活動を認めていたのです。

ミドンハイム市警が魔術師に協力を要請することもある。さらには、魔力の風の流れが他の地域とは異なっているという話まで出てくるではありませんか!

話が逸れる前に、書籍の構成を紹介して参りましょう。

まず、神話上のミドンハイムの成り立ちから始まります。その後、神君シグマーの以前の時代から現代までの主要な事件、三皇帝時代とか吸血鬼戦争とか、エンパイア全土を揺るがした大事件の概要をミドンハイムに焦点を当てて紹介するページが数ページ。神話時代から現代(帝国歴2510年)までの年表が数ページ。

年表の次は現在のミドンハイムの全体概要を述べるページとなりまして、統治者ボリス・トッドブリンガー伯とその家族、そして宮廷の構成員の紹介。執事、大臣、宮廷詩人、狩猟長、典医らが宮廷人に含まれます。それ以外の権力者として貴族家、商会、ウルリック教団といった政治力のある団体の説明、騎士団をはじめとする軍事組織の説明がそれに続きます。

このあたりの構成は基本ルールブックの『10章:荘厳なるライクランド』、あるいは『Enemy in Shadows COMPANION:Chapter2 The Empire』とよく似ています。意図的に構成を似せていることが明白に見て取れます。

都市の権力構造の話が終わると、次はいよいよシティガイドの章です。

まずは都市の入り口である城門の案内から始まります。人通りが多いので、通行人全員がチェックを受けるわけではないということです、ご安心ください。

とはいえ大都会ですから、武器を持ったまま通りを歩いていると、違法ではないにしても警備隊の注意をひくことになります。ちなみにフェンシング武器は市民が護身用に持ち歩いていても大丈夫みたいです。

さて、このシティガイドで紹介される街の見所は、主要建築物、記念碑、劇場に公園、各宗派の教会、宿屋、酒場、商店、ギルド事務所、その他諸々。数えてみましたところ120項目を超えていました。何と『ミドンハイムの灰燼』の倍以上であります。地域のNPCデータや、前述した宮廷人たちの行きつけの店の紹介まであります。運が良ければ彼らに遭遇できるかもしれません。

もちろん『ミドンハイムの灰燼』で扱われていた場所もまた、幾つも取り上げられていますので、気になる方は両方をご覧になってはいかがでしょう。

これら100を超える名所の案内に、シナリオフックが何と50以上。現実世界のガイドブックでもこうはいかないという充実した内容でした。

全部紹介するととても時間がかかりますし、何より、・・・全部紹介することになるので、重要なことを3つだけ。

この街にはキスレヴ大使館がございます、ミドンハイムは歴史的にキスレヴと友好的な関係を築いており、ミドンハイムから金豹騎士団をキスレヴに送り、キスレヴからは鷹獅子兵団の騎兵隊を送り出すという伝統があるのです。それでですね。

話が逸れ申した。宮殿地区には軍人広場があり、この広場は周囲より一段低くなっています。ミドンハイムが誇る大カーニバルの際には広場に水を張ってプールを作る訳です。で、その後がこの話の肝心な所でして。

ミドンハイムは国際都市であり、キスレヴの大使館があり、魔法使いに寛容な土地柄であります。キスレヴの貴族が相談役として連れているのは、・・・そう、氷の魔女です。

カーニバルの時期になると、キスレヴの魔女が宮殿前の広場に魔法をかけて、完璧に滑らかな氷でアイスショーの舞台を作るのです。

ミドンハイムへお越しの際には是非ともご覧になるべき、この冬イチオシのイベントです。

二つ目に紹介致しますのは、アナタの冒険パーティーをより一層強化するためにお役立ちの情報です。

何度も申しておりますように、ミドンハイムは魔法に寛容な土地柄です。魔術師ギルド以外にも魔法具材を取り扱っている商店がございます。

それだけではなく、手前がお伝えするのは魔法アイテムを扱っている店舗なのです。

魔法使いをパーティーに迎えている方は、チェスの駒が看板に描かれている石造りの建物をお探しください。新市場地区にございます。ずいぶん昔のことになりますが、マリエンブルグを訪れたときに手前この看板を見かけたことがございます。

上級魔術師になるには魔法アイテムが必要と基本ルールブックに書かれているのに、魔法アイテムはルールブックに載っていないと嘆いていた中堅魔術師のそこのアナタ!

ミドンハイムでは、魔法アイテムが、買えるのです。

お値段ですか?一番お安いものでも金貨50枚となります。最も高価な物ともなりますと、それは魔法のブーツでございまして、大型の川船を買ってついでに旋回砲を船の前後に据え付けて武装したとしてもなお釣りが出るくらいのお値段、と言っておきましょう。ちなみにこの魔法のブーツ、「グッチ」と書いてあります。

三つ目、忘れてはいけないことはミドンハイムは大都市であるということです。人口密集地であるわけですから、排水が問題になるわけです。したがいまして、大規模な下水が通っているわけです。

先程、氷の魔女だの宮殿前広場でアイスショーだのカーニバルだのと申しましたので、察した方もいらっしゃるかもしれません。ミドンハイムの地下には小規模ながらもネズミの王国があるわけです。

城代軍団長グノウリッチをはじめ代表者3名はそれぞれNPCとしてのデータ付き。若干の追加データはありますが、キャリアとしての表記ではないためスケイブンPCを作るにはまだ道は遠いようです。それでも、人間捕獲器(凶悪な刺叉みたいなやつ)の簡易的なデータもありますし、スケイブン魔術師の能力を推し量ることも可能でしょう。

総ページ数70以上のシティガイドが終わり、次の章ではミドンハイムの城壁の外、すなわちファウスラク山の様子が語られます。さほど長くない章ですが、非常にインパクトのある設定があったので一つさわりだけ紹介します。

ミドンハイムのような山頂の平地に築かれた都市では、当然ながら墓地に使える場所は広くないわけでして。じゃあ、埋葬のためのお金がなかった人はどうなる?という話題が扱われています。この辺ウォーハンマーらしいですね。まあ、お墓に埋葬されてもミドンハイムでは墓泥棒が流行ってるんで安心できないんですけどね。

さらに次の章では新たなクリーチャーのデータ。そしてミドンランドの紹介が続きます。大都市であるミドンハイムに比べると、周囲に広がるミドンランドは大変過酷な土地に見えますし、実際そうなのです。住民の持つ技能からも明らかです。そのことについては後述致しましょう。

再びミドンハイムの城壁の内側の話題が始まりまして、ミドンハイム各地区を仕切っている犯罪王それぞれの設定と勢力範囲の説明。彼らの縄張りが判れば新参者でも安心して街を歩けますね。

最後の章は『Enemy in Shadows(暗がりに潜みし敵)』『Death on the Reik(ライク河上の死)』追加設定集でもお約束の、混沌教団の紹介。紫の手教団、赤き冠教団といった既出の組織に加え、2版時代にも名を残す集団が幾つか紹介されています。さらには、悪名高きフェスタス博士が創設したナーグル教団や、情報網を扱うことに特化したティーンチの混沌教団もあります。

今回は混沌教団だけではなく、ウルリック末裔会や、古代の邪悪を奉じる集団、革命家団体、異端の魔術研究家などの組織も紹介されており、敵のレパートリーがさらに広がっています。異端組織の構成員のデータも幾つかあり。

以上で7章までの本編が終わり、後はAppendix(付録)のコーナーが始まります。

『Middenheim: City of the White Wolf』の不満をあえて挙げるならば、『Enemy in Shadows COMPANION』に有ったような街道で遭遇する出来事の判定表や『Death on the Reik COMPANION』の船旅の判定表、交易の判定表。そういった追加の表や追加の判定ルールが少なかったことでしょう。

そこで始まりましたのが付録1、“MUCoS(ミドンハイムスノットボウル競技者連合会)”によるスノットボウル公式レギュレーション、別名「ミドンボウル」のルール詳細です。

さあ、追加の判定ルールが少なくて鬱憤が溜まっていた皆様、存分に溜飲を下げてください!

冗談はともかく、ミドンボウルとは要するに我々の世界で言うところのフットボールに相当します。選手のデータからチームの構成、試合展開に沿った判定、試合中のアクシデントに至るまで、ウォーハンマー世界におけるフットボールのルール紹介にページを割いています。

一応申し上げておきますと、ウォーハンマー世界ではフットボールは大事です、超大事なのです。

ウォーハンマーのシリーズ展開として、ファンタジー世界を舞台にしたシリーズもあれば、4万年後のSF世界を舞台にしたウォーハンマー40kというシリーズもあり。いずれも現人神である皇帝が建国した帝国があり、混沌の邪神と人類の戦いが続いている世界であります。そんなウォーハンマー世界の一つに、フットボールで混沌やオークと戦い続けるシリーズがありまして…。

追加の装備でも追加の魔法でも、ウルリックの奇跡の新ルールでもよかっただろうに、あえてここでフットボールのルールを5ページに渡って続く判定方法と表で設定するという。明らかにバランスが悪い、渾身の力でボケ倒してきたような企画でした。

気を取り直して付録2のページを開きましょう。キャラクター作成の新ルールです。基本ルールブックでは、種族に人間を選ぶと自動的に属性がライクランド人ということになっていました。

もちろん、データ的にはライクランド人を使って、プレイヤーの設定としてはスターランド出身とすることも出来ますが、それでは気分が出ません。よね?

今回、ミドンハイム人、ミドンランド人、ノードランド人のキャラクターに、異能と技能の選択肢が与えられました。

ミドンハイムはエンパイア屈指の国際都市で、商業と季節毎の祝祭、そして年に一度のカーニバルで知られており、そのため商業と芸能に関する技能や異能を選ぶことが出来ます。

一方ミドンランドは、獣人やゴブリンの住処である森林地帯と隣り合って人々が暮らしているため、野外生活に長けた熟練の戦士が多い。

ノードランドはどうか、エンパイアの大河から外洋へ通じる河川を押さえており、かつ北方からガレー船で襲来するノース人との戦いを何度も経験している。そのため船乗りとしての経験を積んだ者が多い。といった具合。

さらに、北部領邦の小規模な集落ではモールの司祭が訪れるのは稀であるため、<運命付け>を受けていないこともあり得ます。このことを表して、<運命付け>の代わりにランダム異能を得ることも出来ます。技能や異能を持っている理由の背景説明が『シグマーの継承者(Sigmar's Heirs)』よりも丁寧になった印象がありますね。

最後に、内なる敵キャンペーンシナリオ集でまだ発売されていない『Power behind the Throne(玉座の影の権力)』以後の展開と、その結果がミドンハイムとミドンランドにどのような影響を与えるかについての解説があります。

で、思ったのです。無料で配布されている『If Looks could Kill』って、重要シナリオなのかもしれない。不死身の怪物にどうやってとどめを刺すか、という方法について取り扱っているという点で、『If Looks could Kill』で一度そういった敵と戦ったことがあるかどうかで対策の立て方に違いが出るんじゃないですかねとか思ったり。

 

ところで、ムート自治領では防御用の武器特性があるくらい丈夫な鉄のフライパンが流通しているんですって?