無駄口を叩いて渡る世間に鬼瓦

映画について、深読みしたり邪推したり。時折、映画以外の話をすることもあります。

ダークセイバーの話をしようか『ローグ・ワン:スター・ウォーズ・ストーリー』

手前はスター・ウォーズヲタクであったことは無いのですが、少々気になったことがございますので重箱の隅を突つかせて頂きたく存じます。『ローグ・ワン』によると、宇宙要塞デス・スターの建造責任者はオーソン・クレニック長官、設計はゲイレン・アーソということです。以前手前が聞いた話では、デス・スターベヴェル・レメリスク技官が設計したものとのことでしたが、どうやらこの設定は映画『ローグ・ワン』をもって上書きされ、消滅してしまったようです。

スター・ウォーズ EPⅥ ジェダイの帰還』以降、『EPⅦ フォースの覚醒』が公開されるまでの三十年という長い間、スター・ウォーズ世界でどのような事件が起こっていたか、様々な小説やコミックでスピンオフの物語が作られていたのです。残念なことに、その殆どの設定は今ではもう通用しないようです。とはいえ遥か昔銀河系の彼方で、デス・スターの設計者がレメリスク技官であると設定されていた時代があったのです。

レメリスク技官は、デス・スター建造の遅れや、初代デス・スター廃熱孔の欠陥といった失態を理由に、銀河皇帝から何度か処刑されています。何度か?そう、何度か死んでいるのです。処刑される度に、銀河皇帝パルパティーンことダース・シディアスの暗黒面の秘技によって魂をぶっこ抜かれ、記憶と人格を保ったまま新たな体で蘇って、再び皇帝に仕えることを強いられてきた、というバックグラウンドがあるキャラでした。

さて、パルパティーンが死から蘇る秘法を行使できるのであれば、自らの死を回避するために使わないわけがございません。スター・ウォーズのスピンオフコミック『ダーク・エンパイア』は、『EPⅥ ジェダイの帰還』でダース・ベイダーと相討ちになって死んだパルパティーンが、用意していたクローンに己の記憶と魂を移し替え復活、新共和国に戦いを挑む話でした。

このコミックで登場するパルパティーンのクローン、従って若い頃の皇帝陛下のお姿となるわけですが、その容姿は富士額のオールバックに襟の高いマント。どうもドラキュラ伯爵を思わせるスタイルなのです。考えてみますに、ウィルハフ・ターキン提督を演じた俳優がピーター・カッシング、ダース・ティラナスことセレノーのドゥクー伯爵を演じた俳優はクリストファー・リー。そしてドロイド軍を率いるサイボーグのグリーバス将軍の声は当初ゲイリー・オールドマンが当てるはずだったのでしたっけね。このように、スター・ウォーズの悪役は妙にドラキュラ映画の関係者が多かったことに気付かされるのです。

話題が逸れ申した、『ダーク・エンパイア』で帝国軍が繰り出す新兵器の数々が、どれを取っても新共和国を滅ぼしかねない凶悪なもの揃いでして、例えば“ワールド・ディバステイター”これはいわば、重武装の移動式自動兵器工場とでも呼ぶべき代物で、侵略先の惑星に降りるや否や、現地の鉱物資源の収奪を開始し、人工知能に操縦されるTIEファイターその他の無人兵器を量産し始め、挑んできた敵機まで解体し新たな兵器の生産をひたすら続けるという、まさしく“星を貪るもの”の名前に相応しい兵器でした。あるいは、敵のエネルギー兵器の攻撃を吸収して反射する大型戦闘ドロイド“ヴァイパー・オートマドン”、デス・スター同様の破壊力を持ち、銀河の遠く離れた惑星を狙撃できる超長距離砲“ギャラクシー・ガン”・・・『EPⅦ フォースの覚醒』に登場したスターキラー基地の元ネタはこいつではないかと手前は疑っているのですがね。そして、デス・スターの主砲を搭載した宇宙戦艦“スーパー・スター・デストロイヤー「エクリプス」”その大きさ故に威力こそ本家デス・スターに劣りますが、それでも大陸くらいは焼き払うことが出来るとか。

デス・スターのスーパーレーザーを搭載した戦艦というアイデアは、他の悪役も使っています。例えば、ブラック・サンの大幹部ダーガ。このキャラは、ジャバ・ザ・ハットと同じくハット族出身の犯罪王です。あ、ちなみにブラック・サンというのは、スター・ウォーズ世界で最大の犯罪組織で、小説版だと元老院の関わる陰謀や、銀河共和国の首都コルサントの事件を扱った話などで時々取り上げられています。

パルパティーン皇帝の治世において、ブラック・サンの大首領であったのが、ファリーンの貴族出身のプリンス・シーゾー(シゾールと表記する場合もあり)でした。彼はダース・ベイダーと同様に、表沙汰に出来ない汚れ仕事を片付けるための切り札として銀河皇帝に重用されており、各種スピンオフではベイダーとシーゾーはライバルとして描かれてきました。

ちなみにファリーンというのは大まかに言うと・・・えーと、そうですね、頭頂部で鞭髪のように髷を結った、は虫類のような皮膚の人間型種族、と表現出来ます。アニメの『クローン・ウォーズ』第5シーズンに登場していました。ぶっちゃけた話、フー・マンチューのような、欧米人の想像する東洋人悪役をSFに持ち込んだような造形です。

話題が逸れ申した、デス・スターの主砲を搭載した戦艦というアイデアは、皇帝パルパティーンだけではなく、ほかの悪役も使っているという話でした。ハット族の犯罪王ダーガもその一人である、という件。

ダーガ・ベサディ(その名前から、ジャバ・デシリジク・ティウレのデシリジク氏族と対立しているベサディ氏族の出身であることが判ります)は、デス・スターの設計者であるレメリスクを見つけ出し、デス・スターで使用した兵器と同様の破壊力を持つ戦艦を自分のために建造させます。

それこそが「ダークセイバー」、『スター・ウォーズ』の世界においては、戦艦としてのダークセイバー以外に、アニメ『クローン・ウォーズ』で“漆黒の刀身を持つライトセイバー”という、厨二病魂あふれる武器が登場しましたが、そちらについて話をすると長くなるので端折ります。とにかくまあ、戦艦としての「ダークセイバー」の話です。

戦艦「ダークセイバー」は、デス・スターから要塞としての構造物を削ぎ落とし、主砲スーパーレーザーに機能を絞り込んだものでした。外見といいその構造といい巨大なライトセイバーのよう。まさしく、デス・スターは惑星を破壊できるライトセイバーだったのである!

というこの設定が、間接的に『ローグ・ワン』に取り入れられていることに感動いたしました。