親と子と宇宙人もの②『ザ・プレデター』
宇宙番長プレデターさんがナードをリスペクトした、記念すべき映画です。
前回述べましたように『ザ・プレデター』もまた『クワイエット・プレイス』同様に、親に疎まれていると誤解していた子と、子との距離をうまく測れずにいた親の話であり、壊れかけた家族が宇宙人さんとの戦いを経て再生する物語なのです。
『ザ・プレデター』の壊れかけた家庭が再生するのは、危険な目にあって吊り橋効果類似の現象が起きたから、というものではありません。危機を乗り越えることで親子が互いの才能を理解し認め合うお話なのです。
主人公の家族だけではなく、脇役にも親子の役割継承という背景があるのです。出番は少ないものの、『プレデター』シリーズを観続けてきた方ならあっと驚く意外な人物が登場していました。ショーン・キース博士です。
プレデター情報強者の皆様ならば当然ご存じと思いますが、『プレデター2』でプレデター捕獲作戦を展開していた特殊部隊の指揮官の名前がピーター・キース。『ザ・プレデター』に登場する科学者ショーン・キースはその息子、という設定です。
第一作『プレデター』はモンスター映画の歴史に強烈なキャラクターを刻み込みました。強い獲物を狩ることを生き甲斐にしている狩猟民族で、残虐で粗暴に見えるが高度なテクノロジーを持っている。透明化や赤外線感知といった科学技術と地球人を了駕する身体能力を併せ持つため極めて危険な怪物、というものでした。
「非武装の相手は狩りの対象にしない」「見事な戦いぶりを示した相手は敵であろうと賞賛する」以降のシリーズで繰り返されるモチーフは『プレデター2』に基づくものであり、この2作目がなければ、シリーズの人気がこれほど長く続かなかったことしょう。
一作目で戦った相手がアーノルド・シュワルツェネッガーであったこと、二作目以降「弱いものいじめはしねえ!」「タイマン張ったらダチだぜ!」な番長気質を設定されていることから、プレデターさんは脳筋野郎だと観客に思われてきました。
この他にも過去作との共通点探しをすると、麻薬組織を急襲するため派遣された軍人がプレデターと遭遇する展開は一作目『プレデター』を思い出させるものであり、加えて主人公に協力する軍人が全員懲罰または入院のため施設に送られる途中のならず者の集まりという『プレデターズ』を思わせる展開もありました。
ただ残念なところとしては、一作目二作目のような禍々しさが本作では見られないことが挙げられます。この映画の登場人物は、今までのシリーズと比べるとある程度心理的な余裕を持ってプレデターと向き合っています。「食べるためではなく殺しを楽しむために狩りをする危険な生物だ。我々は“プレデター(捕食者)”と呼んでいる。」「その名前矛盾してない?」と指摘出来るくらいには。
プレデターの装備、生態、文化を研究してきた特殊部隊が主人公サイドにつくため、今までのシリーズにあった“獲物である人類がついにプレデターに反撃する”というカタルシスがありません。今回プレデターは狩られる側に回るのです。
さて、危機を乗り越えた家族が再生する物語では、外部から訪れる危機は家族が抱えている問題のメタファーとなっている、もしくは密接な共通点がある、のが望ましい物語構成です。危機を乗り越えることと、家族が再生することを同一視させることで、展開を受け入れ易くする効果があります。
自己評価が低い息子と寡黙な父親、この二人の距離をどうやって埋めるか?プレデターさんは家庭問題のメタファーとなりうるのか?